ありえない呼び出し 1
「今日は帰って良し!」と言われ、すっかり永竹クラブとは縁が切れたと思っていた陽介だが、「道を歩いている時に姉さん達に会ったら何と言おうか?勢い余って余計なことを言ってしまったなぁ」と、道で猛獣達に出くわすことに、恐怖を感じていた。
あれから数週間たったであろうか、自宅で陽介が夕食を済ませテレビを見ていたら、突然携帯が鳴った。23時30分過ぎであったであろうか。
誰だろう?と思い、出てみると。北極グマからであった。「陽ちゃん、今時間ある?ラーメン屋にいるから、出てきてよ!待ってるから!、じゃねネ!」と、返事をする間もなく、あいづちをうつ間もなく、一方的に話し一方的に切られた。陽介は少々腹が立ち、この電話を無視した。そもそも自宅にいるのに23時30分過ぎから出るのも、おっくうだと思ったからだ。
しかし、それから10分位たっただろうか、再び携帯が鳴った。着信番号を見て猛獣御一行様からのそれだと分かった陽介は、あらためて携帯をマナーモードにして無視した。そして睡魔に勝てず、いつものように寝た。
翌朝目覚めた陽介は、携帯を見て驚愕した。何と着信履歴が数えられないほど残っていたのである。いくら非常識な時間帯であったとはいえ、最後の着信履歴は午前3時30分過ぎなのは、よほど急ぎの用件があったのではないかと、逆に心配になるほどであった。
朝7時30分、陽介は北極グマに非常識のお返しをしようと電話をした。すると想像通り留守番電話になった。「昨日はお電話をいただいたのに、夜分であったため床についてしまい、以後の電話に出れなくて誠に失礼致しました。何か急ぎのご用件だったのではないかと思い、早朝ではございますがご一報させていただきました。何卒非礼をお許し下さい。尚、後程私の方からお時間を見計らい、あらためてお電話させていただきます。以上です!」と留守番電話に入れた。陽介は、さしせまった用件でもないかぎり、あんな非常識な時間に人を呼び出すということに対して、精一杯のイヤミのつもりで慇懃無礼に長々入れたつもりであった。
しかし、留守電に吹き込んでから2~3分であろうか、北極グマから電話があり、「急用なの。今日の22時30分にラーメン屋に来てネ!私の他に3人チームのメンバーが来るから…」そして、やはり電話は一方的に切れた。
「急用ってなんだろう?バレーのことかなぁ?」一日変な気分で約束の時間を迎えた陽介だが、よく考えてみると、早朝に吹き込んだ留守番電話から2~3分で3人に連絡をとって、僕に電話したのかなぁ?或いは一応僕の予定をおさえて、それから3人に連絡したのかなぁ?と、色々思慮していたが、結果から言えば、陽介が約束した日は、最初から22時30分開始の飲み会の予定であったとのことだった。朝3時30分頃まで飲んでいて、その当日にまた夜分から飲み、深夜まで過ごすとは、大した体力だと思った。