チャコ
深夜・・・。
眠らない街と言われているこの地区は、光と闇が支配する。
いや、闇の中に妖しい光が輝くと言ったらいいだろうか。
どこからか聞こえてくるパトカーのサイレン。
ホテル街では若い男女の声・・・。
古びた雑居ビルが並び、薄明りがビルを照らしていた。
そこに一風変わった細長い狭小の雑居ビルがある。
その雑居ビルの一角に、一人の女性がいた。
年齢は10代後半から20代前半だろうか・・・・。
ミディアムボブに切り揃えられた艶やかな黒髪。
切れ長の瞳は好奇心と茶目っ気に輝き、口元にはかすかに嘲笑にも似た笑みが浮かんでいる。
どこか自信に満ちた生意気な雰囲気が見られる。
彼女は内に秘めた強い意志と、遊び心を持っているだろうと思われる点が魅力的に見える。
両方の耳には複数のピアスが星座のように光っていた。
左耳に三つ、右耳に二つ。
ピアスは彼女自身の生き方を物語っているかのように感じられる。
ドン!ドン!という大きな音がする。ドアの外でノックしているのが分かる。
黒い古びたイージーチェアに座っていた彼女は、けだるそうに立ち上がり、玄関近くにあるモニターを見る。
体格のいい柄が悪そうな男性と、細身の若い女性がいるのがモニター越しで確認できた。
彼女は無造作に鍵を開けた。
ガチャっという音とともに、男と女が入ってきた。
「チャコさんお疲れ様です!」
体格のいい男は彼女に頭を下げた。
彼女の名前はチャコという。
チャコは何も言わず、先ほど座っていた黒いイージーチェアに戻る。
目の前にある小さなテーブルに置いてある、チャコお気に入りのジョンプレイヤースペシャルの煙草を箱から1本取り出し、100円ライターで火をつける。
深々とそれを吸う。
ニコチンが体内に入り心地良くなる。
「リク!」
「その女、誰?」
チャコは体格のいい男に、ぶっきらぼうに言った。
視線は前を向いたままだ。
「ヤリ逃げされたらしいです。」
「・・・ヤリ逃げだけでなく、財布のお金も抜き取られたそうです。」
リクは煙草を美味しそうに吸っているチャコに向かって伝えた。
チャコは初めて、リクが連れてきた女性を見た。
セミロングで茶色の髪型がよく似合っていた。
身長は推定160センチ未満。スレンダー体系でスタイルも良い。
色白で結構、美人だとチャコは思った。
「客からは前金でもらった方がいいぜ!!」
チャコはその女性に言った。
「ホテルに入って、すぐにお金をもらったんです。」
「お風呂も一緒に入ったのですが・・・・。」
「・・・行為が終わった後は、別々にお風呂に入ったんです。」
「感じもよく、いい人だと思って油断しました・・・。」
「私がお風呂から出てきたら、いなくなってたんです。」
「もしやと思って財布の中を見たら、お金だけ抜き取られていました。」
女性は両手で顔を覆って、崩れ落ちた。
「どこの誰かも分からない、セックスだけの関係だぜ!」
「そんなの信用しちゃだめだよ!!」
チャコは2本目の煙草に火をつけながら言った。
「・・・・・で、あたしの所へ来た理由は・・・?」




