陽介、弱小ママさんバレーチームの監督になる! 4
みんな嫌々ながらもパスの練習をやったが、嫌々ながらなので当然進歩も少ない。しかし何とかやろうとするメンバーも少なからずいて、そのやろうとしている人や体重の移動が上手くできた人に、陽介は心から誉めるようにした。
するとどうだろう、今までやろうとしなかったメンバーも、やろうとする姿勢がチラホラと見受けられるようになった。ただしチラホラ…。陽介は「このチームは誉めると成長するのかなぁ?」と思った。そして練習しているメンバーに、あらためて「やろうとする姿勢が重要なのです。勿論、膝を壊している人をはじめ、体のどこかが痛いという人も当然いると思います。だから出来る範囲で良いのです!出来る範囲でやろうとすれば!」と熱く説いた。
そして3分オーバーパスの練習が終了したとき、メンバーのあまりの息遣いに陽介はやむを得ず休憩をとった。ここまで陽介が口頭で指導した時間を含め約15分。実練習はわずか8分であった。実に燃費の悪い集団である。
休憩の後、陽介はサーブの練習をさせた。ネットを挟んでコート両サイドのエンドラインにメンバーを半数ずつ並べ、サーブを打たせた。サーブ練習の時間は5分。陽介は頭をかかえた。バレーボールにおいてサーブは最も効果のある一番最初の攻撃である。後に陽介が指導者としての教えをいただく、日本バレーボール界の礎となった、実業団で活躍した方達(みなさん今は、後期高齢者です)も、「サーブは第一試技ではなく、一番最初の攻撃だ!」とおっしゃっていたが、陽介も「まさにその通り!」だと認識していたので尚更ショックであった。
多くのメンバーが、ただサーブを相手コートに入れるだけ、或いはネットをやっと超すだけ、というような有り様だった。中にはバレーボール経験者もいたので、それなりのサーブを打っているように見える者もいたが、「一番最初の攻撃」には、程遠いものであった。