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02. ダイアナとカミラ 


※ ※ ※ ※



 巫女となったダイアナとカミラは、王宮内の大神殿に隣接する聖女殿で暮らすようになった。

 

 そこは数十名の聖女と巫女が一緒に棲んでいた。聖職者以外は男子禁制である。

 

 二人は聖女になるための訓練に励んだ。

 

 ヒール(魔法)の訓練は主に白魔法と水魔法と風魔法である。


 

 聖女の業務は王都の聖教会の他、地方の聖教会へ派遣に行く。

 人間や家畜の怪我や軽度の病気を治す白魔法を使う。

 

 時には他国との戦争で聖女も救護支援者として戦場へ赴く事もある。


 聖女が敵から攻撃を受けた際、防御とするヒールは風魔法であり、飲料水の為に川や泉を味方にする水魔法も使用した。

 

 その他、読み書きなどの一般教養や貴族へのマナー習得もあり、聖女の訓練は多岐に渡った。

 

 依って聖女の能力に満たないものは容赦なく切り捨てた。


 だがひとたび聖女になれば一人前とみなされ、衣食住は国から無償で保障される。その他に毎月、高額な給与も与えられた。

 

 もう一つ、平民の少女たちが聖女に夢と憧れを持つ理由があった。

 

 それは身分に限らず魔力があれば、誰もが平等に聖女になれる事だった。

 

 

 ジェダイト王国の封建社会で、聖女は貴族ですら尊敬される職業となる。体を治癒するヒールを聖女が行えば、王族や貴族たちですら感謝の念を表してくれた。


 また聖女の規律とは矛盾しているが、聖女の中には打算的で(よこしま)な聖女もいた。


 特に容姿が美しい聖女は二、三年で引退して金持ちと結婚する者も多かった。

 彼女たちの伴侶となる殿方で人気が高いのは、貴族令息や上級平民の御曹司(おんぞうし)だ。 

 

  もちろん一生涯に渡り翡翠(ジェダイ)の女神に身を捧げる聖女も大勢いた。

 

 ダイアナは後者の考えだった。対して妹のカミラは常に貴族令息にヒールをかける時は、にこにこと愛想よくして、じろじろと相手の顔を舐めまわすように吟味(ぎんみ)していた。



※ ※

 

 

 ダイアナは他の巫女より魔力は強かったが、それ以上に人一倍勉強熱心であった。

 

 逆にカミラは勉強嫌いだが、ダイアナが数回練習して習得するヒール(魔法)を一度で習得した。




「あらお姉さま、まだ練習してるの? 一緒にご飯を食べにいきましょうよ!食堂が閉まってしまうわ」


「先に行っててカミラ、もう少し早く治す回復魔法のヒールを練習したいの!」


「まあ偉いわね~お姉さま、そんなのどうでもいいのに」

 

 と──常に対照的な姉妹だった。


 こうしてダイアナとカミラは厳しい聖女訓練を終えて、晴れて一人前の聖女となった。

 

 ダイアナは十四歳、カミラは十三歳。


 


 更に、二人が聖女になって二年の月日が経過した──。

 

 ダイアナたち含めた聖女の師匠である大聖女が来季に引退が決まった。

 次の後継者にダイアナとカミラの名前が上がった。

 

 大聖女を選ぶのは神官長と国王と大聖女だが、今回は大聖女に一任された。

 大聖女が若い二人を大抜擢した理由は、どのベテラン聖女よりも二人の魔力が突出していたからだ。



「ふう、困ったわね。ダイアナとカミラ、どちらも甲乙つけがたいわ」

 

 大聖女は悩みに悩んだ末、最終的にダイアナを選んだ。


 魔力だけならカミラが数段上だが、大聖女はカミラは『素行に難点あり!』と(よこしま)な本性を見抜いていたのだ。




「ダイアナ、あなたの魔力はカミラほどではない。でもそれ以上に翡翠の女神様を敬愛する心。崇高なる使命と民への奉仕精神がある。残念ながら今のカミラには殆どないものです。──ダイアナ、私はあなたを大聖女に決めました。どうかジェダイト王国民の為に、この神殿を守ってください!」



「はい、ありがとうございます大聖女様。肝に銘じます!」


 こうしてダイアナは十六歳の若さで大聖女となった。


 

 

 これに面白くないのが妹カミラである。


「許せないわ──何故、私でなくてお姉さまなの?」

 

 カミラはこの時、ダイアナに嫉妬以外の憎悪を初めて感じた。





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