表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/75

56話 暴力

 そう決意を新たにした所で、空に一人の男が浮かび上がった。

 薄透明の、まるで立体映像のように現れた男は軍服のような服を着ており、頭にはつばの広い黒い帽子をかぶっていた。

 その男は一瞬鋭い眼光を飛ばしたかと思うと言い放った。

 

「貴様等は、この世界の誰よりも弱い弱小種族だ」

 

 突然のそんな言葉に全員があっけにとられていた。

 それに構わず男は話し続ける。

 

「脆弱で、魔力も少なく、寿命も短い最弱の種族だ。わかるか?」

 

 そんな言葉に一人が声を上げた。

 

「ふざけんな! そんなことはねえ!」

 

 その声に賛同するようにそうだそうだと周りも声を上げ始める。

 俺は何も言わず黙っていた。

 

「何故そう思う?」

 

 こちらが見えているのか、声を出した男をまっすぐに指をさす。

 その迫力に一瞬たじろぐ男だったが、高らかに言い返した。

 

「人間でも強いやつはいるだろうが! ドラゴンキラーで有名なユーズヘッドとかも人間だ!」

 

「お前は人間が弱いと言われて他の誰かを挙げる程弱いのだな」


 ズバリと言われたその一言にぐっと言葉をつまらせる。 

 

「お、俺はまだこれからだ、大体まだ登録して一年未満しか経ってねえんだから仕方ないだろうが!」

 

「そのドラゴンは一年未満であろうと強い。お前はドラゴンと出会った時同じ言い訳で逃げるのか? それで生き延びれたとはよほど弁術が達者だと見えるなあ」


 ふんと吐き捨てるように言うその男。

 

「いいか、そのユーズヘッドとやらも、それぞれが思い描いた強い人間は、人間が強いという証明ではない、その人間が強いだけだ。そして、その誰もが決して人間が強いなどと幻想は抱いていない」

 

 冷たく、底冷えするような声でそう答える。

 喧騒は静まり返り、誰もが声も発せられないほど冷え切っていた。

 

「例えば、ここにいる人間達を全員殺すことも、私としては容易い。その場合、貴様達は抗えるのか?」

 

 失笑するその男に対して誰かが声を上げようとした瞬間。

 

「ああああああああああああああああ!!」

「がああああああああああああ!!」

「うああああああああああああああ!」


 あちこちで大きな悲鳴を上げ始めた。

 

「今、身の程を知らぬ言葉をあげようとした者は悪夢に囚われた。後は精神崩壊を待つだけだ、もはや答えも言えないだろうが、言葉の結果は出たようだな」

 

 つまらなそうにそう答える。

 ここまで来て、全員が意識したのはこの男は本当に

 

「遅い。遅すぎる。そう、私がそもそも何者か、何をしようとしているのか。貴様らはこれを新王杯のイベントかなにかを思っていたのか?」

 

 それが聞こえた瞬間、あちこちで武器を構え臨戦態勢を取る。

 それを見た後、口元を歪ませ言った。

 

「私はハイテルテルネス。夢魔であり」

 

 一瞬のための後

 

「この第7闘技場を任された、新王杯の審判だ」

 

 先程のことを覆すようにそんな事を面白げに言った。

 

 審判……? というような困惑した声が聞こえる。

 俺はと言うと別にどうも思っていなかった。

 

 仮に本当だったとしてもなんというか、またかと言う様な感じだった。

 

「し、審判が参加者を減らしていいのか!?」

 

 と、声もしなくなった一人に声をかけていた男がそんな事を言う。

 恐らく先程の彼が言う身の程を知らない声を上げたやつの仲間だろう。

 

「この程度の魔法でもうリタイアする様な奴がこの先を勝ち残っていけると思っていたのか?」

 

「ぐ……し、しかし俺達はチームだ。一人掛けたら不公平だろうが!」

 

「何を言っている。別に貴様達を狙ったわけではなく、つまりは平等に行われている。何より、チームと言うならかばうなり回復なりさせてやれんのかね?」

 

 やれやれと言わんばかりにため息をつく。

 ハイテルテルネス、といったか。

 魔法で写しているだろうが、そのせいかどのぐらいの力かいまいちピンときていない。

 

 まあ、というかそもそもとして。

 

