罰 ←見なくて大丈夫です
衣服の隙間から見えるただれた肌。小指があるはず場所から落ちる血液。涙のように流れる血液
痛々しい。
私は急いで唯の元へと駆け出す。
「唯…! 唯…! 何でこんなことに……」
「俺の責任です。招待者じゃないと独断で判断しました」
私はゆっくりと男に視線を移す。
「お前…のせいか……。お前さえ居なければ……」
いや。居なかったら、唯は確実に死んでいた。けれど責めずにはいられない。
「何でもっと早く助けなかった…! 招待するならちゃんと最後まで面倒見ろよ」
倒れ込み、男にしがみつく。
「唯には……私みたいな思いをせずに居て欲しかったのに…」
涙が流れてくる。
後ろから下駄の音が鳴り響く。
「琥珀……処罰は受けますね…?」
新郎狐――信の言葉だった。
「はい…どんな罰でも受け入れます」
「よろしい。……それと確認ですが、そちらの娘と契約を結びましたね?」
琥珀と呼ばれる男は唯を見ながら
「はい」
「……そうですか。分かりました。罰として貴方に仕事を与えます」
客席に居た狐達がざわめく。
「今の仕事を継続しつつ松井家の世話係をしていただきます」
は? そんな軽い罰でいいの…? 唯は死にかけてるのに。
それに私の家族は結婚式が終わったら解放するんじゃないのか?
一億歩譲って、異界に住むことを認めるにしてもこんな男に家族の面倒なんて見せられない。
「納得いきません。もっと重い罰を俺にください」
「どうせ貴方は罰を受けなくとも派閥に身を揉まれるでしょうから。私としてはその程度で結構です……それに貴方はもう妻がいる身なのですから…起きた彼女に心配かけてはいけませんよ」
こんな奴にも妻がいるのか。妻はさぞかし心許ないだろう。こんなに役立たずな夫で。
「はあ…そんなに罰がほしいのでしたら一つあげましょう。明後日に貴方とその娘の結婚式をあげてください」
「その娘ってもしかして…」
信は私に向き直り、微笑む。
「そうですよ。松井唯さん……ですよ」
信は顎で琥珀を下がらす。琥珀は暗い表情で客席の方へと行く。
「さて、私達の結婚式を再開しましょうか?」
彼は私を強引に引っ張る。先ほどの場所に戻り、私は再び血液と向き合った。
私はお皿を捨てる。
「私には既に愛する夫がいるんだよ! こんなもの飲んでたまるか!! 飲んでほしかったら唯の――」
信に口をふさがれた。唇と唇が重なり合う。舌を入れられる。
初めて彼と交わしたキスは血の味がした。
私は横目で夫を見る。夫の表情…目、それら全てを言葉で表すなら絶望だろう。




