弱小ママさんバレーチームの諸事情 3
次の大会まで後2ヶ月強となったある練習日、陽介は、弱小ママさんバレーチームにありがちな、試合当日にユニフォームを着せるメンバーの選考順位を、変更すると言った。陽介の選考順位は、
一、チームプレーが出来る者。
二、技術が優れている者。
三、練習に数多く参加している者。
であった。
陽介はチームメンバーの意見を聞いていると、収拾がつかなかったり、チームの諸事情にメンバーのプレーが左右される可能性があると考え、当初、原則として陽介が監督として独断で選考することにした。もちろん陽介の選考について文句のあるメンバーもいたが、女性同士の諸事情によりチーム不和になるより、監督がその選考の全ての責任を負った方が、不満の矛先が監督に向く上に、試合中も指示を出しやすいと考えたからだ。
そして、陽介の前任が実行していた、「ユニフォーム着た者は、全員一度はコートに入れる!」ということを踏襲すると約束をした。ただし、ユニフォームを着た者は、着られなかった者の思いも一緒に、チームの一員としてプレーをすることが条件だとも伝えた。
一見、大袈裟のように聞こえる物言いだが、多くの弱小ママさんバレーチームでは、監督とチームの関係、チームプレーの重要性などの意識が極めて希薄である。ガチガチにする必要など全く無いが、そこの意識は少なくとも持たなければ、中々常勝することは難しい。陽介は、永竹クラブというチームは、ハッキリとわかりやすく、方向を示さなければならないチームで、監督がブレナイ意思を見せなければならないとの思いから、発した言葉だった。
さらに、勝負にこだわる試合をするために、一人一人がコートの中でどうすればいいのかを、意識をもって練習をするようにと告げ、ユニフォーム着るための第一順位が、『チームプレーの出来る者』であることを意識づけるようにした。
メンバー一同は渋々了承したが、そのことが永竹クラブの転機となったのを、後で感じることになる。
陽介は、近い将来、永竹クラブが、勝つことによってのみ味わえる、歓び・楽しさ、を感じられるようになって、どのような練習をどのような心構えですれば、勝てるようになるのかを、チームとして分かるまでは、例え嫌がられても、チームプレーが最重要であることを、言い続けようと決心した。
そして、チームメンバー全員と、監督である陽介も、また永竹クラブを応援してくれている、子供達や親族が、『優勝』ということを目標にして、同じ方向を向けるように、練習をして行こうと思った。