キッシュが美味しいから、お爺さんは良い人。
「オードブルになります。ベーコンとほうれん草、チーズとキノコとじゃがいもの具沢山田舎風キッシュです。」
キッシュ良いね!
キッシュ!!
キッシュはきつね色に焼きあがっていて、辺り一帯にふわぁ〜っと良い香りが立ち込める。
もう匂いからして絶対美味しいやつ。
ナイフとフォークでちょっとずつ崩して、食べ進めて行く。
面倒だな〜。
手掴みでパクパクかぶりついて食べたい。
行儀が悪いのは分かってるけど、そっちの方が口いっぱいに入って幸せはたくさん入るし、私も幸せ、美味しく食べれてシェフも幸せ、WIN-WINだと思うんだけど。
まぁね、そんな雰囲気じゃないしね。
椅子に座らせてもらって、ナイフとフォークでキーコキーコしてる小洒落たお店なので、ちゃんとしますけどね。
私があまり、こういう場に慣れていない事をお爺さんは分かっているのだろう。
お爺さんと目が合うと飄々とした顔ではあるけど、よしよし、珍獣はちゃんと大人しくしてるなみたいな顔でにっこり頷かれましたしね。
まぁ、美味しい物が沢山食べられるので良いけど。
ナイフとフォークで崩されたキッシュは、熱々のチーズがみょーんと伸びて、めちゃくちゃ美味しそう。
熱々のキッシュを口の中に入れると、サクッとした軽い食感に、アッツアツのチーズがとろ〜っと蕩けてくる。
んんん〜!
あっつ。
細かく切られたベーコンの程よいしょっぱさと、チーズのまったりした塩味。
そこにゴロゴロと入ったじゃがいもがホックホクで、もう間違いない組み合わせ。
きつね色に所々緑が混じったキッシュには、湯気がふよふよと上がっており、見てるだけで食欲を誘う。
食べ進めていくうちに、キノコの旨味がじゅわわわぁ〜っと出て来て、トロ〜っとしたチーズのまったりと程よい塩味と、ベーコン旨味塩味が絡み合う。
しっとりとしたほうれん草。
ゴロゴロと入ったホックホクのじゃがいも。
サックサクの生地がその極上のソースを吸い、混ざり合い染み込んで、えも言われぬ美味しさ。
キッシュ美味しい。
キッシュ好き。
つまり、連れて来てくれたお爺さんも好き。
お爺さんは、美味しい物を沢山くれる良い人。
お爺さんは、美味しい物を沢山知ってる。
つまり、お爺さんに付いて行けば美味しい物を沢山教えてくれる。
つまりは、お爺さんは信用していい人。
なるほど。
とにかくお爺さんとは仲良くならないと。
お爺さんとは今も楽しく話せているし、この先も仲良く出来るだろう。
キッシュを黙々と食べて幸せに浸っていた私は、とても良い考えが浮かんだ。
何故か分からないが、とりあえず私はこの先の展望は明るいなと謎の確信を持った。
とても美味しいキッシュが食べられて、頭がパッパラパーになってる気がしないでもない。
でもキッシュがとても美味しい事は間違いないし、とりあえずこのキッシュが明日への活力になっている事は間違いないので、良しとしよう。
キッシュ美味しい。
キッシュの付け合せに乗っていた野菜には、フレンチドレッシングのようなサッパリしたドレッシングがかかっていて、舌がスッキリする。
レモンのような風味もあり、後味爽やか。
次に来たのは温かいかぼちゃのポタージュ。
生クリームを使っているのか、クリーミーで甘ーくて優しい味。
熱々のポタージュからは湯気がふよふよと上がっているので、キッシュもポタージュもふぅーふぅーして食べているが行儀的な物は何も言われない。
ある程度目溢しされているのか、そもそも異世界ルールが違うのか。
とろとろとしたかぼちゃのポタージュは、子供が喜びそうな、甘ーくて優しい、まったり濃厚な味。
牛乳やかぼちゃの優しい甘みが、お砂糖によって子供でも美味しく食べられるぐらい、さらに甘く優しくなっている。
しかもバターのようなコクと、生クリームのまったりとしたクリーミーさが口いっぱいに広がっていき、口の中に幸せが広がっていく。
とろとろ〜っとしたポタージュは口当たりなめらかで、至福の時間に舌鼓を打っていると奥底からふわりと香る、メープルシロップのような優しい甘みと香ばしさ。
んんん〜、何これ〜。
めっちゃ合うー!
