陽介、弱小ママさんバレーチームの監督になる! 2
「では、まずオーバーパスをしますので、2人ずつペアーになって下さい。いいですか始めますよー」陽介は自前のホイッスルを吹いて練習を開始した。
オーバーパスの練習を始めて30秒程経ったころだろうか、そこら中から「はぁーはぁー」と息遣いが聞こえて来た。中には練習をやめて休憩している者もいた。当然余裕で練習をこなしている者もいたが、およそバレーボールをやる上において、雑なオーバーパス練習であった。
陽介はホイッスルを吹き練習を中断させ、皆に言った。「えーと、まだ30秒位ですが、練習きついですか?」すると、このチームでは比較的プレーの上手いヨシちゃん(像アザラシ、中華料理屋で大活躍)が口を開き、「私達こういう練習より、もっと実践的な練習をしたいで~す。例えば監督の打ったボールを2段トスでアタッカーに上げるとか、9人コートに入ってシート練習するとか。その方が疲れないしぃ~」と。
陽介はチームの総意で監督を頼んできたはずなのにと思いながらも、ヨシちゃんの口出しに、「やっぱりな!」と思い、一同に言った。「2段トスもシート練習も結構。でも皆さんに今一番必要なのは、正確なオーバーパス・アンダーパス或いはこれから練習するつもりのサーブです。それが満足に出来ないのに、その先の練習に多くの時間を割くことは建設的ではありません。取り合えずパスを5分正確に出来るようになりましょうよ。それが勝つための一番の近道だと思いますから!」
(一同)沈黙。
ちなみに練習にケチをつけたヨシちゃん(このチームでは比較的プレーの上手い像アザラシ、中華料理屋で大活躍)、いつも練習や試合をかき回す。皆が合意したこと(もちろんヨシちゃんを含めて)でも、自分が気に入らなかったりすると、必ず口を出す。本人は常識だと思って話しをするのだが、それが世間の非常識だと分かっていない。だから当然のごとく正論だと思って口を出す。しかしメンバー皆は身長も高いし、チームに必要な存在だとして我慢をして一緒にやっているようだ。確かに中華料理屋では自他共に認める大活躍ぶりだが、コートの中では自分が中心選手の一人だと分かっているのにもかかわらず、責任感がない。責任感がなければ、黙っていればいいだろうに黙れない。早く本当の意味でのチームメイトになってほしいと陽介は感じていた。