出立(しゅったつ)
「神父さん、教会の皆、長い事世話になったな」
「お世話になりました。」
アナポーの街での用事を終えたシュウとケンは、
いよいよ、ルクシア共和国の首都ポルポートに向かう旅路へと出発する事となり、
街の入り口の門には、シュウらを見送る人々が集まっていた。
「いえいえ、こちらこそウチの教会の存続を守って頂いたばかりか、
今後の収入源となりうる仕事を確保して頂くなど、
シュウさんとケン君には大変なお世話になりました。」
「兄ちゃん達、また来てくれよな」
「また来てね~」
「約束だよ」
「お世話になりました。」
「ありがとう!」
「ミコチャさんにも色々と世話を掛けたな、
それと、黒魔鋼のインゴットを格安で入手してくれて、ありがとな、
早速、街の武器屋に持ってってケンの木刀にコーティングして貰ったけど、
良い感じに仕上がったらしいぞ」
「ミコチャさん、ありがとう御座いました。
魔力を通すと、まるで木刀が自分の手の延長になったような、
一体感が感じられる様になりました。」
「その辺は、こちらも商売ですからお気になさらずに、
シュウさんとケン君は、この街の経済に多大なる恩恵を齎して頂いたのですから、
この位の御協力をするのは当たり前の事ですよ」
「そう言えば本当に、この魔導バックを貰っちゃっても良かったのかな?
俺達の魔導リュックより、だいぶ沢山の荷物を収納できるみたいだから、
値段も相当する品物なんだろ?」
「僕達のリュックだって結構な値段だったもんね」
「御領主様が、お二人に迷惑を掛けたお詫びとして、
下さるって仰ってるのだから貰っておけば良いと思いますよ、
その品物だって、オーストリッチ・マウス教会から接収した物なんだから、
別に御領主様の懐が痛んでいる訳ではありませんし・・・」
「そう言えば、あそこの組織は解体されたそうだな」
「幹部の人達も皆、居なくなっちゃったしね」
「ええ、御領主様の御命令で部下の方々が査察に入られた際に、
御領主様との仲が懇意なのを利用して、
色々と不正を働いていた証拠が山ほど出て来たらしいわよ」
「あ~、俺達は少し会話しただけだったけど、
あの連中は皆、権力を笠に着て話すタイプのヤツばっかりだったもんな」
「うん、本当に偉いのは領主様なのに、
自分たちが偉いみたいな話し方だったよね」




