俺の足跡(あしあと)
「そんじゃ、今、材料なんかを出すから待ってね」
シュウから、ミケルンにプレゼントする木造細工物の材料として、
魔導リュックから、パヒューム・トレントの素材を、
取り出す様に言われたケンが、そう告げる
「あっ、ケン、お店を散らかしちゃ悪いから、
最初に、床に敷く物を出してくれるか?」
「オッケー、シュウ兄ィ」
ケンは、そう返事を返すと、
魔導リュックから取り出した
幾重にも折り畳まれた布を、シュウへと手渡した。
「おう、サンキュ、ケン」
シュウが、手渡された布を床へと広げると、
少し厚手の綿の様な素材で、畳3畳ほどの大きさの敷物となる
「そんじゃ、この上に出すね」
ケンは、そう言うと、
材料となる、パヒューム・トレントの枝の他、
小振りなサイズの鉈や、
大小様々な大きさの鑿や鉋、鑢などを、
敷物の上に並べていった。
「よっしゃ、そんじゃ早速、作業を始めるとするかな」
靴を脱いだシュウが、木屑が付かない様に靴下を脱いでから、
敷物の上へと上がりドッカと腰を下ろすと、
大まかな墨出しをした枝を、小振りな鉈を使って荒削りし始める
「そんじゃ僕は、後片付けが早く出来る様に掃除をするね」
ケンは、そう言うと魔導リュックから、
片手で持てるサイズで、家庭用の物より箒毛が細かい、
ハンディホウキと、木製の塵取りを取り出して、
敷物の上に落ちた木屑を掃除し始めた。
暫くすると、ラビ子とウサ太の生活必需品などを、
店の奥へと選びに行っていたミケルンらが、
シュウとケンが待つ、店の支払いカウンターへと戻って来る
「お待たせしました~
ラビ子ちゃんと、ウサ太君の生活に必要そうな御品物は、
取り敢えず、私が思い付く限りの物を選びまして、
魔導リュックに、詰め込んで置きましたよ」
「長らく、お待たせいたしまして、
申し訳御座いません、シュウ様、ケン様」
「待たせたな、兄ちゃんたち」
「いや、良い暇潰しを見付けて、やってたから、
全然、退屈なんかしてる暇が無かったんで問題無いぞ」
「うん、アッという間だったよね」
そこには、何かしらの作業をしていたという気配は一切無く、
ミケルン達を見送った時と寸分の違いが無く見える、
シュウとケンが、待ち受けていた。
「良い暇潰し・・・ですか?」
「それにしては、シュウ様も、ケン様も、
何かを、していらしたという雰囲気が御座いませんね?」
「ホントに、何かしてたのか?兄ちゃんたち」
「ええ、ただ、暇潰しでは言葉選びが悪かったですね、
言うなれば・・・そう、
俺が忘れられない為の足跡作りってヤツかな・・・」
「シュウ兄ィ、その言葉選び自体が変だよ・・・」
「また何か少し、初めてお会いした時みたいに、
おかしくなってますね、シュウさん」
「シュウ様、私達が居なかった間に、
何か悪い物でも召し上がられたのでしょうか?」
「シュウ兄ちゃん、オレたちが居ない間に昼寝でもしてて、
寝惚けてるのか?」




