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メスガキラー  作者: わっか
第二部 ベアリィ編
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第28話 協力

 樋郡ひごおり らむね――。


 私と同様に、中倏なかじょうからいじめを受け、契約者となった少女。

 だが、今はその力を復讐に利用している。


 「……それで、何か質問は?」


 クマ子は私に尋ねてきた。


 「分からないんだけど――」


 「……何が」


 「どうしてあんたが、この件に首を突っ込んでんの?」


 見せられた画像から判断するに、クマ子の制服は東征学園のモノではなかった。

 よってクマ子は、そこの生徒ではない。

 いじめを無視した結果、暴挙に出ている樋郡ひごおり らむねを、せめてもの罪滅ぼしとして止めようとしている訳ではなさそうだ。


 「…………」


 クマ子は言葉を選んでから、話し出した。


 「……中倏なかじょうを筆頭とした五人グループ、その内の一人“下帯しもおび 野乃花ののか”、私は彼女を救いたい」


 「誰? 友達?」


 「……まぁ、知り合いみたいなものだ」


 これまではっきりとした物言いだったクマ子だが、この件に関しては曖昧あいまいな言い回しで答えた。


 「そいつも中倏なかじょうのグループの一人なわけでしょ。樋郡ひごおり擁護ようごする気はないけど、はっきり言って自業自得ね」


 「……彼女は他の三人と違い、中倏なかじょうの指示で樋郡ひごおり らむねに危害を加えたことは無い……はずだ」


 私はクマ子の話に耳を傾ける。


 「……下帯しもおびは成績も良い真面目な生徒だが、内気な性格なため強気な相手の言う事には逆らえない。

 中倏なかじょう下帯しもおびに対する大人達の評価を利用し、彼女をグループ内に置くことで、樋郡ひごおり らむねへの行いを目撃されても彼女も居るのだから、それがふざけ合っているだけという説得力を持たせたんだ」


 「……」


 「……下帯しもおびは自分を守るため、中倏なかじょうに従うしかなかった。だが、危害を加えていない彼女が他の連中と同じ目に遭うのは不憫ふびんというものだ。

 ……それでも樋郡ひごおり らむねは下帯しもおびにも危害を加えるだろう。

 ……私は、それを防ぎたいんだ」


 私は冷たい口調で言った。


 「要するにただの腰抜けでしょ。私からしたら大差ないわ」


 私の中に、あの時のクラスの連中の顔が想起された。


 けなしても良いとした相手であれば、得意げに心無い言葉をぶつけてくる。

 それで、強くなったつもりか。

 相手が私でなく中倏なかじょうであれば、同じような振る舞いが出来ただろうか。

 そうした安全圏から都合の良い時だけしゃしゃり出てくる奴らは、当事者と同じくらい嫌いだった。


 急に不機嫌になった私を見て、クマ子はしばし言葉に詰まっていた。


 「……それで、お前の返事を聞こう。

 ……今は時間が無いが、この件が片付いたら、私が知りえる情報をお前に教えよう。

 ……私も情報を共有しておきたいしな、……約束する」


 「……」


 私は気持ちを落ち着かせた。

 下帯しもおびの件に関しては何か本心を隠している気がするが、これ以上追及しても無駄だろう。


 私はこれまでのクマ子との会話を通して、彼女は話せる奴だと思った。


 私のアパートを訪れた時、クマ子は近すぎない距離をたもって、一人で私の前へ現れた。無防備なその身をさらし、私に念押ししてから、自分のキラードールを見せる。

 それでも私が逃げるには十分すぎる余裕を残し、話を切り出した。

 私への敵意がないと感じさせるには、十分な対応だろう。

 実際そこまで考えていたかは不明だが、クマ子は計画的に行動するタイプだと感じた。


 また、クマ子は自分の腕には自信があるとも言った。

 合理性や論理性を重視する彼女なら、それは自惚うぬぼれではなく自己を客観視した上での自身の評価なのだろう。


 そんなクマ子を負かしたのが、今尚いまなお同級生を襲っている樋郡ひごおり らむねだ。


 私は2体のアサブクロとの戦闘以来、一人での限界を感じつつあった。

 単細胞なアサブクロと違い、それが意思を持った契約者相手なら、今回のように敵対する事になった時、私は勝利を収める事が出来るだろうか。


 突如として置かれたこの状況に、そこに潜む謎を解き明かすには生き延びなければならない。


だとしたら、今回の件でクマ子に貸しを作る事は決してマイナスにはならないだろう。


 そうだ、私には必要なのだ。

 共に戦っていく、信頼し合える仲間が。

 その先にある、答えに辿り着くために――


 私はクマ子の瞳を真っすぐ見据え、答えを出した。


 「――分かった、協力する」


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