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鍵と光の希望  作者: SUZU
3章:調律される日常
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調律される日常10

更新すごく遅くなりすみません_(;ω;`」_)_

ようやく忙しさが落ち着いてきたのに、また徐々に更新していきます!

 グレンがまとめた作物を、村人たちがせっせと倉庫へ運んでいく。 

 レミスとセリスもその手伝いをしており、小さな体で作物を抱えては何度も往復していた。

 自分たちも役に立てているのが嬉しいのか、その足取りは軽やかだった。



 一方、リュアとグレンは隣同士で並び、それぞれ魔法を使いながら作業を進めていた。



 「相変わらず、精密な魔法を簡単にこなすね。習得したばかりの魔法なのにさ」



 ニヤっとした表情で声をかけるリュア。その瞳には、好奇心と負けず嫌いな光が混じっていた。



 「コントロールの基礎はどの属性も同じだしな。それに俺は一度、リュアが薬草を刈り取る姿を見ているから、こういった作業はイメージしやすい」




 「……そういえば、そんなこともあったね」



 リュアは記憶を辿るように、軽く空を見上げた。

 グレンの脳裏にも、レーンハルでミリアたちと再会したときの光景が蘇る。

 あのときリュアが見せた風魔法は、風そのものが舞っているかのように繊細だった。

 その光景は、今もグレンの記憶に強く残っている。



 「魔法は術式や魔力操作も必要だが、イメージ力もものを言う世界だ」



 グレンは離れた場所の作物も正確に刈り取りながら続ける。



 「それを言えば、リュアの水の膜はよくイメージできたな。どこかで見たことがあったのか?」


 「あれはね、洗濯物を干すときのシーツのイメージ」



 グレンは予想外の言葉に首をひねる。



 「……シーツ?」


 「うん、風で舞うシーツをイメージしたらうまくいった。風の感覚と近かったのかもしれないね」



 笑顔でさも当たり前に言うリュアにグレンは困惑する。水とシーツという、かけ離れた二つを簡単に結びつける発想は、グレンには思いもつかないものだった。

 リュアが持つ才能もまた、自分とは違う形で並外れているのだろう。



 気づけば太陽は高く昇り、昼を過ぎていた。

 本来なら一日かけて行うはずの農作業も、二人の魔法によって午前のうちにほとんど終わっていた。



 丁度そのころ、採掘師たちも仕事を終え村に戻ってきた。

 それにいち早く気づいたのはレミスとセリスだった。



 「あ!リズだ!」

 「リズ!おかえりなさい!」



 そう言いながら二人はリズに駆け寄る。



 「ただいま。二人とも農作業を手伝ってたんだね」



 リズはえらいね、と二人に声をかけながら頭を撫でる。二人は嬉しそうにえへへと笑った。



 「おかえり、リズ。昼過ぎに帰れるなんて、今日はよっぽど調子よかったのかな?」



 遅れてリュアとグレンがリズの元へ向かった。

 リュアの問いにリズが頷く。



 「今日は地脈の流れが落ち着いていて、調整もしやすかったんです。だから、思ったより早く終わりました」



 そしてリズは畑を一通り見渡した。



 「農作業も、ずいぶん早く終わったんですね」



 「リュアねぇとグレンにぃの魔法がすごくてね!一瞬で終ったの!」

 「水が布みたいにふわっと広がって、風も一緒に踊ってるみたいでした!」



 レミスとセリスは身を乗り出しながら目を輝かせてリズに訴える。 そんな二人の勢いの良さにクスっとリュアは笑って見せた。



 「レミスとセリスも頑張ってたよ」



 「うん!私も頑張った!」

 「はい!私も頑張りました!」



 と腰に手を当てて自慢げに話すレミスとセリス。 そんな二人に、リュアもリズもはははと楽しそうに笑い、グレンも表情には出さないが穏やかにその様子を見ていた。



 しばらく和やかな時間が過ぎた後、リズが問いかけた。 



