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属性は陰でした。  作者: はる


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第1話 異世界転移


この世界において、主人公というのはああいった「明るくて」「誰にでも優しくて」「顔面偏差値がすごい高い」人の事を言うのだろう。

雨宮悠(あまみや はる)は心の中で1人、呟いていた。


少し長めの髪に柔らかい目つき。身長は普通。

頭脳も普通。定期試験では250人中120~125位を行き来しているという、特別頭がいい訳でもなく、悪い訳でもないといったもの。


「はぁ……」


思わずため息を出す黎。

そんな様子を見て、隣の席の猫宮 小春(猫宮 こはる)が声をかけた。


「何ため息ついてんのよ……」


「別に……」


なんなのだと。声を上げたくなる。

小春は成績優秀、スポーツ万能、オマケに美人ときた。悠の方へ顔を向けた時には、艶やかな黒髪が動く。ふわっと立ち上る向日葵のような暖かい匂いに、思わず気を取られてしまう。


(僕とは違う世界だ……)


イケメンに美人。天は二物を与えずとか言ってるけど、めちゃくちゃ与えてんじゃねぇか。

そう思う程には、悠は考えていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


授業を受け、昼休憩。そしてまた授業。そして帰宅。

悠の高校生活は同じ行動の繰り返しだった。

授業終了のチャイムが鳴り、昼休憩が始まった。


先程まで静かだった教室が、段々と活気を取り戻していく。


雅人(まさと)、学食行こうぜ〜」


「ちょっと待て」


「ねえねえ小春、一緒にご飯食べようよ」


「いいわよ。」


そんな声が段々と増えていく。僕にはそんな友人いないのに!!

