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私のペットは皆何故か凶暴です(仮名)  作者: じゃがいも
まずは味方を作りましょう
33/43

好々爺のプレゼント攻撃






えぇ……。


何今の……。




止めてくれ。

ただでさえ今も大変なのに、これ以上問題を増やさないでくれ。

変なこと言わないで欲しい。



まるでこれから私が、身の危険を感じてしかも多少の怪我もするみたいな……。

面倒事が舞い込むのが、既定路線の様な言い方は止めて欲しい。

縁起でもない。



何とも言えない顔でイケオジを見ると、変わらずにっこりと笑いかけられた。



「ブレスレットは肌身離さず身に付けて、小瓶もいつでも使えるように隠し持っておいてくださいね。」



「えぇ……?っていうか、あの人知り合いですか?」



「さぁ?でも腕が立つって評判らしいですよ。」



いや、何の?


飄々とした雰囲気でお爺さんは笑みを深めると、この話はもう終わりだとばかりに抱き上げられる。



何とも釈然としない気持ちのままお爺さんを見ても、目が合ったらフッと優しく目尻を下げるだけ。



おっけーおっけー。


とりあえずブレスレットを付けてても特にどこか痛む訳でもなし、面倒なのでそのまま付けておこう。

メイド業務に戻ったら、適当に袖で隠せばいい。


小瓶もスカートのポケットに入れとけば、問題なし。



全て解決。



薄気味悪い奇妙なお婆さんのせいで、私の未来に不穏な空気が漂っているが、お爺さんもこれ以上話す気は無いらしい。

何も分からない状態で、今からたらればを考えてもしょうがない。

不安になるだけだ。

実際に危機に直面したら、それはもうその時考えよう。



決して、もはや考えるのが面倒になったからでは無い。

とりあえず全部まるっと見ないふりをして、ただの可愛いブレスレットを貰ったとだけ思っとこう。




ハッハッハー。


こういうブレスレット昔買った買った。

もはやオマケが本体の、お菓子を買うと付いてくるチープなブレスレットのおもちゃ。


なっつかしい〜。




気を取り直して露店を見渡せば、店じまいをした事によってここだけぽっかりと空いている。



そこには新たなテナントとして誰かが入る訳でも無く、また店内にいる店主も気にした素振りもない。

いやあれは、奥で魔道具を弄っていてこっちを見てないだけ?


