点検作業
「こちらの床板を、この様にずらしますと、
外れる仕掛けになってるんですよ」
コウヤサン教会の、長い廊下の端の部分の床板を、
ポキール神父が横にスライドさせてから持ち上げると、
床板がパカッと外れて、下へと下る階段が現われた。
「おおっ!忍者屋敷みたいだ・・・」
「面白い仕掛けだね」
シュウとケンは、異世界の木造建築も中々侮れないなと感心をした。
「ニンジャとは何ですかな?」
「ああ、忍者と言うのは、俺達の国に昔居た
隠密行動を主体とした専門職の事ですね」
「なる程、この国で言うところの斥候職の様なものですな」
「ええ、そんなとこです。
それじゃあ、床下や地下室を見させて貰いますね」
「終わったら声を掛けに戻りますから、
神父さんは、どうぞ、お仕事にお戻りください、
ご案内頂きまして、ありがとう御座いました。」
「ええ、分かりました。
では、お二人とも宜しくお願い申し上げます。」
神父は2人に声を掛けると戻って行った。
「さて、じゃあ下を覗いて見るとするか」
「うん」
2人が階段を下りて行くと、床下部分の階段には壁が無く、
中腰で立って歩けそうな高さがある床下をグルリと見渡す事が出来る、
外部に面した壁は格子状となっており、
シュウ達は、そこから入って来る風の流れを感じられた。
「外からの空気の流れを取り込んでいるから、
床下や地下室の湿気や、空気の澱みは大丈夫みたいだな」
「うん、空気が乾燥してるから、
建物の土台の木材も傷んで無いみたいだね」
「よし、床下の状態は後で詳しく見るとして、
まずは地下室から見てみるとするか」
「うん」
2人は、そのまま階段を下りて行って地下室へと向かった。
「おっ、勝手に明かりが点いたぞ」
「魔導具なのかな?」
2人が地下室へと足を踏み入れると、
地下室の周囲の壁に付いている明かりが、
活動するのに不自由が無い程度の明るさで灯ったのであった。
「へ~、結構な広さがあるんだな、
申し訳程度に野菜なんかが入れてあるけど、
ワインセラーとかに使ったら良さそうな感じがするな」
「う~ん、空気の流れが確保してあるから、
完全な地下室と比べると、室温の変化とかがあるんじゃ無いかな?
まあ、普通の部屋なんかと比べれば、格段に良い環境なんだろうけどね」
「そっか、確かに室温が変化するのはダメそうだよな、
さて、まずはケン、お前の建築魔法の『基礎』で地下室の状態を見てくれや」
「うん、分かったよ『基礎診断』」
シュウに命じられたケンは、
魔法で地下室の状態を診断しながら歩き始めた。
「あれ?」
「どうかしたのか?ケン」
途中で疑問の声を上げて足を止めたケンに、
シュウが質問をした。
「うん、この壁の向こうに、
そこそこ大きな空間があるんだよ」
「地下水なんかの関係で地盤が沈下したって事か?」
「ううん、そんなんじゃ無くて、
もっと下へと降りて行く階段があるみたいいだね」
「ほう・・・、すると、壁を作って隠されるか、
もしくは封印されるかしたって事かな?」
「かも知れないね、
それで、ここ如何しようか?シュウ兄ィ」
「そんなもん決まってるだろ!
こんな、面白そうなもん開けて調べるに決まってるじゃねぇか!」
「だよね、シュウ兄ィなら、
きっと、そう言うと思ったよ・・・」




