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異世界で開拓を  作者: 急行 千鳥
海軍都市編
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海軍都市編-17

恐らくこれで海軍都市編は終わりです。


えっ?海軍都市編ではなくドラゴン編?


・・・そうかも。


今後海軍都市はあちらこちらに少しずつ出てくると思います。多分・・・

流行病。

はやりやまい、とも読めます。


それはどうでもいいです。


この微妙に技術が発達していない世界では、一番恐れる事態が流行病の蔓延だ。医者が全員倒れた瞬間、本当の意味で“終わり”になってしまう。


さて、なぜこんなことを話しているのかと言うと、これが都市づくりに重要だからだ。


実は、ある時を境にしてある都市では流行病が一気に減った。



それは・・・



「下水道です!」

俺は大声で言った。

「下水道?」

ダドリーさんが問い返した。美佐さんは下水道の存在は知っているだろうが、それと流行病がどう関連するのかわからないのだろう。首をかしげている。

「いいですか!流行病には水から来るものも多いのです!そしてきちんとした水処理をしないと生態系に多大なる影響を及ぼします!水は生きるための生命線ですが、逆に命を奪うものにもなるんです!上水道と下水道の整備!これは第一です!」

「し、しかし予算がねぇ・・・」

「ダドリーさん!あなたは流行病で人の住めない都市を作るおつもりですか?」

「いや、そう言うわけではないが・・・。いまのところこの桜市でも流行病は起こってないわけだし・・・」

「桜市はすでに危険域なんです!俺も早く気づくべきでした。まさか、井戸水を使用しているのに下水道を整備していないなんて!


僕らの世界では、西暦1854年のロンドンで、ジョン・スノウと言う人が“コレラ”という病気の原因を汚水の侵入した公衆の井戸水だと科学的に証明しました。公衆衛生上、汚水排除が重要であることを裏付けるものとされています。

さらに・・・」

ここでダドリーさんが折れた。

「わかった!予算はどうにかするから!

具体的な処理方法などを教えてくれ!」

「わかりました。」


実は土木工学には、こういった環境方面の学問も含まれる。上下水道なんかも思いっきり土木工学の範囲だったりするのだ。


まずは上水道を整備する。


もちろん、川から水を引いてろ過をするのだが、ろ過方法にはさまざまある。

一番簡単なのは、“緩速ろ過”だ。砂と礫の層に水を通してろ過する方法で、一番原始的ともいえる。砂や礫でごみを取り除き、砂や礫の層にいる微生物で浄化してもらう。

井戸もこれと変わりない。

だが問題は、浄水の生産能力が低いことだ。とにかくろ過に時間がかかるため、もしこれだけで水道を賄おうとしたら大変大きな施設になってしまう。

それに、水を取る川にもある程度の水質を求めることになる。これは今のところ問題ないだろうが、将来どうなるかはわからない。


そこで、緩速ろ過法ももつかいつつ、急速ろ過法も導入することにした。

薬品を使ってゴミや細菌を沈殿させる方法だ。小型で浄水能力大、なのだがいかんせん薬品が必要なのと、薬品が必要なため運転コストが高いのが難点だ。

薬品の供給目途はついているため大丈夫だが・・・。


はてさてこの二つの方法の浄水場をどういう割合で設置するか。それが問題だ。



さらに、下水処理場も問題だ。

実は下水処理場は大半を微生物の力に頼っているため、薬品などのコストはかからない。微生物はそう言う面では非常に偉大な存在なのだ。

だが、問題は設置場所だ。どうしても“下水処理場の横”は住みたくないだろう。

さらにいえばできるだけ海に近いところに設置したい。理由は簡単で、水は高いところから低いところへ流れる。これは下水も変わらないからだ。


ちなみにダムの建設費用だけはすんなり通って、すでに建設を始めている。あのおっさん首相、“発電用”といったらすんなり通しやがった。まぁ、多目的ダムにして水道も利用させてもらうがな。


意外と水道の重要性を一般人は理解していない!水道が流行病を防いでいるのだ!



「わかってんのかくそ首相―!」

ドカァァン!

佐藤が耳当てをしたままやってきた。

「どうだった?対戦車墳進弾の威力は?」

「すっきりした!」

「俺はストレス発散のために作ったんじゃないんだけどな・・・」


俺は兵器廠に来ていた。

「んで?ついでに撃たせてもらったが、本題のブツはどうなってる?」

「うん。我ながらいい出来だよ。」

佐藤は射撃場から兵器廠第2工場へ移動しながら言った。

「Ⅳ号戦車の車体から砲塔と装甲外して乗っけてみただけだから、使い勝手まではどうとも言えないけどね。ブルドーザーはⅠ号戦車をもとに新規作成したよ。」

「こりゃどうも。さすがは佐藤だ。」

「だから海軍都市建設のメンバーから外してくれない?」

「これからもがんばれよー!」

「えっ?ちょっ?」

「あ、佐藤。あとで書類回すけど、大量生産してもらう予定だからよろしく!」

「げっ!?まじ!?」

俺は佐藤がその次の言葉を言う前に新型ブルドーザーに乗って逃走した。



佐藤が泣き泣き重機を制作している頃、都市計画はほぼ固まり、俺は比較的仕事が少なくなってきた。あとは現場監督となっているダドリーさんと財務管理をしている美佐さんたちに任せ、俺は時折技術指導へ行くだけとなる。


だが一難去ってまた一難。


運命は俺に休息を与えようとはしなかった。




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