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属性は陰でした。  作者: はる


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第15話 蒼哭鳴轟


「おい!!まずいぞっ!!」


悠の死後。

A.B班と骸兵の戦闘はより熾烈を極めた。


小春の煌矢が骸兵の頭部を粉砕する。

雅人は炎纏で焼き続ける。


だがその顔には、疲労と恐怖が入り交じる。

悠の死により、さらに感情が加速する。


「くそっ!!!物量がっ!!」


倒しても湧き上がる骸兵。

一方的に消耗していく魔力と体力。


結果は見え透いていた。


中には崩れ落ちる者も少なくない。

その隙を狙い、骸兵が追撃。


負傷者を増やし、

戦意喪失者が加速する。


完全なる悪循環が生まれていた。


悲鳴と金属音が止まない。

その音すら、雫の耳には届かない。


「……は……る……」


悠の亡骸を見つめる雫の目には、光すら宿っていない。


だが骸剣卿は止まらない。

負傷者が出ようと、死者が出ようと。


残酷なまでに無慈悲である。


悠の血を振り払い、床へ散布する。

それに呼応するように、骸兵も雫を取り囲む。


「……………。」


雫は動かない。

否、動けない。


ーーーーカラン。


乾いた音。

雫の手にしていた短剣が、零れ落ちた。


骸兵は一斉に、雫へ飛び掛る。

隙を無くすように、骸剣卿も錆びた剣を振り上げた。


逃げ道はない。

悠を助けるため無理に影を繋いだ代償で、能力が焼き切れている。


ーーーーーー終わる。


その時。




ーーーーーードグンッ!!!!



遺跡をほんの一瞬揺らした重低音。

誰もが一瞬困惑し、動きを止めるが骸剣卿だけは止まらない。


誰も見ていない。

だが悠は無意識的に、黒い雫を床へ垂らしていた。


その刹那ーーーー。


ガギィンッ!!!!


火花を散らし、

辺りに衝撃波が生まれる程の、金属音がその場へ鳴り響く。


「……………ぇ」


石床……否、いつの間にか黒い水溜まりになっていた床から、突き破るように巨大な黒剣が出現。


振り下ろされた骸剣卿の一撃を、完全に受け止めていた。


骸剣卿含め、全員の視線が雫と突き出した剣へ集中する。


「………ぉい。………おいおいおい……」


誰かが呟いた。

困惑と恐怖が入り混じっている。

返答を求めた言葉では無い。


ただ、眼前にある光景に理解が追いつかない言葉の景品だ。


ーーーーギッ


突き出た黒剣が一瞬動く。

そして。


骸剣卿諸共、赤子の手を捻るように吹き飛ばした。

視認すらできない、瞬き一瞬。

巨体が宙を舞い、そのまま壁へ激突。


壁をへこませ、黒い亀裂が入る。

遺跡を揺らし、パラパラと天井から塵を振らせた。


「……なに……が……」


理解は追いつかないまま。

雫は声を漏らす。


黒剣はゆっくりと水から姿を現す。


騎士だ。


だが。騎士と呼ぶにはあまりに異形。

漆黒の甲冑。その材質は鉄ではない。


巨大な龍骨を、そのまま削り出したような外殻。

全身の隙間から、青白い光が脈打っている。


生きている。

そう錯覚する程に。


背後で揺らめく、靄のような黒い外套。

煙か、将又液体か。

誰に判別はできない。


そして、兜の奥。

そこには顔など存在しない。

ただ奈落のような闇が広がっていた。


亡霊。

誰もが理解し、恐怖する。

だが雫だけは違う感情に溢れていた。


「………あの時の……」


その言葉がどの時を指すかは、雫しか知らない。

ゆっくりと、亡霊騎士は雫へ手を差し出す。


「………え」


小春の声が聞こえた。

その光景がありえないからだった。


雫は何も言わない。

差し出された手を取り、再び立ち上がる。


「………悠は」


亡霊騎士は何も話さない。

だが、ゆっくりと兜を下ろす。


「………わかった」


亡霊騎士と雫。

共通点などまるでない。死者を操る能力も、死者と心を通わせる能力もない。


ただあるとすれば、影という雫の属性。

その属性が、雫と亡霊騎士を繋いでいる。



亡霊騎士は骸剣卿へ向き直る。

構えなどない。だらんと垂らした腕と黒剣。


だがその姿が消えた。



次の瞬間には、再び金属音が鳴り響いていた。


「………なんだ……あれ」


雅人の声が掠れる。


速すぎる。

見えない。

戦っている。


音がした方を向くと、既に違う場所で2回の音。

剣圧だけで床は砕け、黒い残滓が空間を裂く。

ただその中でも、亡霊騎士が圧倒している事だけはわかった。



その中。


悠の体を中心に、この黒い水が広がっていることを雫は理解する。


ーーーードグンッ!!


心臓の脈動が開始する。

音と共に、黒い水は悠の胸部へと集まり、

砕けた肉体を修復していく。


まるで、


''死''を拒絶するように


「ーーーーッ!!」


悠の身体が跳ねた。

そしてーー。


ゆっくりと悠の目が開かれる。


「………ぁ」


意識が戻った。

その瞬間。


ーーーーズシャッ


何かが床を滑る音。

全員の視線はその先に集中する。


転がっていたのは、骸剣卿の首だった。


その前で、巨大な亡霊騎士は、悠の前で片膝を付いた。


エルグレイヴは話さない。

黒剣に付いた血すら、払わない。


ただ静かに。


主の目覚めを待っていた。















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