22話 勘違いしてませんからね!
「おかえりーって、どうしたの? すっごい疲れた顔してるけど……」
「ああ、予想以上に力を使ってな……疲れたわ」
空いていたベッドに座って身体を休める。
調子に乗って色々やりすぎたが、なんとなく充実感を感じる。
無事依頼を達成した俺はギルドに報告した後、丁度いい時間だったのでティリアスの家に戻ってきたのだが、そこにいたのはアルマダだけだった。
「ティリアスはまだ帰ってきてないのか?」
「一度帰ってきた後、またどっか行ったみたいー」
「ふうん、そうか、どこ行ったのやら……。ああ、そういえば思い出した。アルマダ、お前が言っていた吸血女王だったか、その城に行くための迎えの奴とは話はついたのか?」
バッチシとブイサインで返してくるアルマダ。
ほう、やるじゃないか。
ポンコツの汚名返上かな?
「バッチシ迎えに来てくれるよ!」
「よくやった。で、いつ来るって?」
「? だから迎えに来てくれるって」
「いや、だから迎えの時期はいつなんだ?」
「え? 迎えに来てもらうから、今だよ」
瞬間、音がして魔法陣が床に広がる。
血の様に赤い魔法陣からゆっくりと地面から出てくるように現れたのは一人の女性。
見た事も無い赤いメイド服を着ている。めっちゃ派手だな……。
それに、また女性か。
「お初にお目にかかります。わたくし、シルヴァリア・ハーケンブラッド様にお仕えするメイド。その筆頭長の任を頂いておりますエクレアと申します。此度は我が主の城に客人としてご招待するべく、お迎えに伺った次第でございます」
一般市民の俺でもわかるぐらいに完璧な所作で礼をして挨拶をするメイド。
こ、これが貴族のオーラ……く、気圧される程に輝いて見える。
「あ、エクレアーお久ー」
「馬鹿野郎! エクレアさんだ!」
こんな人を呼び捨てには出来んだろ。
見ろ、お前と違ってふくよかな物腰、そしてあのロケット型の美乳かつ巨乳。
赤いメイド服にマッチした赤い髪は腰まで伸びているストレート! それでありながら貴族令嬢の様な雰囲気。
そして美人なんだぞ!
「ふふ、構いません。わたくしはただのメイド。アルマダ様に呼び捨てされるのはむしろ誉れと言っても過言ではございません」
過言だよ。めっちゃ過言だよ。
「失礼ながら、ユウ様でお間違いないでしょうか?」
「あ、はい。そうです。ユウです。俺が」
かつてない大人びた相手に倒置法かつ単語で話してしまう。
き、緊張しているわけではない!
「お話は伺っております。非常にお強い力を持って、アルマダ様を使い魔になされたとか……尊敬に値致します。私の事はどうぞエクレアとお呼びください。勿論敬語も不要で御座います」
そう言って頭を下げる。両手はきっちりと合わせて、まるでアニメに出てくる人みたいだ。
いや、馬鹿にしているわけではなくて、比較できるのがそれぐらいしかねえんだよ!
『マスター。この方とキャラが被っています。これは由々しき事態かと』
「一ナノたりとも被ってねえから安心しろ」
お前はポンコツ。こっちは真品だ。
「もし宜しければお連れさせていただきますが、ご準備の方は宜しいでしょうか?」
そういわれてつい頷きたくなるが、踏みとどまった。
ティリアスがいないのだ。流石に置いていくわけにはいかんだろう。
「いや、すまない。あと一人いるんだが、まだ帰ってきてないみたいでね……」
急に呼んだであろうアルマダの方を見れば顔をそらして下手な鼻歌を歌っている。
集団行動ってのも知らねえのか。
……いや、そういや知る事は出来なかったな。今度叩きこんでおこう。
「そうでしたか、であればお戻りになるまでお待ちさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「ああ、勿論だ。って俺が言うのもおかしいけどな……」
ここはティリアスの家だし。
そういえばティリアスはどこにいったんだろうか。確か服を買いに行くとか言っていたな。
一度帰ってきたってことは、買い物は終わったんだろうが。
「アルマダ。ティリアスがどこ行ったか知らないな」
「うん。どこ行ったかは知らな……ちょっと待って、今知らないなって断定しなかった?」
「予想通りじゃないか、何か不満でも?」
「こう優しい言い方がいいかなって……」
さて、予想通りポンコツの使い魔が無視されて騒ぎ出す事を更に無視するが、さてどこに行ったのやら。
一応夕方に集まるって事だから夜まで帰ってこないってわけではないが。
「ユウ様、もし宜しければお台所を貸していただけないでしょうか?」
そこで、声をかけてきたのは赤いメイド、エクレアさんだ。
台所……?
