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推しは異世界で今日も『快適』に暮らしている。  作者: 西 悠希


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第1話 推しがいた。

挿絵(By みてみん)




今日もつかれたぁ。


今の仕事、向いてない気がするんだよなぁ。

もう辞めちゃおうかなぁ……。


……もう仕事辞めたいなぁ。


……。


よし。


転職しよう!


そうなるとやる事がいっぱいだな。

……何からはじめるべきか。


……。


……でも今日のお客さん優しかったから、それが救いだったな。



鞄をソファに放り投げ、俺もそのままソファに倒れ込む。


「……腹減った」


もうこんな時間か。


適当に何か食べて、風呂入って……その前に。


スマホを取り出して、いつものサイトを開く。


……今日も更新されてるかな。



俺には、毎日楽しみにしている小説がある。


『侯爵家三男は快適に暮らしたい。』

魔導具を作るのが好きな侯爵家の三男、フィン・ローゼン。

前世の知識をもとに、今日も自分が快適に暮らすための魔導具を作っている。


「……よし。更新来てる」


疲れていたはずなのに、少しだけ気分が軽くなる。


俺はいつものように、フィンの物語を読み始めた。




……あぁ。それを作るのか。

まぁ確かに、それがあれば便利だな。


……。


えぇ……そこは……。まぁ、フィンだからな。

それにしてもマイペースなのが羨ましい。


フィンって、何か大きなことを成し遂げようとか、世界を変えようとか、そういうことを全然考えてないんだよな。


何か問題が起きても、だいたい「じゃあ作るか」で済ませるし。


しかも、それで周りまでいつの間にか巻き込まれてる。


本人はいたって普通の顔をしてるけど。


……まぁ、そういうところも好きなんだけど。


そのおかげで軽く読めてるし。






――



……はぁ。


今期のテスト、順位が下がったか……。もう少し行けると思ったんだけどなぁ。

絶対あの先生、テスト直前で範囲を広げただろ。 俺以外にも今回のテストで点数が大幅に落ちたやつもいたみたいだし。


「ルカ! ちょっとこれ、魔導具研究会に持って行ってくれないか? 俺、マティアスに呼ばれてるんだよ」


「……マティアス?」


「あぁ、生徒会長!」


「……分かった。魔導具研究会だな」


箱を受け取って、持ち上げる。


……ていうか、何が入ってるんだこれ。


結構重いぞ。


魔導具研究会に届けるってことは、魔導具関連か。


……。


……魔導具研究会ってどっちだっけ?



……はぁ。


ようやく着いた。


なんでこんな端っこの方に魔導具研究会の部屋を作ったんだ?

これじゃあ非効率だろ。



「失礼しまーす。お届けものでーす」


「はーい。 あ、これ、探してたんですよ! どこにありました?」


「友人から預かったので、どこにあったかまでは聞いていませんね」


「そうでしたか。 わざわざ届けていただいて、ありがとうございました」


「いえ。ではこれで、失礼します――」


部屋の奥の方から淡い青色が光っているのが見えた。


「ん?……あぁ。あれは魔導回路を描いているところですね」


「魔導回路……。あんなに綺麗なんですね」


「 興味がおありですか? 魔導具研究会に入ります? 大歓迎ですよ!」


……魔法は好きだけど、魔導具のことはあんまり知らないんだよなぁ。


「よかったら、近くで見てみます?」


「……じゃあ、少しだけ」


淡い青色の光の中で、誰かが魔導回路を描いていた。


描き終わったのか、光がゆっくりと消えた。


「……綺麗」


「……え?」


さっきまで魔導回路を書いていた生徒が、顔を上げた。


……。


……は?


……。


……え?


「……ええぇぇぇ!」


「うわっ!  なに急に?  ていうか、誰?」


……え。うそだろ?


いや、でも、国の名前も知ってる。


魔法も、魔導具も実在してる。


……夢じゃない。


俺は知っている。


いや。


知っているなんてもんじゃない。


俺は、この世界の物語を――。


「……フィン・ローゼン」


そうだ。


こいつが、俺の推しだ。


というわけで、IF作品を始めてみました。


本編とは別の世界線のお話です。


この世界では『侯爵家三男は快適に暮らしたい。』が小説として存在していて、その読者だったルカが転生してきます。


まずは学園時代のお話から始まります。


本編の更新を優先しつつ、こちらは不定期で更新していく予定です。


本編とは少し違った世界で、みんながどんな毎日を過ごすのか。

楽しんでもらえたら嬉しいです。

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