21. エピローグ ダイアナとエドワルド
※ 最終話です。
※ 2025/6/2 後書き追加済み
◇ ◇ ◇ ◇
「エド、また話を遮って悪いけど、貴方が強いのは十二分わかったわ。でもこれからどうするの? 王太子になった以上、今まで通りには行かないわよ──それに、そんな言葉遣いでは国王には到底なれないわ。王太子になったら帝王学も強制的に勉強させられる。それに王室のご公務は目白押しにあるわ。そんな中で蒼の騎士団を続けられるの?」
「あ~何言ってんだダイアナ、続けるに決まってんだろう?──俺は王太子の地位なんかこれっぽちも欲しくないのに、国王やシーラン伯のオッサンが『エドアルド、お願いだから王太子になってくれ!』って頭を下げるからよ。仕方なくこっちは承諾してやったんだ。それも二つ条件つけてな」
「条件──?」
「ああ一つは俺の妻はダイアナ、お前にする事。もう一つは父王が引退するまでは、蒼の騎士団を続けさせろってな!」
「あらまあ? だから私はこの王族専用病室のフカフカのベッドで寝てた訳ね」
ダイアナはびっくりして、長い睫毛をパチパチと数回も瞬きした。
「そうさ、あんたはもう俺の婚約者だからな、周りはそのつもりで接してくるぞ、だからあんたもそのつもりでいろよ!」
──え、これがエドのプロポーズなのかしら?
ダイアナは急展開ばかりで、再び眩暈がしそうだった。
「ねえ、エド王太子様。私は、ようやく大聖女に返り咲いたのよ。あなたも私が追放された日に、口笛を吹いた騎士なら知っているでしょう。聖女は処女でなければならないの。私が結婚しないで、一生大聖女を続けるとは思わないの?」
「ああ、思わないよ。だってダイアナは俺に惚れてるだろう?」
「ま!」
ダイアナはエドにあっさりと返答されてドキッとした。
「ほら、顔が赤くなった、俺のいった事は図星だろう!」
エドは大きな声で大笑いした。
「⋯⋯⋯⋯」
ダイアナはエドのくったくのない笑顔が大好きだった。
母親譲りのご自慢のすみれ色の瞳が視えなくなるほど、エドは大きな声で笑う。
王族らしさなんてこれっぽっちもないエドの笑顔。
エドと出逢ってから二か月……彼の笑顔がダイアナの生活には必要不可欠となっていた。
──はあ、どうやら私はこのガラの悪い王子様に、心をがっちりと掴まれたみたいね。
まいっか。うん、翡翠の女神様が仰った通り、ヤンチャ王子を立派な国王にさせるのが、これからの私の使命みたいね。
「あ、でも待ってエド!──私はすぐには結婚できないわ。せっかく大聖女に戻れたし。それにあと一年は大聖女として、やるべき事を弟子に引き継ぎたいのよ!あと一年貴方は私を待っててくれるかしら?」
「あったり前だろう! 俺はダイアナが纏う純白の聖衣姿を見て一目惚れしたんだ。まだ一年でも二年でも眺めていたいんだよ!」
──え、そっち?
ダイアナはエドの返事に目を点にした後、大笑いした。
◇ ◇
後日談になるが、エドは最初王太子になるのを断固拒否していた。
国王の長子と突然言われて、蒼の騎士団になったまではいいが、大嫌いなアレックス王太子の後釜など継ぐ気はまったくなかったのだ。
だが、父王と義理のシーラン伯爵に延々と説得させられて、どうしようか迷った時にピンと閃いた。
エドは国王たちにダイアナを妻にする事。王太子時代迄は蒼騎士団は継続と、二つの条件を提示した。
当初、父王は蒼の騎士団継続は賛成したが、ダイアナとの結婚は複雑な心境だった。
国王にしてみれば、息子のアレックスの悲劇があったので、またもや相手がダイアナだと、エドアルドまでアレックスの二の舞になるのでは?──と危惧したのである。
しかしダイアナのいた孤児院のシスターアンナから、この度の寄付金のお礼状を貰った。
アンナの手紙を読むとダイアナとエドがこの2ヶ月余り、孤児院で生活していたとか。
その二人のアツアツぶりがアンナの目を通して、とても丁寧に書かれてあったのだ。
「ふむ、アレックスの時は奴の一方通行の片思いだったが、どうやら今回はダイアナもエドワルドに惚れているようじゃな」
と国王はホッと安堵したのだった。
また大聖女のダイアナならば、粗野でヤンチャなエドワルドをしっかりと支えて、この国の未来を繁栄させてくれるだろうとの考えもあった。
