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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第1話 幼馴染みとロボ


 異次元機動人型兵器ローレライ。


 Another・Dimension・Monster——次元間変異であるADMの討伐の為に、どこか別の次元からこの次元へと派遣された、巨大ロボット。


 そんな巨大ロボットに、ごく普通の高校生である僕は乗せられている。


 押入れくらいの空間に、自動車のそれにも似たシート。それを囲うように設置されたコンソールにはスイッチが多数。


 まるで拘束されているよう。


 そんな居心地の悪さを感じながら、外部を映した正面の大型スクリーンに目を移す。


 ここは家の近所であり、学校への通学路である中央公園。テニスコートが完備され、四季折々の花が植えられた花壇の彩に囲まれた時計塔が特徴的な大きな公園だ。


 十九時を示しているそんな時計塔を中心に周囲を赤黒い空間が包み込んでいる。それが何なのかよくわからないが、公園内を散歩している人々がこちらを認識している様子は無いので、この場所であってこの場所ではない?


 そしてその時計塔の横に、ずんぐりとした白っぽい人型の物体がのっそりと存在している。高さは十メートルくらい。


 人型と言うよりは、着ぐるみを着たヒトデと言った方が近いかもしれない。


 ADMと呼ばれるその物体は、緩慢な動きでローレライに組みついているが、倍近い大きさのあるローレライはびくともしない。


『柊木隼サン、ADMの生体反応の低下が見られます。あともう少しなので、効率的な攻撃をお願いします』


 目の前に浮かぶ薄緑色の端末——ハルピュリア・デバイス。表面に白い幾何学模様が描かれた掌サイズの箱から声がする。ローレライのサポートAIである『ハル』の声。無機質で少し癖のある、中性的な電子音声。


「はいよ」


 僕は軽く答えて、肘掛けの先にまるで握ってくれと言わんばかりに設置されているスティック操作する。


 左右それぞれのスティックと足元のペダルで手足での攻撃が可能。そんな単純な動きなのでさほど操作には苦労しない。慣れてくると余裕も出てくるものだ。


「うぅぅぅぅ・・・待ってよ・・・動き早いって」


 隣で情けない声がする。幼馴染みの和泉穂乃果が必死な顔をしてスティックを操作している。


 緑色のブレザーとチェックのスカートという高校の制服に身を包んだ、ふんわりとしたショートボブの女の子。もうちょっと身だしなみに気をつければ文句なしの美少女なんだけどな。


 髪型のせいか小柄なせいか、僕と同じ十六歳ではあるものの、いくらか幼い印象がある。控え目な胸のせいなのかもしれない。


 その印象は幼稚園の頃から変わらない。


 そんな幼馴染みは、放課後に一緒にゲーセンで時間を潰した僕と一緒にこのロボットに捕まって今に至る。


 その穂乃果が操作しているのは照準。つまり、穂乃果が照準を合わせて、その場所を僕が攻撃するというコンビネーションでローレライは動かされている。穂乃果の照準が甘ければ、いくら僕の操作が完璧でも攻撃は当たらない。


 僕と違っていちいち対象物に照準を合わせ続けていなければならないので、気が抜けないらしい。


「大丈夫か?元々格闘ゲームの類は苦手だったよな」


「どうにか・・・あの変なのを追いかけるので精一杯だけど」


『和泉穂乃果サン、照準が毎回一瞬ズレています。もうワンテンポ早い動きをお願いします。このままでは時間がかかってしまいます』


「分かってるよぉ」


 言いながら穂乃果は憮然とした表情をする。思い通りにならない状況が不満らしい。この負けず嫌いな幼馴染みは不満があるといつもこんな顔をする。


 とは言え、不器用な穂乃果が思い通りに物事を進めたの見た事がない。


 僕はADMの頭部をローレライの拳で殴りつけながら軽口を叩く。


「なあ、ハルとやら。穂乃果に任せてたら何も進まなくなるぞ。不器用だし要領は悪いし、物覚えは悪いし、女子力は低いし」


「あー!最後のは今関係ないでしょ!」


 バレたか。


「ずば抜けた愛嬌とコミュニケーション能力だけで世間を渡って来たようなモンだろ。それ以外の能力は皆無だな」


 言いながら足払いをかけると、ADMはその場に倒れ込んだ。それと同時に馬乗りになり、頭部をガンガン叩く。


『それは、短い時間ではありますが、私も理解しました』


「ひどーい!まるで私をポンコツみたいに!」


 反論するが、照準はずれまくり。


 ともあれ、そんな穂乃果の活躍(?)もあり、ADMは大の字になって動かなくなった。


『不本意ですが、ADMの生体反応は停止したようです』


 不満気なハルの声に従うように目の前に浮かぶ端末が震える。AIの割に感情的なんだよな。


 まあ、そんな事よりも、


「ああ、もう終わったのか?」


「案外あっさり終わるのね」


「穂乃果がもっとしっかりしてれば、もっとあっさりだろ」


「う、うるさいのよ!」


『はいはい。イチャイチャはそれぐらいで』


 言い合いとも言えないいつものようなやりとりをしている僕と穂乃果に、ハルが割って入る。イチャイチャしてるつもりはないのだが。


『とにかく、ADMをこのままにしておくわけにはいきません。ADMには再生能力があるので、マーメイド・エフェクトによって消去する必要があります』


 ハルが事もなげに知らない言葉を放つ。マーメイド?