惨めだ。……正直羨ましい。悠は頬杖を着きながらその光景を眺める。


「はぁ……」


本日2度目のため息。

深みがより増加したものであった。

だがその時だった。


バチッ


ふとどこかで、音が聞こえた。

クラスの喧騒程には届かない、小さな音。

悠以外に気づいている様子はなかった。


「ん……?」


眠そうにしていた目を擦り、再び目を開ける。



ーーー目の前は真っ暗になっていた。


「え?……え?」


目はしっかりと開いている。

確認するように目を擦るが、光景は変わらない。

上下左右すら無いほどの闇。

どこまでも続く闇が悠の感覚を支配する。


何もない……ただの闇に見える。

だがその奥に、こちらを覗く目が合った。

どす黒い緋色の瞳。明確な殺意を持った瞳孔がこちらを見据える。


「……ひッ!!」


情けない声を上げながら、悠はその場に転げる。

そんな悠の事を、無視するように目が近づいてくる。


「……来るなっ!!」






「悠くん…大丈夫?」


「…………ッ!!!!」


気がつくと暗闇は晴れ、代わりにクラスメイトの

影山拓也(かげやまたくや)がこちらを覗き込んでいた。


「……大丈夫。ごめん。」


その辺から笑い声が聞こえる。多分他のクラスメイトだろう。

それもそのはず。悠は一人でその場に転げ、叫んでいたのだ。


「なんなんだよ……さっきの………は……?」


開いた口が塞がらないとは、まさにこの事だろう。

悠は目の前の光景に、理解が追いついていなかった。


一面に広がるのは当然教室である。

はずだった。


眼前に広がるのは、白すぎる大広間。この言葉が一番似合うだろう。


だが、白いだけじゃない。

一般的に想像できる怪しい研究所が、真っ白い壁だけで構成されている物と似ている。


床も、壁も、天井も。

光そのものを削り、作り出されたような異様な白。


見上げるほど高い天井からは淡い陽光が降り注ぎ、規則的に並んだ巨大な柱には、見た事もない文字や文様が彫り込まれていた。


鼻を掠めるのは、甘い匂い。

教会にも似ている。

けれど、どこか息苦しい。


足元へ視線を落とす。


床にはクラス全員を覆う程に巨大な魔法陣。

幾重にも重なった紋様が、脈打つように淡い光を発している。


「ーーー皆々様、お待ちしておりました。」


困惑を加速させるように、クラスメイトの誰でもない。少し高い声が聞こえてくる。


神官……みたいな人。

白い布時に金色の刺繍を施した、一目で高貴な者とわかる服装を着た人物が、悠達へ頭を下げていた。


クラス全員が神官を見る。


「立ったままはお疲れになります。ですので……」


パチン、と神官が指を鳴らすと悠達の目の前に大きな机と人数分の白い机と椅子が出現する。


ざわめきが再開する。


「は?何したの?」


「てかここどこなんだよ!!」


「テーブルと椅子が……」


声は様々出会った。

横にいた拓也は、その光景を見て悠へ少しワクワクした声色で話しかける。


「ねぇ悠君。……これってさ、よくある異世界転移ってやつ?」


「ぽいよね……。」


なんかこう、異世界転移ってもっと明るい感じじゃないの?……いや明るいけど……。白すぎて目が痛いけど!!そうじゃなくて!


