表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かくも世界は醜くて~魔導師学校の陰陽師~  作者: おおよそもやし
空空周りて行先なし
96/107

言葉にしたい

 異能を持たない相手が霊力や魔力を過度に浴びると、中毒症状を起こして最悪死んでしまう。

 そんなこと、ずっと分かってたはずなのにな。


 ダメだったところが分かってほっとしたけれど、それ以上に僕が一時の感情で他人を殺しかけていたことに気付かなかったことに失望した。あれだけ時間をかけて訓練して戦って研ぎ澄ませてきたはずなのに、どうしてこんな単純なことすらできなかったんだろう。

 なんだか居づらくなって、少し離れた場所に座り込んで空を見上げた。赤い空が血の色みたいで気持ち悪い。同じ色なのにサヤの目と全然違う。不思議だな。

 ……故意でないにしろ、危険に晒したことは変わりない。佐伯が固まっていたのだってきっと、僕の霊力に当てられたせいだ。だから平里は怒ったんだ……サヤがいない僕って、こんな初歩的なことにすら気付けないほど愚かなんだ……悔しい。悔しい。悔しい……!


「神原先輩、大丈夫ですか。」

「あー……うん。大丈夫だよ。」


 声に反応して向き直った彼は、煩わしくなったのか眼鏡を外していた。彼の顔にはやっぱり見覚えがある。変装のためか少し化粧で誤魔化しているとはいえ、大元の顔立ちまで変えられる訳じゃない。顔に薬品を塗るだけなのだからパッと見の印象は変わっても、注視すれば元の顔が見えてくる。

 とはいえ、僕や平里はあくまで「似ている」程度で全く同じ顔とはいえない。にも関わらず茜塚やこの後輩の顔は前世のものと変化がないように思える。

 ……まさかミクラサラみたいに死なない呪いを掛けられる奴が他にいるわけないし……そもそも彼らはどう見ても前世の頃よりも幼い。若返り続けるにしたって限度があるだろうし、何よりそんなことができるなら茜塚のいた「常世教団」なんて既に壊滅させていただろうし。

 僕らよりは弱かったけれど、僕ら以外には負けないくらい鍛え上げたんだから。無力な子どもにでもならなければあんな有象無象の集まりに良いように利用されるはずがない。

 ……なんだけど、名前はやっぱり思い出せない。彼は茜塚と組んでて、監督役が小鳥遊(ことちゃん)だったことは覚えてるんだけど……


「……大岩!」

「茜塚。」


 大岩……そうだ!大岩(おおいわ)千紘(ちひろ)だ。思い出した。

 前世でも身長と同じくらいの大盾を軽々と振り回していたけれど、やっぱり今世でもそこは変わらないみたいだ。


「えっと……久しぶりだね。元気だった?」

「ぼちぼちだな。茜塚の方こそ大丈夫だったか?『常世様がいなくなった』と噂になっていたが、あれは茜塚のことだろう?」

「知ってたの?」

「色とりどりの蝶の異能と聞いていたから、そうじゃないかと思っていただけだ。」

「なるほどねー。」


 そうだと分かってから思い返してみると、初対面のときから無愛想だった理由もなんとなく分かってきた。目立ちたくないならあの状態のサヤには近付けない。それにサヤは前世を恋しがっていたから、バレたら絶対に距離を置けなくなっていたはずだ。

だから仕方ない。仕方ない、けど。

 ……なんか、ムカつくな。


「……っ!?あ、あれ?神原先輩……?怒ってますか?」

「怒ってはいないよ。ただムカついてるだけで。」

「それは同じことでは……!?」

「あはは、大岩。」

「はい」

「君は誰の味方?」


 少なくとも大岩はサヤの味方ではない。ならとりあえず、どの勢力、誰の傘下かははっきりさせておきたい。

 軍服組は解放軍括りで良いだろうけど、他は茜塚みたいに個人の味方してる場合も考えなければいけない。前世の知り合いだからといって無条件に信用できるほど単純な状況ではないし、疑心暗鬼のまま戦って死ぬなんて最悪だ。

 ……とりあえず戦力不足な双子は時雨と一緒に追い返そう。そうしよう。


「味方……ですか。」

「そう。サヤの味方ではないんでしょ?それなら誰の味方なのかなーって。」

「それは……言えな」

「大岩?」

「…………指示、は、そこの…………」

「ああ、望月さんか。」


 指示『は』ってことは本命は他にいるってことかだけど、言いたくないか言えないか。現状からして後者の可能性が高いか。面倒くさい。

 歯切れ悪く答えた大岩の指の先でたなびく鈍い金の髪。あの髪も僕と同じで神様の色なんだろう。宇迦之御魂神だから稲穂の色かな。

 ……あーあ……あの赤が恋しい。サヤの血の色みたいな赤い目が。あの目でくるくる表情変わるのが大好きだったのに。僕はもう見れないんだ。


「神原先輩?どうかしましたか?」

「……君らは一緒じゃなくて良かったねって思っただけだよ。」

「え、えっと……それってどういう……?」

「別にー。ただの嫉妬だよ。」

「嫉妬、ですか?」


 嫉妬も嫉妬、純粋な嫉妬だ。

 顔を合わせられて、会話ができて、肩を並べられる。

 たったそれだけの事がもう僕らには許されないんだから、これ以上間違える訳にはいかない。……これ以上、知人を失うのは嫌だ。謝ったら許してくれるかな……許してもらえなかったらどうしよう。怖い。でも。

 だからと言って何もしなかったら悪化するだけだから。頑張らないと。

 ……勇気を出さないと。これからも側にいたいなら。


「……ごめん、ちょっと用事あるから行ってくるよ。」


 僕は2人にそれだけ言って走り出した。

 この勇気が少しもブレないうちに、伝えたい。謝りたい。

 一緒にいたいよ。


「平里!……と、佐伯さん。少しお話良いですか?」

次話更新は1週空けて9/27になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