聖女様と王様の息子と
予定よりだいぶ遅くなってしまいました。
☆帝国の王子と、新キャラの方の王子が混同して同じ名前になっていたのを修正しました。
作者のポンコツっぷりがヤバイです。
「お久しぶりです、王様。」
その後、私たちは、部屋を片付けると軽いブランチを食べた後、のんびりと王宮に向かった。
快く迎えられ、王の前に立った瞬間頭を抱えた。
「で、質問なんですけど。」
「うむ。」
「何で、その子がここにいるんですかね?」
今回案内されたのは、玉座の間では無く、軽食の並べられた応接室。
王の横にちょこんと座って嬉しそうにクッキーを頬張っているのは……。
「やっほー!お姉ちゃん!」
ご機嫌な弟だった。
この間、帰ったよね?
「いや、な、帰る前にお守りを渡されたんだ。お菓子が気に入ったから、ティーナ殿には内緒でまた呼んでくれと。しかし、あまりにも強大な魔力故に、軽々しく呼ぶわけにもいかず、しかし呼ばないわけにもいかず、困っていたところ、たまたま来た70代の勇者のシンディ殿が手伝ってくれるというんでな、先日呼んでみたんだが。」
「帰らねぇんだよ、このガキ。」
ドアを開けて現れたのは、魔王城で何度かみたことがある、70代の勇者その人だった。
「あ、シンディばあちゃん!」
エミールは、嬉しそうにシンディに抱きついた。
いつの間に仲良くなってんだよ。
「まったく、魔族の孫なんて持った覚えはないがね。」
「ねーちゃん、この人すごいんだぜ、俺より剣の扱いうまい!」
「当たり前だろう、こちとら何年勇者やってると思ってるんだい!10年程度しか生きてないようなヒヨッコに負けるわけないさね。」
エミールの頭をグリグリしながら、楽しそうに戯れていた。
この様子だけ見ると、本当に孫とおばあちゃんのようだが、勇者と魔王の息子という、絶妙の組み合わせなんだけど。
「あ、こう見えてシンディ殿も穏健派でな。魔王と戦うことはともかく、出兵には長年反対しておる。」
王様は、呆然とする私たちに慌てて取り繕った。
だが、私としては、魔族がこうやって受け入らられている事実がそもそも理解の範疇を超えていたのだ。
「俺も勇者なんだから、負けないけどね!」
「ふん、10年してから出直してくるがいいさ。」
えーっと、私何しに来たんだっけ?
「エミール様、ダメでしょう、勝手に遊びに来たら。魔王様たちに怒られますよ?」
「ちゃんと父様と母様には、姉様の所に行ってくるって言ってあるもん。」
親も甘すぎだよ?10歳の子供を泊まりがけで遊びに行かせるなんて。
まぁ、エミールや私を殺せる人間などいないという自信があるからこそ、外に出してくれるのだろうけど。
「しかしまぁ、魔王の息子が勇者だなんて世も末だね。この間手合わせした時、勇者の魔力を使って攻撃したってのにケロっとしてやがった。単純な技術の差で勝てるからいいものの、こいつが王になる時代なんて考えたくもないよ。」
「ふふん、すぐに追い越してやるからなー!」
「はいはい、追い越してくれるまでせいぜい長生きするさ。」
現状エミールを含めて勇者は5人いる。
30代の勇者クラウスと、50代の勇者ラルフと、70代の勇者シンディ、90代の勇者トルゲ。
父様の話によると、全盛期の強さの順に並べるなら、シンディ、ラルフ、トルゲ、そしてクラウスだ。
トルゲが90代になり、かなり老いたとはいえ、正直あのクラウスになら今でも勝てるのではないかと思えるほどクラウスは弱い。
エミールはおそらくまだ、ラルフに勝てないだろう。
「まったく、あのヘタレな魔王に息子がいるのは聞いていたが、まさか勇者だとはね。」
シンディはとても嬉しそうだ。
昔馴染みの子供達に会ったかのようで、とても敵対している勇者とは思えない。
「何故、勇者であるあなたまで、魔族を擁護するのですか?」