まるでスイーツでも食べているかのような美味しさは、私のテンションと共にお爺さんへの信頼度もうなぎ登りに上がっていく。
それにしても、元々そういうメニューだったのかもしれないが寒い日に子供が喜びそうな物が、ある程度メニューとして出て来てる気がする。
さすがは高級店。
ちょっとした気遣いが凄い。
メニューには値段が書かれてなかったのでいくらするのか知らないが、隠れ家的なレストランは立地的には一等地から少し離れた所に建っている。
だがその内実は、一流高級店に勝るとも劣らない内容。
シェフも凄いしレストラン自体も凄いし、このレストランの常連らしいイケおじも凄い。
さすが、モテる男は知ってるお店も凄いんだなぁ。
口の周りを甘〜いタレでベットベトにしながら、露天の串焼きをニッコニコで頬張っていた私には、到底出来ない芸当だ。
子供が喜びそうな甘〜くて優しい、メープルシロップが香るとろっとろのかぼちゃのポタージュは、私の頬をゆるゆると緩ませる。
んふふ。
底が深いもうちょっと大きいでお皿で、口を付けてゴクゴクと飲みたいぐらい美味しい。
このお店、いくらぐらいするんだろう。
自分のお金でも、通えるぐらいのお店であって欲しい。
じゃないと頻繁に通えない。
お金を払う時にしっかり確認しないと。
かぼちゃの美味しい美味しいポタージュを飲み終わり、大変口寂しい思いで考えていると次の料理が運ばれてくる。
「ポワソンの鮭のムニエルとブリオッシュ・ブールです。ソースはレモンバターになります。」
こんがりと焼けた鮭からは、ふんわりとバターの香りがしてきて食欲が唆られる。
お爺さんは少し切れ目が入っているフォークとスプーンを使って食べているので、私も見よう見まねで食べ進めていく。
鮭の皮を取ると、皮はパリパリに焼かれていて皮が苦手な私でも食べられそうだ。
スプーンで少しづつ崩して食べていくと、最初に入ってくるのはレモンの爽やかな香り。
次いで、ふわりと香るバターのコク。
何これうま〜!
んん?
これは〜、醤油かな?
ふわりと奥底から香る醤油は、バターのしつこさを少し軽くしてくれる。
ちょっと馴染み深い味がして、何だか少し安心する。
バター醤油とか間違いないもんね。
ここのシェフ、良い仕事するなぁ〜。
ふむ。
鮭があって醤油があるなら朝ご飯に焼き鮭と卵焼き、味噌汁に白米で焼き鮭定食でも食べたいなぁ。
出来れば漬物と、緑茶も付けて。
ここ最近、全く和食を食べていない。
元々洋食が好きな人だったので当初はそこまで不便が無かったが、いざこうも食べられないとなると、不思議と食べたくなる物で。
さっきの串焼きも醤油が使われてたし、あるにはあるけど、まだそこまで普及してないのかなぁ。
パリパリこんがりによく焼けた鮭の皮を食べると、よくよく焼けているからか、まるでお菓子かのように食べ進められる。
身や鮭の皮に残った塩っ気が、口の中をサッパリさせていく。
ちゃんと綺麗にパリパリに焼くと、私でも食べられるんだ。
お店の人に貰った丸いパンは、ちょっと黄色くてふかふかしてる。
大きさは、大人の拳1個分より少し小さめ。
柔らかさは現代並みで少し安心。
きつね色にこんがり色付いたふわふわパンからは、ふわぁ〜っと小麦やバター、砂糖の甘い香り。
んんん。
これはギルティ。
見た目と香りからしてその殺傷能力の高さが伺える。
ほわほわとした湯気が上がるパンを1口口に入れれば、はいギルティ。
これはダメ。
牛乳や小麦の優しくて甘みのある、ほわほわふかふかふんわりパンに卵やバターの香りとコク。
それに加えて口の中で、砂糖の甘さが溶けていく。
ふんわりとした軽い食感に、バターのコクと微かな甘み、そして中に小さく練り込まれていたバターがとろ〜っと溶けて微かな塩っ気。
んんんー。
いくつでもパクパクと食べられちゃいそう。
これは罪深いな……。
ここのシェフは何ていう物を……。
付け合せの茹でたじゃがいもと葉野菜とプチトマトも、レモンバター醤油のソースと一緒に絡めて食べれば、これまたオシャンティ。
茹でたじゃがいもはホクホクしてて素材だけでも美味しいし、そこにソースがかかっててじゃがバターをオシャレに進化したみたいな味。
葉野菜と一緒に食べれば野菜独特の香りがふわりと香り、シャキシャキとした食感が楽しい。
バターのコクと醤油の塩っ気に、レモンの爽やかさがシャキシャキとした食感の葉野菜に上手くフィットして、葉野菜も美味しく後味サッパリ食べられる。
最後にプチトマトを食べれば、プツッと鳴る音と共にジュワリと爽やかな酸味が口の中にいっぱいに広がる。
口の中はサッパリして、まだまだ食べられちゃいそうだ。
ここのシェフ凄いな〜。
もうマジで、この人に毎日料理作って貰いたい。
皆さんは、キッシュが美味しくてもよく考えてください。