◇ ◇
田舎の野山を駆け巡っていた野生児のエドは、蒼の騎士団に入隊した夢を叶えたのはいいが、すぐに嫌になった。
とにかく王宮勤務は規則だらけ、貴族マナーに慣れないエドは毎日、先輩から団長から怒られてばかり。もう窮屈でたまらず、騎士団を辞めようかとさえ思っていた。
そんなある日、王族の警護で神殿で大聖女ダイアナの祈祷姿を見て、一瞬にして心を奪われた。
「はあ~何て清らかな王女さまなんだろう。 あんな別嬪な王女様がこの世にいるなんて!」と。
後で先輩騎士に聞いたらダイアナは王女ではなく、大神殿を司る大聖女と聞いたエドはますますダイアナに傾倒していった。
そこからエドは王宮勤務が大好きになった。
大聖女ダイアナを偶然、王宮や神殿で見かけるだけで一日がバラ色になった。
この辺りは異母弟のアレックスが、ダイアナを見惚れていた執着愛とよく似ている。
だがエドの愛はどこまでもダイアナ一直線であった。
彼は生まれて初めて母親以外の女性を愛する喜びを知ったのだ。
そしてダイアナが大聖女の地位をアレックスからむりやり剥奪され、王都追放となった事を知るや否や怒りが爆発した。
「団長、俺、具合が悪いんで田舎へ却って休みます!」と青騎士団長へ休暇届を叩きつけて、密かにダイアナを追いかけたのだった。
エドは森の中でダイアナを助けて以来、孤児院で過ごしていく内に、ますますダイアナを好きになっていった。
ダイアナの美しさや優しさや清白さ、そして何よりも大聖女としての使命を果たす強靱さ。
エド自身も知らず知らずに感化されていった。
そしてダイアナもエドとあの森で逢って以来、彼の奇想天外な性格に振り回されながらも、憎めない愛嬌と、いざという時支えてくれる気骨さや逞しさに惹かれていったのだ。
ダイアナは病室の窓から大神殿を眺めていた。
──カミラ、あなたの選択は間違ってはいたけれど、結果的に私をエドとお化けの森で出逢わせてくれた。
私の欲するものを何でも欲しがったカミラ。
あの頃、私はできるだけカミラに譲ったけれど。
もし、今、あなたが生きていたらエドだけは、ううんカミラだけじゃない!
他の誰にもエドだけはあげないわ!
ダイアナは巫女になった時から、この身は生涯、翡翠の女神のために捧げようと決めていたが、エドと出逢って、生まれて初めてこの世で執着する人間に巡り合えた事、異性への愛を知った歓びを感じていた。
こうして一年後、二人はめでたく結婚してダイアナはエドワルド王太子の妻となった。
ダイアナの後、新たに大聖女に就任したのは燃えるような赤い髪のマリーだった。
まだ一年しか聖女期間のないマリーは、異例の大抜擢だったが、ダイアナは彼女なら歴代の中でも、屈指の大聖女になるに違いないと、太鼓判を押してくれた。
その後、マリーはダイアナの期待通り、生涯大神殿の翡翠の女神を守り抜き、死ぬまで大聖女としての使命を全うしたのだった。
──完──
※ 最後までお読みくださりありがとうございました。ざまあシリーズ第三弾も投稿しますので、その時はまた一読くださいませ。
※ 沢山の誤字脱字報告してくださった清坂さま、茂部さま、sleeper様、ムームー様どうもありがとうございました。 この場を借りて感謝いたします。
※お願いです。もし最後まで読んでくださった方、少しでも面白かったら★1つでもいいので、ポイント及びブクマもどうかお願い致します!
※ 今回も目指せ!100ポイントです、一瞬でもいい、異世界完結ランキングの片隅に入りたい!
★ 日間ランキング(異世界・完結 6/2 午前9時現在)見たら158ポイントで最高54位に入ってました。目標クリアです。さらに現在なんと204ポイントも入っていて⋯⋯超嬉しい!!
★ブクマ&ポイント、入れてくださった、貴方様方のおかげで目標達成できました。、大変にありがとうございました
ふふ(ꈍᴗꈍ) 勿体ないからスクショしました!
★今回は誤字脱字報告も沢山して頂きありがとうございました。
これらを励みにしてまた第3弾も頑張ります。
本当皆さまのおかげです。重ね重ねありがとうございました
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