「なんだそりゃ」


「バタフライ・エフェクトみたいね」


 おお。難しい事を知っているな穂乃果。そんな事を口に出すとまた怒るだろうから黙ってるけど。


『マーメイド・エフェクトです。ADMを消去する、特殊な可視光線です』


 まあ、よく分からん。


 とにかく、


「そいつでADMを消せばいいんだな。どうやるんだよ」


 そろそろ終わりそうだから、早いところ終わらせてしまおう。


『ええ、では』


 ハルが一呼吸置くと、目の前のある薄緑色のハルピュリア・デバイスがぐしゃっと変化する。グリップと引き金だけのピストルのような形。


『柊木隼サン、ここで愛の告白を実行してデバイスの引き金を引いて下さい』


「は?」


「あ、愛の告白!?」


『そうです。マーメイド・エフェクトには鬱屈して抑圧された、内包型デルタエネルギーが必要です。その圧縮されたエネルギーをコクハクという行為によって解放し、マーメイド・エフェクトは発動します』


 全然わからん。


『簡単に言いますと、カタオモイエネルギーと言えるでしょうか。密かに募らせた、純粋な想いのエネルギーです』


 どういうエネルギーだよ。


それより、コクハクってなんだよ。こんな所で。


『なので、愛する人をイメージして、その気持ちを言葉で表現して下さい』


「愛する人って、家族とかでもいいのか?」


『愛の告白という物がそんなものではない事くらい、柊木隼サンには分かっているはずでは?』


「そうだよ!隼!愛の告白ってそんなんじゃないよ!」


 何で穂乃果が目を輝かせるんだよ。


「つったって、僕に好きな人がいるかどうかなんて、分かんないだろ」


 好きな人がいるっていう前提で進むなよ。


『いない訳がありません。あなたをメインパイロットに選んだ理由は、内包型デルタエネルギーの大きさも理由のひとつですから。愛する人は確かにいるはずです』


「愛する人・・・」


 心当たりが無いって言ったら嘘になる。隠していたつもりだったが、このよく分からないテクノロジーにはお見通しという事か。


「でもなぁ・・・」


 かと言って簡単に言えるものか。告白ってそういうモンじゃないだろ。しかも、ここで?


『迷っている時間はありません。ADMは時間と共に復活してしまいます。そうなると、更に力を増してしまいます』


「え?マジか?」


『時間がありません。ADMの生体反応が復活しつつあります』


 こころなしかハルの声に焦りのいろ。わざと僕を焦らしているようにも思える。


「いや、しかし・・・」


 かと言って、簡単に言葉に出来る事ではない。そもそも、僕はこの気持ちを明かすつもりなどさらさら無かった。


『確認します。ADMはこことは異なる次元から現れた怪異です。この次元には対抗出来る手段はこの世界にはありません。そんなADMを放っておくと、巨大なエネルギーの発生で、世界の情勢は大きく変わってしまいます。滅亡してしまう事だってあるかもしれません』


「お・・・大袈裟だろ」


『大袈裟ではありません。柊木隼サンの告白が、現状それを食い止める唯一の手段です』


 世界の滅亡を防ぐために告白しろ、とは無茶を言う。僕の告白にそんな大それた物を背負わるな。


 すると、僕の腕をおずおずと掴む手。


 穂乃果が僕の腕を掴み、不安そうな目で僕を見ている。


「隼・・・私も協力できるならするよ」


 そんなしおらしい事を言って来る幼馴染み。協力って何だ?


「その子と仲良くなれるように・・・どうにかしてみるよ」


 そっちの協力かよ。せっかくだが、おそらく必要はない。


『さあ柊木隼サン』


 ハルが決断を迫る。いや、俺には選択肢はないのかもしれない。世界の平和と天秤にかけられれば。


「大丈夫。隼もちょっと目つきが悪いくらいで、そんなに悪くないし」


 目つきが悪いのは母親に似たんだけど。それに励ますように言うな。


『世界平和のためです』


 ハルの無常な言葉と、強く掴まれた腕の感触。


 僕は大きく息を吐くと、目の前のデバイスに触れる。それと同時に、ローレライは太ももから抜いたハンドガンのような銃を構える姿勢を見せる。


 同時にスクリーンに現れるターゲットマーク。この照準は、穂乃果ではなく僕が手にする銃に追従するらしい。


「言っておくが、世界のためだからな」


 穂乃果の方を向いて釘を刺す。


「うん。心して聞きます」


 本当は聞いて欲しくないんだが。


 ため息を一つついて、正面に向き直る。ターゲットをADMに向けると、ローレライもADMに銃を向けた。


 引き金に指をかける。


「僕は——」


 じゃあ覚悟を決める。


「穂乃果の事が大好きだ」




 こんな事を言う事態に陥った原因は、数十分前に遡る。




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