「なあ、アルマダ。この家って台所なんてあったか?」
「見てわかるでしょ、無いよ」
「そ、そうですか。大変失礼な事を……」
いや、まあ普通はあるよな。
「エクレアさんは何か台所に用事が?」
「いえ、お待ちであればご許可さえ頂ければ紅茶でもご用意させて頂こうかと思ったのですが」
ああ、気を使った結果台所がないという貧乏事情を知ってしまったと。
後多分紅茶なんてものは出てこないぞ。
紅茶葉も何もないからな。いつも水だ。紅茶が欲しいなら無から作るしかない。
……いや本当そんな事俺が言えた義理じゃないんだけどな。マジで。
「ただいま帰りました……おや、お客さんですか?」
と、そこでタイミングよく帰ってきた家の主、ティリアスは赤いメイドを発見して声を上げる。
珍しいなって感じでしげしげと失礼にならない程度に見ているが、それほど驚きはないようだ。
この世界ではメイドは一般的だった……?
「貴方は……」
むしろ驚いているのはエクレアさんの方だ。
まあ、仕方ない。全身ローブの怪しい人間だからな。
「ティリアス、この方が今回吸血女王の城に連れて行ってくれるエクレアさんだ」
「そうでしたか、どうもティリアスです。宜しくお願いしますね」
ローブを外して挨拶をする。こういう所はちゃんとしているんだよなティリアス。
「此方こそ、ご紹介に預かりましたシルヴァリア・ハーケンブラッド様に仕えるメイド、エクレアでございます。以後お見知り置きを、ティリアス様」
「ええ。さて、どうするんですか? 一応ご飯買ってきましたが」
「何かと思ったら夕食買ってたのか……あ、そうだ。ほいこれ」
ティリアスに金貨を5枚渡す。
依頼をクリアした事で貰えた報酬だが、この世界の通貨は全部コインらしい。単位はゴルド。
アリスに聞いたところそのコインも金額で複数分かれているらしいから、面倒だなと思ったがそうでもなかった。
何せ、分かれているコインがこれだ
銅貨:1,5,10,50、100、500
銀貨:1000、5000
金貨:10000
…………うん、わかりやすくて何よりだ。完全に日本ですね。
ついでにコインに数字書いてあるしな。
そして渡したのは金貨5枚。まあわかりやすく言えば5万だな。
討伐時間を考えれば時給はめっちゃ高いが、若干安いと思わなくもない。
「え? これは……私に?」
「ああ、受け取ってくれ」
今まで飯とか、そもそもこの家を普通に使わせてもらってるからな。
家賃と飯代だ。色々と世話にもなったしな。
「…………わかりました。いつかこんな日が来ると思っていましたから」
何故か覚悟を決めた様な、決意秘めた表情を見せるティリアス。
おい、何故この場面でそんな顔をするんだお前は。
「でも、その、私も準備と言うか、心と言うか、せ、せめて時間を下さい!」
「いや何言ってんだ、お前を待ってたんだよ。今すぐに決まってるだろ」
「い、今すぐ!? そうですか……そんなに私を……」
わけのわからんことを呟き始めてるな。
ったく、エクレアさんが待ってるんだから早く行かんと失礼だろうが。
「んじゃ、行くぞ」
「ええ!? こ、こんな人が居る所で!? ……わかりました、そ、その。初めてなのでお手柔らかにお願いします……」
「なんだ、お前(瞬間移動)初めてだったのか」
「そ、そんな暇なかったですし……え、その言い方からするとユウは初めてじゃないんですか?」
「ああ、俺は、2回目だな」
「ええええええ! そ、その初めては誰なんですか!?」
「なんでそこに拘るんだよ……別に誰でも変わらねえだろう」
「そ、それは乙女心と言うか……」
瞬間移動に乙女心がどこにあるんだ?
