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君と僕の壊れかけの世界  作者: 蒼井青
第1話 記憶喪失の語り部と祓い手
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4章(1) 作戦会議

第四章―Ⅰ

「…んで、やるとは言ったけど、流石にこれは酷くないか」

「くくく。餌は黙って、大人しくしてろ」

 都心という訳ではないので、僕の住む町から徒歩圏内で人の気配の無い森なんかはざらにある。今もその森の一角で胡座をかいている状況だ。

 周りには人の気配はない。

 いや、実際は少し離れた林の中に浩市が、そしてかなり離れた丘の上には久世さんと黒猫さんがスタンバイしているのだが。

「まったく、これで上手くいかなかったら恨むぞ」

「大丈夫さ。お前には何もさせないよ。その為に私がいるんだ」

「はぁー。頼りにしてますよ」

 どこまでも楽しそうな雪燈の反応に、御座なりに手を振る。

 さて、何故に現在この状況にいるのかと言うと、まだ事務所にいた三時間前にまで話は遡る。


「よし。じゃあ、そうと決まったら悪霊退治なんだけど…、君たちは何か良いプランはあるかい?」

 三人が三人とも珍しく息の合った所で、一度ソファーに腰かけ、落ち着いた所で久世さんは僕等に話を振る。

「手当たり次第に探していくのは駄目なんすかね?」

 これは浩市の意見。

「不本意だがそこの糞猫と私で範囲を潰していくのはどうだ?」

 こちらは雪燈だ。

「貴様!」

 全身の毛を逆立て、飛びかかろうとした黒猫さんを寸での所で久世さんが止める。

―――おいおい、誰彼かまわずに喧嘩を売るなよ…。

「どうどう、黒猫ちゃん。うーん。どちらも手間と時間が掛かるし、少女を救う確率を少しでも上げる為には時間は掛けられない。それに確実性がないなぁ―――椎名君と黒猫ちゃんはどうだい?」

 乱暴な作戦だしね。と困ったように苦笑するとこちらにも話を振ってくる。

「あれ?ピンポイントで見つけることってできないんですか?」

 その為に事務所に来たのに。

「それなんだけどね。まぁ、僕等も残り一体となって遊んでたわけじゃないんだ。」

 あはは。と頭を掻きながらポケットからタバコを取り出す。

「んで、黒猫ちゃんに網を張っていてもらってたんだけど、他のやつらと違って今回の場合は引っ掛からなかったんだよ」

「な、何でですか?」

 黒猫さんがそんなのも解らないのかと言いたそうに溜め息を吐く。

 うるせー。此方は素人なんだよ。

「先程、主が言っておったろ。今回の奴は言わば親玉。霊としての格がそれなりに高いのだよ。それに魂レベルで定着していると。つまり、そうゆうことだ」

 やれやれと頭を振る。

 サッパリわかんねーよ!

 ポカーンとアホ面をぶら下げていると久世さんが笑いながら捕捉する。

「つまりね。さっき黒猫ちゃんが言ってたように唯の霊であれば探すのは難しい。ただ霊と人が定着する際に世界に対して歪みが生じることはわかるね?」

「はい。その歪みをお互いの性質と繋がりの強さで最小限に押さえているのが僕と雪燈みたいな奴ですよね」

「その通り。まぁ、でも普通に定着したら歪みは絶対に生じる。君達は特例だよ。だから今回その歪みを捉えることができる網を張っていたんだけど―――」

「捉えられなかった」

 うんうん。と頷く。

「つまり…、僕等と一緒ってことですか!?」

「その通り!」

 ビシッと人差し指を僕に向ける。

「だけどちょっと違うんだな。結果は同じだけど、過程が君達とは全く違う。一方的なもの―――だからさっき癒着って表現したんだよ。君等の場合はお互いの性質によって、天秤の上の危ういバランスをうまく保っている。それに比べ、悪霊と少女は浸食され、少女自身の存在が悪霊自身に上書きされかけているんだ」

 成る程。今回の依頼の困難度と少女の危険度がヤバいってことだけは良くわかった。

 だけど、どうする?

 見つけるのが困難だからって、此所で指をくわえてるだけなんて論外だ。

 どうする?どうする?

「―――どうすれば。」

 ふと俯いていた顔を上げると久世さんと黒猫さんがニヤニヤ此方を見ていた。

「だから私は最初から提案していたろ。確実でかつ手間もかからん作戦を」

「まぁー、こうなっちゃったら仕様がないかな。一度やってることだし…。それに何より、今回は椎名君も珍しくやる気だし」

「え?まさか…」

 二人のその反応に嫌な予感が襲ってくる。

 隣で「つまり、どうゆうこと?」と頭を抱えてる浩市の言葉が酷く耳に残った。

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