 「リュアさんとグレンさんは、この後の予定はどうするんですか?」


 「これから村の外れの広場で、魔法の訓練を行うつもりなんだ」



 リュアが答えると、それに強く反応したのはレミスとセリスだった。




 「魔法の訓練?!私も見たい!!」

 「私も見てみたいです!」



 それを慌ててリズが引き留めようとする。



 「こら、邪魔になっちゃうよ」



 だが、リズの反応とは裏腹に、リュアは



 「大丈夫だよ。見るくらいなら、全然平気」



 その言葉を聞いた瞬間、レミスとセリスは顔を見合わせる。



 「やったー!」



 二人は声を揃えて飛び跳ねるように両手を掲げた。



 だが、リズはどこか落ち着かない様子で視線を彷徨わせていた。

 何度か口を開きかけては閉じる。

 それに気づいたグレンが、不思議そうに声をかけた。



 「……リズ?」



 ただ名前を呼ばれただけだが、リズはびくっと反応してから、ははは……と苦笑いを浮かべる。



 「あんな風に言った後ですが……俺もちょっと、その……興味があって」



 そこまで言うと、少し照れくさそうに笑う。



 「……いや、かなり興味あるので、ご一緒していいですか?」


 「もちろん。レミスとセリスもそのほうが安心するだろうし」



 リュアは自然と笑みを浮かべる。



 「それに、人数が多い方が楽しいしね」


 「リズにぃも一緒に行こう!」 

 「いきましょう!」



 リズも一緒に行くことになって、レミスとセリスも嬉しそうだ。



 「ありがとうございます」



 少し照れながら、だけどはっきりとリズはお礼を言った。



 そんな中リュアは、じーっとリズを見つめ、何か考え込んでるようなグレンに気づいた。



 「どうしたの?グレン。そんなにリズを見つめて」



 リズもグレンの様子に気づき



 「やっぱり、訓練見に行くのまずかったですかね……?」



 と少し慌てたように尋ねた。



 「いや……」




 グレンもリズの問いを慌てて否定する。

 そのことで安心したリズはグレンの続きの言葉を静かに待った。



 「その……」



 そうして、グレンは目を反らしながら



 「鉱石を掘るときの魔力の使い方が、少し気になっていて……」



 リュアは「あぁ」と納得したような声を出した。



 「だから、リズのことをすごく気にしていたんだね」



 その問いにグレンはゆっくり頷く。

 落ち着きを取り戻したリズはくすっと笑いグレンに提案した。



 「サーキュリアの話はできませんけど、一般的な鉱石で、魔力の調整が必要なものもあります。その話なら、お伝えできますよ」



 あまり変わらないグレンの表情が、わずかに動く。



 「良かったら、訓練終わったら俺の家で鉱石の魔力調整やってみますか?」



 グレンはリュアの方にちらっと目線をやった。

 その瞳は、どこか新しい遊びを見つけた子どものように輝いてるように見える。



 「せっかくだから行ってきたらいいよ」



 リュアはそう言って微笑む。

 グレンが何かに興味を持って、自分から誰かに尋ねる姿は珍しい。

 そんな変化が、どこか嬉しかった。



 「……なら、お願いしていいだろうか?」



 「もちろん!」



 グレンは恐る恐る尋ねるが、そんな不安を書き消すかのように、リズは穏やかに微笑み肯定した。



 「そしたら、村の外に出て少ししたところにある草原にいこうか。あそこなら周りに何もないから魔法の訓練しやすいよ」



 とリュアがみんなを促すとレミスとセリスが真っ先に動く。



 「行こー!」

 「行きましょー!」



 元気よく駆け出していく二人を見て、リズとリュアは思わず顔を見合わせて笑った。

 グレンも小さく息を吐きながら、その後ろをゆっくりと歩き出す。

 皆の背中を追いながら、こんな時間を自分が歩むことになるとは、かつては想像もしなかった。

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