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狐は私を帰さない  作者: こもりみかん
始まりと再会

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狐の嫁入り

おばあちゃんが死んだ。

私はおばあちゃんのことを思い出した。

古傷を負っているおばあちゃんが話し出す。


『狐の嫁入りだけは見てはいけないよ』

『見てしまったら異界に飛ばされてしまうから。世間から見たら神隠しさ』

『そこは危険なんだよ。ここがどれだけ幸せか噛み締める程に』

『だからお願いするよ。私が死んでも葬式には出ないでおくれ』


 私は葬式に出ないでほしいと言った理由が分からない。今でも。狐の嫁入りが関係しているのだろうか? でもそれってたかが迷信だ。

 行方不明者の理由を昔の人が考えたものだろう


 こういう考え方だからもあるが、何より私はおばあちゃんっ子だったので葬式には参加することにした。



おじいちゃんが前に出て、マイクを受け取る。


「本日は忙しい中、来てくださりありがとうございます。私が初めに珠子と出会った時、凄く怯えていました。それに傷がたくさんあり、心配で保護しました。そんな彼女と信頼関係を築き、こうして結婚まで至ったのですが……こんなにも別れが早いとは……。百歳まで生きると思ったのに……。八十歳で天国に行ってしまうとは……」


 おじいちゃんは涙を流す。私もつい涙が移ってしまう。他の人も泣いている。


 おばあちゃんとの記憶が蘇る。

毎日学校帰りに寄るのに嫌な顔せず笑顔でご飯を振る舞ってくれたおばあちゃん。

誕生日や祝い事を忘れずにプレゼントしてくれたおばあちゃん。


 そっか…。おばあちゃんはもうこの世に居ないんだ。


「皆さんにも珠子との大切な思い出があるはずです。それを思い出しながら花を添えてやってください」



 順番が来て、花を添える。

「おばあちゃんごめんね。来ちゃった。ちゃんとお別れがしたかったんだ」


 棺桶に蓋が閉められ、私は別れを告げる。

――ばいばい。おばあちゃん…。

 涙を流して、棺桶が霊柩車に入れられる様子を見送る。


 そんな時、微かに鈴の音が聞こえた。

 私は何事だと思って、辺りを見渡した。私と同じく見渡してる者は数名。

 一向に鳴り止まない。その音が気になり、私は

「すみません。飲み物買ってきますね」

 と言って、音の元へと駆け出した。


 追いかけ続けて裏路地に着く。まだ音源は掴めていない。

 私は足を止めない。そうして進んでいくと建物越しにあるものが目に入った。


――あの行列……何…?

 仮面を被り、狐のような耳が生えた人?達がゆっくりと歩いている。

 まるで祭りに参加しているようだ。けれども祭りをまだ開催する時期ではない。

 さらに不思議なことに周りの人は素通りして見向きもしていなかった


 その行列に魅入っていると足首が掴まれたような感覚に陥った。

 足首を見ると、黒く長い手に掴まれていた。

「い、嫌!!」

 私は空を蹴って振り解こうとする。けれども手の力は強い。

 手は窓ガラスから生えてきていた。

「何これ!離して!!」

 引っ張られて、私は倒れてしまう。爪を地面につけて抵抗するが、引きずられる。

「だ、誰か助けて!!」


 私の叫び声は行列の最後尾にいた一人に届いた。その者はこちらを向く。

 けれども、その者が反応を示す前に私はガラスの中へと引きずり込まれた。

 ガラスの先ではなく、見知らぬ異界に来てしまった。

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