かつてない練習の日々 1
試合当日ユニフォームを着る条件を、陽介から聞いたメンバーは、『これからの時間』でそれをツマミに陽介をいじっていた。陽介が監督を引き受けた当初とは違い、比較的陽介の言う事を素直に聞きながら練習をこなしていたが、やはり永竹クラブの主戦場は、中華料理屋。「ママぁ~、いつもの頂戴ぃ~!」と像アザラシがいつものように吠えると、サッと猛獣御一行様が飲むボトルと、氷、それにそれを割る水とウーロン茶が出て来た。相変わらずよく躾けてあると陽介は感心するばかりだった。
その席で、久々に登場する北極グマ(彩姉さん)が、「私なんてさ、永竹クラブの部長っていう立場だけど、前みたいに毎回練習に行けない上に、プレーも下手ッピだし、陽ちゃんの選考基準からすれば、絶対にユニフォーム着れないよねぇ~?」と弱音を吐いた。「昔なら、飲み会は皆勤だから絶対にユニフォーム着れたのに~」とも言った。陽介は北極グマに、「何を言ってるんですか?、僕の選考第一順位は『チームプレーが出来る者』ですよ。それが一番重要なんです。でも勘違いしないで下さい、飲み会皆勤は全く関係ないですからね!」と言い渡した。すると今度はジャイアントパンダ(和気ちゃん)が「でも陽ちゃん。彩ちゃんは永竹クラブには絶対に必要だよ!、あの明るさと声の大きさはチームに活気をもたらしてると思うよ!」と。陽介は百も承知していた。だから『チームプレーが出来る人』を第一順位に上げているのだと言いたかった。ヨシちゃんなんかに比べれば、彩姉さんは絶対にユニフォームを着せたい人だと思う。しかしここでその説明をしてしまったら、競争感がなくなる恐れがあると思い、ジャイアントパンダには、「和気ちゃんをはじめ、彩姉さんも他のメンバーも、チームとして何が出来るかを考えながら練習をしなければならないと思います。ただ色々な事情から毎回練習に来れない場合も当然ながらあると思いますので、出来る範囲でいいのです。出来る範囲でやろうとすればいいのです。それが今の永竹クラブには絶対に不可欠なことなのです。」続けて陽介は「次回からはチームとしてのプレーを全員が理解出来るような練習を始めます。楽しみにしてて下さいね!」と言った。
彩姉さんも和気ちゃんも一瞬嫌な顔をしたが、すぐに「じゃぁ、楽しみしてるよ!、その前にいっぱい飲んで景気づけしよう!」と言って、ガンガン飲み始めた。陽介はこれはヤバいと思って席を立ったが、座った。想像の通り、北極グマの究極の技『強引な引き込み』である。陽介は『これからの時間』で自分をつぶさない事という約束を、あっさり反故されたと思ったが、以降その日の記憶はない。




