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3月公式戦 家庭婦人大会終了後の『これからの時間』 1

 2時間近くの死闘が終わり、皆な疲れているだろうに『これからの時間』だけは確実に執り行われる。しかも終了時間は、いつも行く中華料理屋の閉店時間まで。


 体育館でさえ使用時間が決まっているのに、この中華料理屋は、常連の猛獣御一行様に気を遣い2時頃までは店を閉めないでくれる。場合によっては、猛獣御一行が帰るまで店を閉めない。


 練習後の『これからの時間』であれば、飲み始める時間も21時過ぎからであるが、この日は大会の後で18時30分からだという現実を考えると、一体何時間飲むつもりなのか?


 お店が2時頃まで閉店しないでいてくれることが、ありがたい話なのか迷惑な話なのか、判断に困る。


 さて、「陽ちゃんは着替える必要がないんだから…」と言われ、無理矢理捕獲された陽介が、北極グマと中華料理屋に先乗りしてきた。


 「ママぁ~ゴメンね、遅くなって。」と北極グマが挨拶すると、


店のママが「いいのよぉ、いつもお世話になってるんだから!」と愛想を振りまいた。


ところで、「今日は何人なの?」と店のママが北極グマに聞くと、


「今日はね、15人位かなぁ?、凄い試合だったから皆なお腹も減ってるし、喉もカラカラだと思うよ!」と答えた。


 よく見ると、日曜日の(連盟主催の公式戦は、原則日曜日に行われる)18時30分だというのに、店内はすでに混み合っていた。


 「ここに15人はキツイなぁ」と陽介は思っていたが、そんなことは気にせず「ハイ、陽ちゃんはここ!」と座席を北極グマに指定された。


 彩姉さん(北極グマ)と2人でイスに座ると、何も言わないのに「ハイ、生ビール。これはお店からのサービスだから」と、笑顔で店のママが持って来てくれた。


 彩姉さんと陽介は、「顔を見合わせ、ありがとう!」と言ってジョッキを合わせ、「カンパ~イ!」と一気に飲み干した。


 応援で大声を出し続けた彩姉さんは、


「陽ちゃん、今日の試合でチームプレーの大切さが分かった気がする。だって、もしヨシちゃんが…」


と話し始めたところで、


陽介は「彩姉さんが感じたこと、言いたいことは良く分かります。ただ、ヨシちゃんやよっちゃんがそのことを、自分で感じてくれないと意味がないんです。だから、チーム全員がそのことを自覚するまで、黙っていましょう!」


と、その話しを遮った。


 彩姉さんは、


「分かった。あんたが監督としてそう言うなら、その時までこの話はやめとこう。でもユニフォームを着る人の選考で、チームプレーの出来る人を最優先にする!と言ってから、チームプレー・チームプレーって言い続けたけど、あれが永竹クラブの転機だったかもね」と言って、


「ママぁ~、生ビールおかわりぃ~」と吠えた。


 まだ、メンバーは誰も到着していない。陽介はこの調子で飲んでいたら、殺されてしまうと思い、


「僕は、皆が来るまでお水にします。」と店のママに伝えた。


 ママは「分かりましたよぉ~!」と答えた。


 しかし彩姉さんは、北極グマに変身して、そのたくましい腕で陽介をつかみ


「あんた、そんな言い分が通ると思ってるの?、いい度胸だね!」と笑顔で言ったが、陽介には恐怖であった。


 「ハイ、どうぞ!」と言って、ママが生ビールを2つ持ってきた。陽介のオーダーは、全くスルーされている。この店における陽介の客としての立場は、北極グマの範疇にあるらしい。


 ようやくメンバーが到着した。


 しかし、「ママぁ~、まや来たよぉ~!」と言って、像アザラシが先頭を切って入って来てから、次から次えと永竹クラブのメンバーが入って来る。


 この混み合っている店内に座る席などなさそうだ。見れば18人のフルメンバーの他に、応援していた家族や友人なども入って来て、総勢25人位にはなっていた。


 さすがに困った様子の店のママに、


「席が空くまで疲れている選手以外は、外で待ってるから心配しないで!」と言って、


ユニフォームを着た12人と他3人を座らせ、陽介をはじめ残りの人を店から外に出した。


 彩姉さんの素早い対応で、店のママも安堵の表情だった。


 店の外に出た彩姉さんと陽介をはじめとする10人ほどは、店内がすくまでの間、店の前で話をしていた

が、そこへ地元の人達が通りかかり、


「あれっ、彩ちゃん何してるの?」と話しかけて来た。


 彩姉さんは、よほど今日の試合が印象深かったのか、通りがかりの立ち話にしては、長々と試合の話しをし始めた。


 そして陽介に、


「陽ちゃん、悪いんだけど、コンビニ行ってビールとツマミ買ってきてくれない?」と言い、陽介に1万円を渡した。


 陽介は、「どのくらい買ってきましょうか?」と尋ねたが、彩姉さんは話に夢中で聞いていない様子だった。


陽介は冗談半分に、「聞こえてないなら、1万円分全部買っちゃいますよぉ!」とおちゃらけた。すると聞いていなかったはずの彩姉さんが、


「それで良いよ!、早く買って来てね!」と言い、また立ち話しを始めた。


 陽介は、「コンビニでビールとツマミを1万円分買ったら、結構な量だぜ!、酒の感覚が人じゃないな!、信じられねぇ!」とつぶやきながら、買い物に出かけようとした。


 しかし、そのつぶやきを彩姉さんの地獄耳が聞いていて、


「陽ちゃん、何ブツブツいってるの?、早く買ってらっしゃい!」と言い放った。


「まったく、練習中の僕の話しは聞かないのに、都合の悪いことや悪口は、良く聞こえるな!、オバサンの地獄耳、最強!!!」と思いながら、陽介はコンビニに走った。


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