「擁護なんてしていないよ?気の合う喧嘩仲間が、たまたま魔族で、その種族に対して嫌悪感がないだけだ。本当にあいつと来たら、戦いはいいが殺し合いはしたくない、というのが口癖でね。あいつと関わっていれば、魔族を嫌いになんてなれるもんかね。」
「あ、あははは。」
ホント、父様はヘタレだからなぁ。
勇者と仲良くしようとし過ぎだろ。
ラルフとは、よくお茶してたとかいうし。戦えよ。
「シンディばーちゃん、また稽古つけてー。」
「やれやれ、老人はいたわるものだよ。どんな育て方をしたら、70過ぎたババアと剣を交えようとするのかね。」
そう言いながら、心底嬉しそうにシンディはエミールを連れて部屋から出て行った。
後ろに控えていた、騎士団長がボソリと、
「現役の指南役がよく言うよ。」
と、呟いていたが。
エミールがいると、このままでは話が進まないことを気遣って連れ出してくれたのかもしれない。
「さて、うちの弟がどうもすみませんでした。」
「いや、既に数回助けられとるから、わしらとしても国賓扱いをしとるとこなんだがな。」
「助けられた?」
「最近、帝国の出兵依頼に対して、やんわりと延期を提言したせいか身の回りに怪しいやつらがウロついててな。そういう奴らをサクッと捕まえてきてくれるんで、助かっとる。」
「あら、もう帝国に疑われ始めましたか?」
「いや、もともと我々は消極的で、穏健派だからな。帝国からは常に目をつけられているだけだよ。」
そう言って笑っているが、なかなか危険な状態なんじゃ?
帝国から多少離れているとはいえ、敵対した国は悉く滅ぼされていると聞く。
この国が滅ぼされるのは嫌だなぁ。
「大丈夫なの?」
「これでも、商業国家として栄えているからな。経済の拠点としては、崩すわけには行かない部分があるのだろう。ボルマン商会の影響力も大きい。力任せに責められないからこそ、怪しい奴がコソコソ嗅ぎ回っている程度で済んでいるのだろう。」
「魔王領に隣接しているのは、このナルノバ王国と隣の軍事国家ミルド王国だけだ。魔王領に攻めるにあたっての拠点としては、ミルド王国と同盟を組み、使用しているからな。このナルノバ王国を軍事のために使い潰すつもりは無いのだろう。」
王の言葉に、大臣が続ける。
「だが、そう長くは持たんだろうな。」
「本当に聖女が殺され、勇者が拐われてるなどと思っているわけではなかろうに。なぜそこまで執拗に攻めようとするのか。」
「ああ、そういえば、それが呪術なんじゃないかとか、竜帝の娘が言ってたね。」
「呪術だと!?」
王がガタンと立ち上がると、私に詰め寄ってくる。大臣も食い入るようにこっちを見つめていた。
「えっとね、戦う強い意志と、恐怖と、そして魔力を持った人間を魔王領で殺すことによって、魔力の濃度を操作してる可能性と、大量の生贄を用意して、何らかの呪術を行なっている可能性をあげてたかな?」
「なんと……。そんなことができるのか?」
「私たちも詳しくは知らないけれど、魔力は、死んだ場所から自然に還ると聞いたことがあります。」
「なんと……。そんな事があるのか。少なくとも、我々は聞いた事がない。死ぬ場所と魔力の還り方の関係はともかく、呪術だとすれば、あの土地は何十万という命を吸っていることになる。どれほどの呪いが出来上がるのか、想像しただけでも恐ろしい。
何故、そんな簡単な可能性に行き着かなかったのだろうか。魔王の討伐が不自然ならば、それ以外の可能性をもっと考えるべきであった。すまないが、私はここで失礼いたします。」
大臣は、1秒でも時間が惜しいと言わんばかりに、形式だけの礼をするとそのまま部屋から出て行った。
「あいつの口調があれほど乱れるとは。余程危険があるのだろう、許してほしい。しかし何故だろう。エミール君がきて、君たちが来て、何故か頭がスッキリしたような気がする。長年の悩みが解消しつつあるからだろうか。君たちには、感謝の……。」
私たちが来て、頭がスッキリ?
