海軍都市編-2
最近ブックマークしてくれる人がすこ~しずつ増えています。
こんな駄作をありがとうございます。
めっさうれしいです。
それは、俺がいつものように斎間大将に呼び出されたことから始まった。
呼び出されるのもいつものこと。だが暇だったのは過去のこと。最近は実働的な海軍を育てるべく、あちらこちらを奔走している。
例えば海軍陸戦隊の設立。
水際で防衛する側と、水際に上陸作戦を仕掛ける側に分かれて行う。
それに伴って佐藤に水陸両用戦車の開発を依頼する。
佐藤はすぐに希望に答えた。
いつぞやエヴェリーナ中佐、いや、今はエヴェリーナ少将が言っていた“四号”だの“サントツ”だの言う戦車はやはりドイツの戦車だった。
“四号”はⅣ号戦車。第二次世界大戦期にドイツ軍で使われた中戦車で、ドイツ戦車の中で最も生産数が多く、改良が限界に達した大戦中期以降も主力として敗戦時まで使用され続け、ドイツ戦車部隊のワークホース(使役馬)と呼ばれた戦車である。整備や製造も容易で、技術力の低い工場でも生産できたという。
技術力がいまいちなこの国では、もってこいな戦車だ。まぁ、ただ単に佐藤の趣味が・・・という可能性もあるが。
“サントツ”はⅢ号突撃砲のことであった。Ⅳ号戦車と同じく第二次世界大戦期にドイツ軍で使われた。ただ、注意すべき点は“突撃砲”ということである。
これを日本軍風に言い換えるとおそらく“砲戦車”が正しい。とにかく簡単に言ってしまえば“砲塔なし戦車”だ。
車体の上に砲をそのまま置いたため、射角が狭い。その分車体ごと旋回する必要がある。利点としては、製造の難しい砲塔を製造せずに済むこと。よって製造が早い。さらに第二次世界大戦期で言えば50mm砲装備のⅢ号戦車の車体を使用して75mmを積める、という利点もあったが・・・。
「そもそもⅢ号戦車、いるの?作ったの?」
と、佐藤に質問したところ、
「ドイツの戦車をⅠ号戦車から作ってみているのでいるにはいる。」
とのこと。
簡単に言ってしまえばドイツの歴代戦車を作って少しずつ技術力を上げようとする目的らしい。
とにかく話を戻す。
いつものように呼び出された俺は、“なんで中将なのに副官なしでこんなにパシらされているんだ?”という疑問をゴミ箱に捨てつつ斎間大将の部屋に向かった。
「谷岡中将、入ります!」
そう言って中に入ると、背広を着た見慣れない人物と斎間大将が居た。
「お、谷岡中将。とにかく座って。」
斎間大将が応接セットのソファーを叩く。
俺はそれに従いつつ、背広の人物を見た。
獣耳だ。
また獣耳だ。
気づいて以来、どうしても気になってしまう。
佐藤に“この世界では普通にいるのだ”とずいぶん教えられたのだが・・・
会話中でもピコピコ動く耳が面白くてかなわない。
「どうか、しましたか?」
獣耳の本体・・・じゃなくて背広を着た男性に言われてあわてて獣耳から目をそらした。
そういえば斎間大将は、気にならないのだろうか?いつか聞いてみよう。
「いえ、すいません。」
斎間大将が咳払いした後、話しはじめた。
「こちら、国土開発省のダドリー・マーウィンさんだ。」
「ダドリーです。よろしく。」
「海軍艦隊総司令の谷岡中将です。こちらこそよろしく。」
とにかく手を出されたので握手はしたが・・・。海軍に何の用だ?というか国土開発省ってどんな仕事をしているんだ?名前通りかな?
「それで・・・なぜ私は呼ばれたのでしょう?」
とにかく訊ねるべきはこれだ。
コホン。とダドリーさんが咳払いしてから話しはじめた。
咳払い好きだな~、この二人。
「あなたに、街を一つ作っていただきたいのです。」
・・・街。
「はぁ!?」
若干取り乱したものの詳しく話を聞く。
「というかなぜ海軍が!?」
それは斎間大将が答えた。
「谷岡君、君は今の基地が手狭だと思ったことは無いかね?」
「ええ、まぁ。普段からそう感じますが・・・」
もともとこの基地は陸軍の基地なのだ。岸壁も申し訳程度にしかついていないし、これから艦艇が増えれば手狭になるのは目に見えている。そのために沖合停泊の準備も進めてきた。
「それで、だ。新しく海軍都市を作ろうと思ってね。」
「はぁ・・・」
いまいち“海軍都市”という言葉にピンと来ない。
「簡単に言ってしまえば、佐世保や横須賀、呉や舞鶴みたいな海軍主体の都市を作りたいんだよ。」
なるほど。納得。
「さらに言ってしまえば、ドックを増設しようにも手狭なんだよ。海軍用ドックを作りたくてももう土地が無い。
さらに言ってしまえばドックがないから艦艇建造用の予算もドックの順番待ちになっている。」
予算だけ計上されたものの、使われないままになっているらしい。
「そこでだ。国土開発省と相談したところ、我々と国土開発省で折半することで海軍都市を作ることになったんだ。」
「とりあえず納得は行きましたが・・・。そこでなぜ僕が呼ばれたのか・・・」
一瞬斎間大将が“よくぞ聞いてくれました!”みたいな顔をしたような気がするが、木のせいであろう。
「君、この世界に来る前は土木工学科の大学生だったそうじゃないか。」
「ええ、まぁ・・・」
嫌な予感。
「陸軍の佐藤大佐に聞いたんだが、成績は良かったそうだな。」
「わ、悪くはなかったです・・・」
佐藤ぉ!
「土木工学、というのは“都市計画”も含まれるんだよな?」
「た、確かに・・・」
あまりやったことは無いよ!
「わかったかい?」
斎間大将がこれまでに見たことの無いような笑顔を作った。
この人、こんな人だったのか。トップに据えるんじゃなかった。
ダドリーさんを見ると、こちらもにこやかだ。
四面楚歌。
俺の援軍はいないらしい。
「はぁ~」
俺はため息で返事をするしかなかった。