「アルマダだよ」
「にゃああああああああああああああ!!?? アルマダちゃんんんんんん!?」
「うるせえ!!! いきなり大声を出すんじゃねえ!!」
「そ、そんな……ぽっとでのロリ痴女に負けた……」
お前酷い事言うな……ちなみにお前も痴女枠だからな?
と言うか負けたってなんだよ。お前も瞬間移動できんのか?
「ご主人様。ボク今すごく楽しい」
「急にどうしたお前、ティリアスの奇行が楽しいのか?」
「うん」
即答とか悪魔かコイツ。いや悪魔だったわ。
「ふふ……ええ、まあ別にいんですよ、へへ」
「FXで有り金溶かしたような顔してるぞお前。とにかく行くぞ」
「ははは、イくなんてそれ程慣れてるんですかね……」
駄目だコイツ頭がいかれちまったのか。
精神回帰は……自分しか駄目だったな。
「僭越ながら、宜しいでしょうか?」
と、見かねたのか声をかけてきたのはエクレアさん。
「うん、何かあったか? ……エクレアさん笑ってないか?」
微妙に口角が上がっている気がするんだが。
「そのお金は一体なんのお金何でしょうか?」
「ああ、これは依頼で貰ってきた報酬だが?」
「依頼で貰ったお金を私に使う、それだけの価値があるってことですよね……」
「っ」
「エクレアさん、今笑わなかった?」
「そのお金は何故お渡しになったのですか?」
頑なに答えないな……まあ見間違いかもしれんしな。
質問している時の顔は真面目だし。
「食料とか寝床とか、まあ色々世話になったお礼みたいなもんかな」
「色々お世話するんですよね……」
「ティリアス……?」
本当に大丈夫か……?
病院に連れていくか?
「承知致しました。その心は素晴らしいと思います。では2回目と言うのは?」
「これから瞬間移動、転移? まあそう言ったので移動するんだよな? 前アルマダに転移されたんでな、これで2回目かなっと」
「てん、い?」
「そうですね。転移で城まで移動させて頂きます。ご回答、感謝致します」
ふむ、普通に答えただけだが何か気にかかったのだろうか?
「てんい?」
「お前はそろそろ戻れ。これから転移で城に行くんだぞ。しゃきっとしろよ」
「おかねはおれいで、はじめてはてんいのはなし?」
「幼児退行してんのかよ。最初からそう言ってるだろ」
「言ってません!!!」
あ、戻った。
何怒ってんだコイツ。
情緒不安定にも程があるのではないのか?
「あーもう! もう!」
牛かお前は。
「もういいです! 早く行きましょう!!」
腕組みをして怒ってますと言わんばかりに俺から顔をそむける。
なんなんだよ本当にもうこいつは……。
まあいいや、さっさと行くか。
「エクレアさん、待たせてすまん。揃ったから頼むわ」
「了解致しました。それでは皆様、この魔法陣に入るようにお集まり下さい」
言われて俺は少しエクレアさんに近づく。
何故か俺の左側に近寄ってくるアルマダ。
それをみてそっぽ向きながら右側に近づいてくるティリアス。
「それでは、失礼な所作をご容赦下さい」
そう言って指を鳴らす。
瞬間、背景がぐにゃりとゆがむ。
そして、わずかな浮遊感の様なものを味わったかと思った数秒後。
「到着致しました。大変失礼ながら、城内には直接転移出来ませんので入り口にお連れしております。ご足労をおかけますが、此方へ移動願います」
そう言われるも、俺はその言葉を半分ぐらいしか聞いていなかった。
理由は簡単だ。
「すげえ……マジで城だ」
アニメやゲーム、あるいは写真でしか見た事ない巨大な西洋風の城。
巨大な鉄格子の門の奥にそびえるその城は見ただけで風格を感じる程。
でも色は普通なんだな。真っ赤になってるんじゃないかと少し考えたが。
「はい、此方が我が主が住まう城。ハーケンブラッド城。通称、吸血女王の城と呼ばれております」
【TIPS】
種族によって生態は大きく違うが、一般的には通常の性行為にて子供は成される。
ただし身体を変化、または魔法で構築した姿では子供自体は出来ないとされている。
また一部の種族は性行為自体をほぼ行わなかったり、単為生殖だったりと見た目だけでは一概には判断出来ないようだ。
……さて、私が本当に子作り出来ないか、試してみるか?
───R18本 本当はみだらなだーくえるふ ロトリ編。より




