守り神
「では初めに、御領主のアポペン様より、
シュウ様、ケン様方にご提案があられるとの事でしたが、
その御内容の御説明をお願い頂けますか?」
「うむ、それは良いのだが、
私の耳に入って来た情報に依ると、
この者達は、今回コウヤサン教会の土地建物を購入した人物の、
代理に過ぎぬと聞いて居るのだが、どの程度の裁量権を有して居るのだ?」
「はい、ではシュウ様、
その点に付いては如何でしょうか?」
「主からは、購入や管理は元より、
今後の運営なんかに付いても俺達に一任されているから、
あの教会に関する事なら俺達に話して貰えば良いぜ」
「と言う事で御座います。アポペン様」
「うむ、では単刀直入に言うとするか、
あの教会の土地建物を、私が買い戻す事としたから、
買い戻しの契約書にサインをするのだ。」
「だが断る!!」
「ぬおおっ!貴様、アポペン様に何と言う口の利き方をするのだ!」
「口の利き方を慎め小僧!」
「まあ良い、静まれ皆の者」
シュウの物言いに、いきり立つ取り巻き達をアポペンが静める
「し、しかし、アポペン様」
「この様な無礼を許しましては・・・」
「この私が、良いと言って居るのだ!
今、この席での話し合いでは一応は対等な立場であるのだからな、
相手は一般の庶民なのだ、いちいち言葉遣いに目くじらを立てて居っては、
話しが進まぬであろう。」
「は、はあ・・・アポペン様が、そう仰られるなら・・・」
「は、はい、畏まりました。」
「うむ、では話を進めるぞ、
その方らの買値で、売り戻すのが不本意であるなら、
買い戻しの金額に多少の色を付けてやっても良いが、どうだ?」
「だが断る!!パ~ト2(ツ~)!」
「ぬおおっ!」
「ぐぎぎぎっ!」
アポペンに釘を刺された取り巻き達が、
こめかみに血を噴き出しそうな程に、血管を浮き上がらせながら、
激怒の表情を浮かべている
「シュウ様、話し合いの相手の御陣営を、
挑発する様なご発言は、ご遠慮下さいませ。
それから、お断りの理由のご説明の方もお願いします。」
進行役を務めるミコチャが、シュウに注意を施してから、
返答の説明を促した。
「へいへい、分かったよ、
買い戻しに応じない理由の説明は簡単だな、
金額面の問題じゃ無くて、
俺達の主に取って、あの教会の土地建物が大事な物であるからだ。」
「あの教会の土地建物だと?
それは、あの『水』が目的だったと申す事か?」
「いいや、主は『水』の事は知らなかったぜ、
言葉の通りに、あの教会が建つ場所と建物を守りたかったってだけだな」
「場所と建物を守りたいだと?
その方らの主と申す者は、確かコウガ王国の者では無かったか?
この国から移り住んだとでも申すのか?」
「いいや、この国から移り住んだって訳じゃ無いと思うぜ、
うちらの主が、あの教会を入手したのは、
あの教会を建立されたゴジュウショク様が主と同郷だったからだな、
ちなみに、俺達兄弟も御二人と同じ出身地なんだが、
あの教会が建つ場所のロケーションや、建物の様式なんかは、
うちらの故郷で良く見られる、馴染み深いもんだね」
「そうだね、街や村を見守るよう高台に建ってる事が多いよね」