「新王杯の関係者かどうか、本人が審判としか言っていないのに信じ込むのもどうかと思うがな」

 

 そんな言葉をポツリと呟く。

 まあ恐らくは言葉は本当で、あの男が新王杯の審判である事は確率的には高そうに思える。

 殺すならさっさと殺すか、いたぶるならもっと酷いやり方もあるだろうし。

 

 正直、敵として襲ってくるにはぬるい対応だから敵ではないだろう、というのが俺の推測だ。

 

 しかし、それはあくまでそうだろうという予測でしか無い。

 本当は全く関係のない襲撃者、と言う可能性もあるのに、相手の言葉だけ信じるのは危険だ、と判断していると。

 

「……少しはマシな者も居るな」

 

 視線がこちらを向いた。

 ……小さな声で横に居る人間も聞こえないほどのつぶやきを察知したのか。

 一体どういう原理だ。

 

 

「まあ真偽などどうでもいい。さて、予選の方式だが」

 

 一拍の溜めの後、その男、ハイテルテルネスは言った。

 

 

「残り1人、いや1チームになるまで戦い抜け」

 

 

 ざわりと、空気が変わった。

 今までは全員が緊張していたとはいえ、それでも話し声があるような状態だった。

 

 しかし、その一言で周囲全てが敵と認識された。

 先程の冷ややかな空気は、急激に熱を上げた戦場の空気に成り代わっていた。

 俺はゆっくりと動く。

 

「どうせ勝つ者は勝つ。それならば手間を省いて全員で殺し合えばいい……ん、いや殺しはいかんのだったか。殺しは無しだ、殺そうとした場合私が殺す」

 

 そんな言葉に全員の顔が強ばるが気にせずハイテルテルネスは続けた。

 

「なんだ、開始の合図が無ければ動けんのか貴様等、いいぞ

 ───存分に戦い合え」

 

 パンと、わかりやすく手を叩く。

 その瞬間空からハイテルテルネスの姿が消えた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

「てめーからだおらぁ!」

 

 

 瞬間沸騰するように戦闘が始まる。

 こっそり壁際まで来ていた俺は

 

 

 

「【白亜守護陣(ホワイタル)】!!」

 

 

 守りに入った。

 理由は唯一つ。

 

 

「「「「うわああああああああああぁぁぁああああ!!!」」」」

 

 爆発音と共に大勢の人間が吹き飛んだ。

 

 そりゃ、広いとはいえ人が敷き詰められた場所。

 そこで近接戦ならともかく魔法を主に使う様な世界だ。

 となると、戦闘開始でどうなるか。皆魔法を使うだろ。

 んで、全員とは言わなくても少なくとも数十人が一斉に魔法をぶっ放したらどうなるかなんて火を見るより明らかだろうが。

 

 そうだね、爆発だね。

 正確に言えば魔法が乱舞した結果誘爆したり、それたりしてしまっているわけだが。

 

「【白亜守護陣(ホワイタル)】……お、もう収まったか」

 

 

 爆発で砂煙が上がりよく見えなかったが貼り直したホワイタルに衝撃が来なくなった。

 一応収まるまで待っていると、立っているのは数十人。

 

 最初に居た数からすれば10分の1以下になっている。

 どんだけぶっ放した奴が多いんだよ。アホか。

 

 と、倒れているやつらが光に包まれ消えていった。

 ……あれは転移光か、邪魔にならないように移動させられたのか。

 

 しかし、いきなりこんな結末とはなあと、ため息を吐いていた。

 

 

 

『マスター!!!』

 

「【真なる白夜の王(アルトリウス)】!!! 【白亜守護陣(ホワイタル)】!!」

 

 

 

 刹那、俺が全力で強化と盾を重ねがけした瞬間眼の前で赤い炎が衝突し爆発が起こる。

 

 

 

「……随分と急なご挨拶だな」

 

 俺の手には既に真と偽の境界剣ライズアンドトゥルースが握られている。

 視線の先を見てみれば

 

「何、強敵から倒しておこうかと思ってね……」

 

 見たことがない男が杖を向けながらそんな事を言っている。

 優男だ、赤みがかった長髪のイケメンだが、イケメンにはいい思い出がないんだよな。

 

「強敵ねえ、それほどでも無いと思うが」

 

「いやいや、クエスト達成率100%の期待の新人は十分に強敵だよ」

 

