考え得(う)る障害
「お待たせ致しました。」
シュウとケンが無駄話をしながら会議室で暫く待っていると、
契約書を手にしたミコチャが戻って来た。
「先程、御確認を頂いた御内容と相違がないかを、
お確かめ頂けますか?」
ミコチャが同じ内容が記入された契約書が2部乗せられたお盆を、
シュウ達の方へと差し出しながら、そう告げる
「おう!ちょっと見てみるよ・・・・・うん!大丈夫みたいだけど、
どうかな?ケン」
「さっきの通りの内容に、ちゃんと成ってるみたいだね」
「さようで御座いますか、ありがとう御座います。
では、2部共にお二人のサインを御記入頂きまして、
1部はシュウ様方で、もう1部は当ギルドでの保管とさせて頂きますね、
無事の御契約を頂きまして、ありがとう御座いました。」
「いやいや、俺達も何かと世話になってサンキュな」
「お世話になりました。」
「これが私共のお仕事ですので、お気使い無く、
最後となりますが、シュウ様方に一つだけお伝えして置かなければ、
ならない事が御座いまして、
当商業ギルドは、お客様方の商売上に置ける情報を守ると言う、
守秘義務が御座いますが、
この街で商売を始めるにあたって、ただ御一方だけ業務の詳細を、
お伝えせねばならない方がいらっしゃるんですよ」
「ああ、この街の領主だろ?」
「こればっかりは伝えない訳には行かないだろうからね」
「はい、その通りで御座います。
それでなのですが、今回お扱いする事となりました商品が商品ですので、
後日、御領主様より、お二人への何らかの接触があると考えられるのですよ」
「まあ、必ず何かしらを言って来るだろうな・・・」
「自分が売った土地建物の事だしね・・・」
「それでなのですが、直接お二人で御領主様とのやり取りをされますと、
お二人が何らかの御不利益を被られる事が十分に考えられますので、
話し合いの席を設けられる際は、
当ギルドにて私も御同席にてでお願いしたいのです。」
「そりゃ、その方が俺達も助かるけど、
ミコチャさんが領主に睨まれるんじゃ無いのか?」
「そうだよね」
「いいえ、確かに当商業ギルドは、
窓口を構える街の御領主様には、ある程度の御便宜を御はかり致しますが、
組織と致しましては、地域や国に属さない世界規模な組織で御座います。
今回、御領主様とシュウ様方で交わされました
コウヤサン教会の土地建物に関します御契約書は、
当ギルド仲立ちの元に、この国の法に則った形式で、
作製されたもので御座いますので、
例え御領主様と言えども無碍には齟齬に出来ませんから、
大丈夫で御座いますよ」
「そう言う事なら、ミコチャさんにも協力して貰おうかな、
まあ俺達としても、その辺の対策に関しては、
ちゃんと、考えてはあるから大丈夫だと思うけどね」
「色々と、僕達への御協力を頂きまして、
ありがとう御座います。ミコチャさん」