クラス全員が用意された椅子へ座り、机の中央に先程の神官がゆっくりと腰を下ろす。


神官の動きはゆっくりなはずだが、どこか違和感を感じる動き方。

歩幅と進んだ距離が一致しない……ような気がする。


「その……ここはどこなんでしょうか?」


静まった空気を切り裂いたのは、我がクラスの委員長、坂本(さかもと) (あや)だった。

容姿端麗で皆に平等に接する、クラス委員長として最適な性格。

靡く長い黒髪が、この空間でははっきりと写っている。


神官はゆっくりと話し始める。


「……ここはあなた達がいた世界とは、別の世界です。ノクストラ大陸の中央に位置する、イルゼリア王国の聖教会。」


「ノクストラ大陸……。」


拓也は、腕を組みながら視線を落とす。

何かを考えているようだが、悠は気にせず神官の話を聞き続ける。


「私達がここに呼び出した目的は、魔王を討伐していただく事です。」


「魔王討伐……」


なんともまぁ……。在り来りな話だ。

異世界ものの定石「魔王討伐」。

どうせこの後、「皆様には特別な力があるのです」

とか言い出すんだろう………


「皆様には特別な力がある為、ここへ呼び出されたのです。」


ほらきた。もう少し設定練れないのか。


「魔王討伐って……。その魔王っていうのは?」


「この世界に存在する魔物、魔族。その中でも頂点に立つ力を持つ存在。」


「そんなのを俺たちにやれって?……人の事情も知らずに良くもまぁ、そんなこと言えたな」


最初に声を荒らげたのは、クラスの中の問題児。

木山翔太(きまやしょうた)だった。

素行が悪く、暴力はよく振るう人。というのがこのクラス全員での印象だ。


「落ち着け翔太……「落ち着きなさい」」


「あがッ!!」


神官の言葉と共に、翔太は机へ衝突する。

ガンッと、想像するだけで痛い音が空間に響く。

当然、皆は驚き声をあげる人も少なくなかった。


「すみません!やめてください!!」


声を荒らげながら綾は神官を、静止しようとする。


「………わかりました。話を続けます」


「おい大丈夫か翔太……」


「くそッ!……なんなんだよ…。」


「皆様にはこれからこの世界で生活して頂き、魔王を討伐してもらいます。それが叶いましたら、元の世界へ帰る手段をお教えします。」


何事も無かったかのように話を続ける神官。

まさに異質だ。

逆らったら何をされるか分からない、という感情をこの場全員へ植え込み話を続ける。

これは取引……それほど優しいものではない。


ほぼ軟禁に近い状態だ。


「あの……質問。」


そう言って、佳村(かむら) 芽依(めい)は恐る恐る手を挙げる。


「魔王討伐はわかったんですけど、この先どうすれば?ゲームみたいに敵を倒してレベル上げをするとか?」


「げーむ……とは何か存じませんが、概ね正解です。皆様、声に出しても出さなくてもいいです。「我が能力を可視化せよ」と唱えてみてください。」


神官の指示に従い、各々が行動する。

悠も心の中で、唱えた。

すると、目の前に「ステータス」と表示されたウィンドが現れた。


「なんだこれ!すげぇ!!」


「どうなってんのこれ!触れねぇ!」


「俺、火使えるってよ!!」


各々がはしゃぎ出す中、隣の拓也が悠へと声をかけた。


「悠君…どうだった?僕は「鑑定眼」だったよ…。」


「僕は……。」


拓也に言われ、自身の能力も確認した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ステータス


名前:雨宮 悠

種族:人間種

属性:陰


能力値


筋力:10

耐久:10

敏捷:10

魔力:10

感覚:10


技能:該当なし

固有能力:詳細不明

契約存在:該当なし

深淵侵食:3%


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ちょっと待て。

なんだ陰って。

暗いですけど。確かに学校でもそんなに目立つタイプじゃないさ。けどこの仕打ちはないだろ!


「は、悠君?」


「…あ、ああごめん。僕の能力は……?」


なんだ詳細不明って。なんも出来んじゃないか。


「え…えと……詳細不明…?」


「え?…どういうこと?」


「僕にも…分からなくて……。」


「だ、大丈夫だよ!…何とかなるよ!」


全力の励ましだった。

そっと涙を拭った。


「確認できましたか?…それでは。」


またもやパチンと指を鳴らす。

その音と同時に2人の神官が音もなく現れた。


「……こわ」


「もう何が起きても驚かない。」


クラスの適応率がかなり高かった。

ここは異世界。そう理解したらある程度のことは納得できるのだろう。


「私たちが確認して回ります。ステータス画面はそのままにしておいて下さい。」


「……。」


(まずいまずいまずいまずい、ここ最近で一番まずい。なんだ属性陰って?なんだよ能力詳細不明って!これ……まさか見捨てられる?)


ふと、目を下へ移す。

深淵侵食?契約存在?


「ねぇ拓也君、この深淵侵食とかってなんなの?」


悠の発言に、拓也は少し止まった。

そしてもう一度、自分のステータス画面を確認する。


「そんな欄ないよ……?」


「え?」


「見せてみて」


そういい拓也は悠のステータス画面を確認する。

上から下まで食い入るように見て、再度確認するように上から目を流す。


「ほんとだ…見間違いじゃない!…悠君これって、すごいやつなんじゃ……!」


「そ、そうかな?」


「僕なんてほら!鑑定眼しかないよ!…相手の情報を可視化する事ができるみたい。」


「それ凄い使えるんじゃ「よろしいですか?」…ッ!!」


(来た…僕の番だ………。)


「ど、どうぞ……。」


悠はステータス画面を神官へ見せた。

心臓が耳にあるみたいに、鼓動がはっきり聞こえる。

神官の一挙手一投足に対して、鼓動の速さが変化する…。


「………。」


神官は何も喋らない。

だが、何か不穏な空気を悠は確かに感じ取っていた。


(目付きが……変わった…。)


先程までの目付きとは明らかにちがう。

目を細め、じっくりと下部分を見ている。


…10秒……20秒………


ただ確認するだけの時間ではない。

明らかに、何かを考えている…。


「………陰属性ですね。珍しい部類です。」


「………そう……ですか…。」


時間にしておよそ1分。画面を見つめた後に神官は少しだけトーンが下がった声で言う。


「……………影属性とよく似た部類です。あちらの彼女がその影属性をお持ちですよ。」


神官の視線の先は、クラスではあまり喋らない天音(あまね (しずくへと向いている。

「では」と軽くお辞儀をしながら、神官は次の生徒の所へ歩いていった。


「何とか…耐えた……。」








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