 その言葉で俺はここ一ヶ月の間、確かにクエストをこなしていた事を思い出す。

 

「中には魔獣退治もあった、それでも100%達成しているのは君ぐらいなものだ、警戒するのは当たり前だろう?」

 

「クエストは確かに失敗したことがないが……そんな難しいか? それに魔獣退治って……何かあったか」

 

 クエストの内容は以前のメタルラットとかそんなものだ。

 別に苦労する話でもないし自慢できる程でもないと思うが。

 

「しらばっくれなくていい、アイアンウルフを討伐した事は知っているよ。情報収集は基本だからね」

 

 得意げに髪をかきあげる。

 

「流石はルークス様!!」

 

 周囲に居た女性が黄色い悲鳴をあげる。

 

「そう! 僕こそがルークス・レッド・パッチワーク!! 炎を操る……貴公子っ!! 情報収集も怠らない獅子の男!!」

 

 手を頭に当てながらポーズを決める。

 

「キャー!!!!」

 

 再び女性達が声を上げる。

 きゃーはこっちのセリフだ。

 

「恥ずかしくないのかお前、そんな事して」

 

「っふ、全く恥ずかしくないね!」

 

 …………嘘じゃん。恥ずかしいと思ってるじゃん。

 なんだろう、それだけでなんかこいつ悪いやつとは思えなくなってきた。

 

「さて、実は僕は優勝を目指すために色々していてね……」

 

 ぱちんと指を鳴らすと、残って立っていた全員が男の後ろに立つ。

 

「数多くの仲間達を作っていたんだ、だから、今残っている全員で君を襲わせてもらおう」

 

 見た所、残り数十人、数えただけでも30は超えている。

 1対30以上って事か。

 

「数の暴力にも程があるだろうが!」

 

「ふ、戦略と言ってもらおうか! 王者の、ね!」

 

 周りはそれを盛り上げるように歓声をあげるが。

 ……こいつこれ戦略とは思ってねえな。

 

 

「しかし、これほどの人数を雇ったのか?」

 

「いや、普通に交流を深めただけだが?」

 

「嘘……いやまじかよ。この人数全員と?」

 

「っふ、毎日毎日声をかけて一緒にクエスト行ったりして仲良くした。故に! 何も問題はない!」

 

 こ、こいつ……マジかよ!

 確かに、普通に仲良くなっただけなら全く問題はないけどよぉ!!

 やるか!? この人数とコミュニティを築くって!

 

「勿論一緒の予選場所になるとは限らない。だから本当はもっと居るんだが……別の場所みたいだね」

 

「なんていうか、素直にそこは凄えわ」

 

 コミュ力の塊かよ。

 

「素直に褒め言葉を受け取ろう。では、蹂躙の時間とさせてもらおうか、放て!」

 

 手を掲げると、他の奴が一斉に魔法を放ってくる。

 炎や氷、雷など多種多様な魔法だ。

 一発一発はそれほどでもないが、何分数が多い。

 距離がある分多少着弾に時間がかかりそうだが。

 

「ふふふふふ! 盾の魔法を持っているようだけれどいつまで防げるかな! だが、油断はしない! これで終わりだ!! 我が血統を持って命ずる、受けよ! 『炎の投槍(フレアジャベリン)』!!」

 

「出たぁ!! ルークス様の最強魔法!! あらゆる魔法を貫く炎の槍よ!!」

 

「終わったな、これを受けて防げるやつはいない!」

 

「ルーク様の勝利だぁ!!」

 

 

 それを見て俺は。


 




「【軌跡を喰らえ、驕れるもの(アグリシア)】」

 

 現れた光の龍が飛んできた魔法を全て喰らうように消し飛ばす。

 炎の槍とやらもアグリシアに当たった後消し飛ばされた。

 

 

 

「…………え?」

 

 

「なんだ」

 

 俺は一息だけついて、言った。



 

「数えれるようになったな」

【TIPS】

不正防止のために意図的に雇われた、あるいは経歴を詐称した者は当然ギルドでチェックされ

弾かれる仕組みになっている。

そのため、仲間内で組んで誰かを集中で狙うという事はほぼ出来ない。


が、全員と単純に仲良くなって組むのは禁止されていない。というか出来ない。

それを行うとチームを組む4人以上と仲良くなってはいけないと言う事になってしまうからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