第10話 主人公じゃない。
「……この話を他の誰かに?」
「いえ、今初めて話しました。 あっ、先に一つだけ言っておきたいことが……」
「なんだろう?」
「俺、今までの転生者やフィンみたいに、何かに長けてるようなところがありません!」
「……そうか」
「はい。そういうこともあり、少し言い出しづらかったと言いますか……」
「このことは父――陛下に伝えることになるが……」
「はい。なんの能力もなく、申し訳ないくらいです……。どうせなら役に立つようなチートが欲しかった……」
「チート?」
「あっ、えーっと……前世の世界で使われていた言葉で……特別な能力とか、普通ではありえないような力のことです」
「なるほど。では、君はそういう力を期待していたのかい?」
「……まぁ、そうですね。……ちょっとだけ」
「それにしても、同じ時代に転生者が二人とは……初めてのことだよ」
「ちなみに俺がいた世界も日本という国で、フィンの前世の世界と同じです」
「そんなことまで書かれているのか……」
「そうですね。フィンが主人公の話でしたので」
「……フィンが主人公か。それは……物語として成立しているのかい?」
「もちろんです!異世界スローライフ系は人気のジャンルでしたし、社会人の読者も多かったと思います。俺自身、仕事帰りによく読んでましたし。起伏のある物語ではありませんでしたが、息抜きに読むのにちょうどいい小説でした!」
「その話をフィンが聞けば……嫌な顔をしそうだな」
ウィルがふっと笑った。
「分かります!すっごく想像がつきます!!」
笑い方も上品だな!!
「先日記憶を思い出したと言っていたが、何かきっかけのようなものがあったのかい?」
「魔導具研究会に荷物を運ぶよう頼まれまして、その時ここでフィンを見て、前世の記憶を思い出した感じですね」
あの時の衝撃は凄まじかったなぁ。
「それまでフィンと顔を合わせたことは?」
「なかったと思います」
……多分。
前世の記憶が戻る前は意識してなかったというか、俺自身が貴族同士の付き合いをあまりしていなかったし。
あっ、でも記憶が戻った時、フィンが魔導回路を描いてる時だったんだよなぁ。そういうのは関係ないんだろうか?
「フィンが魔導回路を描いているところを見て、綺麗だなぁって思ってたら、前世の記憶を思い出したので。魔導回路にそういった効果はないですよね?」
「聞いたことはないが、きっかけになった可能性もあるね」
「そうですね。小説で読んでて気になってはいました。魔導回路って実際はどんな感じに光っているのか、どれほどの集中力がいるのか、フィンが魔導具作りに関して飛び抜けているのか……そんなことを」
「そうか」
「あの、今後、俺ってどうなりますか?」
「そうだね……国にとって危険でないのなら、今までのように過ごせるはずだよ」
「俺、魔力量が人より多いみたいで、将来は魔導師団にって思ってたんですけど……」
「それなら大丈夫じゃないかな。魔導師団に入るなら、国としても君のことを把握しやすいからね」
「……ということは、魔導師団に入ってもいいんですか?」
「問題ないと思うよ。もちろん、試験に受からないと入れないけどね」
「はい!」
……良かったぁ!
もし、これで魔導師団はダメだって言われたら、将来ニートになるところだった!
試験に受かるように、もう少し勉強をしておくべきだな!
「あっ、このとこって両親に話すべきですか?」
「ん?ルカは話したくないのかい?」
「うちはローゼン家のように、そんなにお互いのことを話さないと言いますか……。別に不仲というわけでもないですけど、なんて言うか……。多分まだ、前世の記憶が戻ったばかりで、家族との距離の取り方がいまいち掴めていないと言ったほうが近いかもしれません」
「そうか……。無理に話す必要はないが、いずれ伝えることになるかもしれないね」
「そうですよね」
まぁ、国に報告する以上、家族にも知られる可能性はあるよな。
「ただ、今すぐに決めなくてもいい。まずは君自身が落ち着いてから考えるといいよ」
「ありがとうございます」
……ウィルって、本当に王子様なんだなぁ。話しやすいし、こっちの事情も考えてくれるし……。いや、そもそも見た目からして王子様なんだけどな!それにしても、こんなに普通に話せるとは思わなかった。
小説で読んでいた時は、もっと遠い存在というか……。
……まあ実際、王子だから遠い存在なんだけど。
第10話を読んでいただき、ありがとうございます!
ルカは主人公ではなく、読者です。
また書けたら更新します!