お婆さんがいた所には、テナント料としてか2~3枚のコインが落ちていた。




ふと、お婆さんと話している時は、周りがやけに静かだった事を思い出す。

まるで周りに誰も居ないみたいに。

いや、他にも呼び込みの声は遠くで聞こえていた気がする。


確かに不思議なお婆さんではあったし、変な事も言われたが、話すのも躊躇う程変な人でも無かったような……。




その割には、何か引っかかるんだよなぁ。

モヤモヤしていると、お爺さんに次は何を見ますかと話しかけられる。





あ、そうだった。

これから家出して街を出るかもしれないんだし、ランプとか鞄とか旅装束を見ないと。

良い物があったらすぐ買わないと、ここでは掘り出し物はすぐ売れてしまう。





両隣から聞こえる、子供が大人相手に繰り広げる丁々発止な会話や、元気な子供達の呼び込みの声を背に、私達は次の店に向かった。











うーん。


どうしよう……。




次に向かった私がさっそく何に悩んでるかというと、可愛くてオサレなランタンを買うか、機能性重視といった感じのちょっと安めの無骨なランタンにするか。



無骨なランタンも悪くないんだけど、ちょっと安い分他の平均的なランタンよりワンランク機能性が落ち、大きさも大人用でゴツくて重くて扱いずらい。


女性用に設計された、可愛くてオサレなランタンは軽くて小ぶり。

子供でも楽に持てて、さっきより扱いやすい。

でも無骨なランタンと比べれば、ちょっと値段が高い。

しかも他の平均的なランタンより、機能面がツーランク下。



機能性を取るか……、いやでもこっちはめっちゃ重くて扱いずらいし、でも扱いやすい小ぶりで可愛いオサレなランタンでは機能面が落ちる。


今後、長く使うかもしれない事を思うと機能面だって捨てきれない……。

値段だって大切だし……。


うんうん唸って悩んでいると、見かねてお爺さんがそのどちらでもないランタンを店主にしれっと手渡した。

平均よりうんと機能が高く、かつ小ぶりで軽くて扱いやすい、可愛くてオサレなランタン。


でもチラリと見えた値段は、全く可愛くない。



「お、お爺さん?!」



「ふむ。後は、この子が足首まですっぽりと隠れるぐらいの外套(マント)も1つ。」



「あいよ。」



「触り心地が良く、体温調節機能付きで、姿が見えなくなるマジックチャーム付きだと尚いいですね。」



「あぁ。じゃあこれかこれだな。」



お爺さんはチラリと私に目をやると、すぐに品が良さそうな落ち着いた雰囲気の濃紺のマントを選ぶ。



「ちょっ、ちょちょ!タンマタンマ――――じゃなかった!待った待った!!」



「毎度あり〜!!」




お爺さんは飄々とした雰囲気で目だけ面倒そうにこっち目をやると、素早く代金を払い私が止めるのも構わずどんどん商品を受け取ってしまう。

店主はこの機会を逃さないとばかりにお爺さんと結託し、手早くやり取りをしてホックホク顔。



「えっ、ちょ!へぶっ!!」



再度止めようと口を開けば、お爺さんは受け取ったマントで手早く私を包んでボタンを留める。



「姿を隠したい時はフードを被って、ここのボタンを留めてくださいね。」



「えっ、はい。…っいや、そうじゃなくて―――」



「ランタンはまた後で渡しますね。」



「えっ、あぁ、はい。ありがとうございます。」



「はい。それじゃあ着替えの服とマジックバックも買いましょうね。」



「へっ?!」



「これだとちょっとお高めのやつの方が良いでしょうな。あぁ、お気になさらなくても大丈夫ですよ。大丈夫。何も心配は要りません。」



「いやいやいやいやっ、心配しかないです!!それに、そこまでしてもらうのは――――……っじゃなくて、さっきの凄い高―――」



「あぁ、酷い酷い。貴方まで私を苛めるのですね。」



「へっ?!」



「せっかく人使いの荒い主人から離れて、たまの休みに孫の歳程の子に、ちょーっと色々ストレス発散で買い与えただけなのに……っ。」



お爺さんは声を震わせて悲痛な面持ちで、わっと手の平で顔を覆う。



「まぁ、そう言ってやるなよ可愛いお嬢ちゃん。孫の歳程の子には色々と買い与えたくなるもんさ。良いお爺様じゃねぇか。」



「えっ」



「あぁ、酷い酷い。孫の様な子に色々買い与えただけなのに、私の楽しみが無くなってしまう。」



「えっ」




「ほら、こう言ってるんだし、たまには爺孝行してやれよ。」



「えっ」



「あぁ、この日をと〜っても楽しみに仕事を凄い頑張って来たというのに。あぁ、可愛い孫がせっかくの贈り物を受け取ってくれない。」



「えっ」



「何て悲しい、切ない。もうこの歳ですし私だって老い先短いのに。後何回こうやって出来る事かっ。」



「お嬢ちゃんの爺さん、良い爺ちゃんだなぁ。くっ、泣かせるじゃねぇか。大事にしてやるんだぞ。」



「えっ」



「ではまた。さぁさぁ、行きましょう。他にももっと色々と買ってもらわないと。」



お爺さんは店主にお礼を言って、にっこり笑顔で私を抱き上げどんどん次の店に向かってしまった。




いや、私はいつから孫に……?





思わず私は、宇宙を背負った猫のような顔になる。


いつの間にか私は、孫の歳程の子から孫の様な子に。

そして瞬く間に、ついに孫にまでランクアップした私には❝遠慮して普段わがままを言わない孫と、色々と買い与えてやりたい好々爺❞という設定がいつの間にか出来上がっていた。



行く先々で遠慮すんなよとか、爺孝行してやれとか、本当に感動してるのか売上を上げる好機と見たか、店主達も一緒になって言う始末。


大金を使われる側の私が、何故か止めに入るも多勢に無勢。



次から次へと商品を出してくる姿は、いっそ清々しい程商魂逞しい。

極論、どっちでもいいんだろうな。




それに孫じゃないと否定しよう物なら、さっきの調子でいつの間にか❝長い間会えなかった為、関係が少し拗れてしまっている祖父と孫❞という設定も何故か追加された。

そして生温い目で、まぁそう反抗してやんなよと宥めすかされ、分かった分かった辛いよなと謎に同情された。





面倒なので、私はもはや諦めた。






知らない内にお爺さん単体のプレゼント攻撃からお爺さんと店主達の波状攻撃に変わり、その内さらに行く先々で周辺一帯も巻き込む事に。

商品を何も買ってない周りの店主からも、やんややんやとバフ・デバフが付いた事によって私は1日して完全フル装備に。

しかも全ての荷物はマジックバックへ収納済みの最軽量、今すぐ旅に出られるぐらいになった。



どうしてこうなった。




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