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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第37話 幼馴染みとの朝

「んー・・・」


 と言いつつ穂乃果が目を覚ますと、隼の部屋だった。


 カーテンの隙間から朝日が差し込む中時計を確認すると、七時を過ぎたばかり。夏休みにしては早起きかもしれない。


「んー?」


 思い出してみる。そう、昨夜は柊木家に泊まると言って、隼の部屋で寝落ちしてしまったのだった。とは言え隼の部屋に泊まるつもりはなかったのだが——その主である隼はこの部屋にはいない。


 寝ている間ずっと隼がそばにいるような安心感があったが、それはどうやら抱えていた枕と、まくれあがったTシャツのせいらしい。


 穂乃果はその枕にもう一度顔を埋めると、ベッドを下りる。念のためショートパンツを履いてから部屋を出る。


 漂って来る香ばしい匂いに導かれるように階段を下りると、佳代子ママがキッチンにいるのが見えた。


「おう穂乃果。起きたなら手伝え」


「はぁい。佳代子ママはもう起きてたんだ」


 ソファにかけてあったピンクのエプロンを手にとると、そのソファで隼が眠っているのが見えた。


「私に黙って隼の部屋に泊まるとか、どうなるかと思ったが」


 隣に来た穂乃果に佳代子がにやりとする。 


「ちゃんと節度は持っていたんだな」


「別にそんなつもりはないんだけど・・・」


「だったらどんなつもりだったんだ?」


「そんな・・・いじめないでよ」


 唇をとがらせて抗議してくる穂乃果の頭を佳代子ががそっと撫でて鍋に向き直る。キッチンに広がる味噌汁の匂い。


「もう・・・気づいたら寝ちゃってただけだよ」


 ぶつぶつ言いながら穂乃果はサラダ用のレタスをちぎる。


「それって彼シャツって奴だろ?憧れるのはわかるがな」


 おとなしくソファで居心地悪そうに眠っている隼に目をやる。


 穂乃果はふくれて何も言わない。


 そんな穂乃果を優しく見つつ、卵をフライパンに割入れる。


「なあ穂乃果。私な、こんな風に可愛い娘と料理するのが夢でな」


「そうなの?でも、隼とか一緒に料理してくれないの?」


「息子と一緒に料理してても楽しいものか。娘と男共の悪口を言いながら料理をするのが、母親の幸せってもんだろ」


「ははは、そうなんだ。楽しそうだね」


「ああ。これ以上なく楽しいだろうな。私はそんな日々を夢に見ていてね」


「ふうん」


「それが穂乃果でも、私は構わないんだぞ?」


 元々娘同然ではあるが、そこには大きな隔たりがある。


 じゅうじゅうと目玉焼きが焼ける音。


「うん・・・でもさ」


 穂乃果がふと寂しげな目をする。


「隼もそう思ってると思う?」


 その言葉を聞き、不思議な気持ちになる佳代子。隼が穂乃果の事が好きなのは隠しようのない事実。気が早いかもしれないが、そう思っていないはずがない。だから穂乃果にああ言ったのだが。


 だから、子供っぽくて鈍い穂乃果が隼の気持ちに気づいてないだけだと思っていた。


「思ってなければ、喜んで新婚ごっこなんざしないと思うがな」


「そうかなぁ」


 穂乃果の表情が少し晴れる。その表情を見て、少し安心する。穂乃果も悪からぬ感情を持っている事は明らかだった。


「妹みたいに見られてなければいいんだけどな」


 独り言のように呟く穂乃果。ちぎっているレタスがやけに小さい。


 二人とも似たような不安を抱えているんだな——とは思いつつ、時間が解決してくれるだろうと思う佳代子。


 あまり口を出すのも野暮だろう。


「ほら、そんな事言ってないでそろそろ隼を起こしてこい。あんなところで寝ていられたら迷惑だからな」


「うん。わかった」


「せっかくそんな恰好してるんだから、新婚さんっぽくな。その方が隼は喜ぶだろうし」


「そんな事ないよ」


 穂乃果は言いつつ、リビングのソファに近づく。その上では眉間に皺を寄せて小さくなって眠っている隼がいる。


 そばに座ってその寝顔を眺める。


 しっかり者で少し目つきの悪い隼だが、こうして眠っていると無防備で可愛らしいところがある。いつもいつも自分の方が先に寝てしまって、散々寝顔を見られているので仕返しのつもりでじっくり眺める。


 それにしても佳代子の言葉のせいではないが、こうしてピンクのエプロンを身に着けていると新妻になった気分になるのが不思議。


 新婚の朝はどんな風に始まるのだろうか。


「ねえ、隼起きて」


 耳元で囁いてみる。


「んー」


 反応あり。だが、むにゃむにゃするばかりで起きる様子はない。


「起きて。朝ごはんだよ?」


「んん」


 返事をしたような、ただ唸っただけのような。


「起きないの?」


「んー」


 寝心地が悪くて寝ざめが悪いのか、そんな反応を繰り返す隼。


 なので、


「ねえ、起きて」


 ちゅ。


 

 <><><><><><>



「ん?」


 目を覚ますと、ピンクのエプロンを身に着けた穂乃果がキッチンに走って行くところだった。


「早く起きないと、朝ごはん抜きだからね!」


 捨て台詞のように言う穂乃果。


 ——びっくりした。穂乃果との新婚生活が始まったかと思った。そう、あんな彼シャツ着た上でエプロンつけてるから。


「あー。起きたか。実質的な『彼』」


 キッチンで朝ごはんを作っている母親がにやにやしながら言う。彼シャツにショートパンツを履いた穂乃果はあっちを向いている。


「うーん」


 大きく伸びをして体をほぐす。ソファでなんか寝るもんじゃないね。そうは言っても先に穂乃果が寝てしまったベッドで一緒に寝るわけにもいかないし。


 でも、朝から新婚姿の穂乃果に起こされるなんて、確かに僕は幸せモンかもしれない。



 



 



 

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