大商会
「ウソを申すな!
ゴジュウショク様は、我が御先祖様の前へと現れるまで、
その御出生や御経歴の一切が不明であったのだぞ、
その方らの主や、その方らは、
今まで謎であったゴジュウショク様の生まれを知ると申すのか!」
アナポーの街の領主であるアポペンが怒りの表情を浮かべた。
「それがアポペン様、シュウ様方の話が一概に作り話とは、
言えない状況でもあるのです。」
「どう言う事だ?」
「はい、お二方の御本職は大工なのですが、
今、お二人はコウヤサン教会の補修や修繕工事をされていらっしゃるんですよ」
「何!?あの作りが複雑で、この街はおろか、
近隣の街の大工らも全て匙を投げたアノ教会を手掛けていると申すのか!?」
「はい、私が聞き及んだところでは、
御2人の手際は、それは見事な物の様でありまして、それを聞き付けた
この街や、近隣の街の大工さん達が、
後学の為にと連日教会へと見学に訪れているという事です。」
「う~む、あの教会を直せると申すのであれば、
あながち嘘とは言えぬのか・・・」
アポペンが、コウヤサン教会を取り壊して、
その跡地に歓楽街を建設しようとした理由の一つに、
大勢の取り巻き達から唆された他、
教会の建物自体の老朽化というものも少なからず含まれていたのであった。
その場合、取り巻きらに反対されるのが見えていたので、
教会の再建は無理であるが、
孤児院のみは別の場所に再建してやろうと考えていた。
「ア、アポペン様!他国の者が取り仕切った大きな商売などを、
このアナポーの街で許しますと、他領の者達に馬鹿にされますぞ!」
「そ、そうですとも!この商いは世界を相手に出来るものと考えられますので、
その全てを取り仕切る事が出来ますれば、
アポペン様の御名前は名実ともに世界へと鳴り響く事となりましょうぞ!」
旗色が悪くなり始めたのを感じた取り巻き達が、
アポペンの自尊心を刺激して軌道修正を図る作戦へと出た。
「ふむ、確かに他国の者が中心となり大商いをするのには無理があるな、
教会の土地建物の管理は、兎も角として、
『水』の販売に関する権利のみを、私に売り渡すというのであれば、どうだ?」
「それに関しては、この国で長年暮らして居るっていう、
我が主の知り合いが後ろ盾になってくれて、
『何でも屋ゴールデン』とかいう店が流通・販売を行う予定になってるぜ」
「店主のレトリバーさんて人も、主の知り合いだって言ってたよね」
「ほお、あの『何でも屋ゴールデン』が流通・販売を手掛けるというのか・・・」
「ウ、ウソを申すな!
『何でも屋ゴールデン』と言えば国家公認の大商会であるぞ!
その様な所に、おいそれと販売依頼が出来る筈がありますまいて!」
「そ、そうだそうだ!言うに事欠いて、
この国の権力者でも、おいそれとはお会いする事が出来ない、
商会長のレトリバー殿の知り合いを騙るとは不届きが過ぎるぞ!」
「別に騙りをしてる心算は毛頭も無いんだがな・・・そうだ!
レトリバーさんって人は、いつも忙しいみたいなんで無理なんだけど、
この国で、後ろ盾になってくれるって人には連絡が取れるんで確認してみますか?」
「おお!それが良い!
アポペン様、どこぞの馬の骨かは分かりませんが、
その者に命じて、権利を譲り渡す様申し伝えた方が宜しいですぞ!」
「そうで御座いますとも!
この街の事は、この街の者が取り仕切るのが一番ですからな!」
「ふむ、確かに、この街での商売を取り仕切るとなれば、
その人物が、どの様な者かを確認して置く必要があるな、
その連絡と言うのは直ぐにでも取れるのか?」
「ああ、その人に直通の番号を聞いてるんで、
コレで直ぐ取れるぜ」
シュウが自分の魔導リュックから、魔導通信機を取り出しながら告げた。