簡単な可能性に行きつかない?
「お嬢様、解呪してください。」
ゼルが私と同じく、ある可能性に行き当たったのだろう。私は頷くと、聖女の魔力を練り上げ始めた。
が。発動しようとしたその時、私の前に小さな手が伸びてきた。
「ダメでしゅ。呪いにマーカーがついてましゅ。」
遮ったのは、ヒメだった。
「ティーナ殿、その子は?」
「ちょっと訳ありで預かっている古竜の娘さんです。魔力に詳しかったり、嘘を嗅ぎとる力があったりするみたいなんですけど……。マーカーって?」
何が起きてるのかわからない王様と騎士団長は顔を見合わせている。
「王様たちには、わたくちが気づかないくらい巧妙に、ほんの小さな呪いがかかってるでしゅ。」
「の、呪いだと!?」
「おそらく、魔王討伐に関する事象に対しての考えをほんの少ち鈍らせる程度のものたとおもうのでしゅが、それより、その呪い自体にマーキングがされてるのが気になるでしゅ。」
そう言いながら、ヒメは王様の首あたりを見上げた。
「識別番号が振られてる感じでしゅね。その対象が死んだり、解呪されたら、術者にバレるでしゅ。」
「そんな事があり得るのか……?」
王様は、自分の首元を撫でながら、顔をしかめた。
流石に自分に呪いがかかっているなどということは信じ難いのだろう。
「おそらく、マークをつけた人に対して遠くから呪いを放出しゅることで思考を鈍らせている感じでしゅね。わたくちたちの様に、魔力の多いものが集まったせいでノイズとなり、放出されている呪いを一部遮ったことによって、思考がクリアになったのでちょう。なので、私たちがあまりここに長く集まりすぎるのも良く無いかもちれまちぇん。」
「そんな……。」
下手に呪いを解くと、どこにいるかもわからない相手に筒抜けになる。しかも、聖女にしか解けない呪いとかだったりすると、私の存在までバレてしまうでは無いか。
「うーん。やっぱり、このままじゃだめね。」
「なの。早く調べて、解決着ないとだめなの。」
「で、王様、協力してくれる人は見つかりました?」
私が見ると、困ったように目をそらす王様。
え、見つかってないのに呼ばれたの?
「いや、その、やはり、魔族という種族を明かした上で、協力してくれて、それなりの戦力になる人材というのがだな、なかなか……。」
私の視線に、しどろもどろになりながら応える王様。
協力者が見つかったから呼んだのではなくて、エミールの扱いに困って呼んだのか。
と、突然ドアが派手に大きく開かれた。
まぁ、防音の魔法をかけてあるので、あたりに音が響くってことはなかったけど。
「父上!いい加減に認めてくれよ。協力者になれば聖女様に同行できるんだろ!?」
「これ、アレクシス!勝手に入ってくるんじゃ無い。」
大声を張り上げながら入って来たのは、王によく似た青年だった。
切れ長の目と、長髪が美しい。いわゆる美形の王子様だ。
その後ろから、めんどくさそうにもう1人。
「大変申し訳ございません、陛下。アレクシス、黙れ、勝手なことするな。殺すぞ。」
「……仮にも王子だけど、俺。」
「あ、いや、バカに継承権はないと勘違いしてしまいました。失礼。」
全然謝る気ななさそうな男。こちらは短髪だが、透き通るような金髪と金にも見える茶色の目が美しいイケメンだった。
「ジークハルト。お前、いつ首をはねられても知らんぞ。」
「あ、父上。大変失礼いたしました。さっさとこのバカを処分します。」
どうやらこっちは騎士団長の息子のようだ。
王様は、その様子を見ながらため息をついた。
「いや、この騎士団長の息子を協力者にしようとしたのだが、息子が、自分も行くと言って聞かなくてな……。」
遠い目をする王様。
確かに、人間で、20歳も超えていて、身分も保証できる相手だが、クセが強すぎないか?
あと、王子って常識持ってる?私が言うのもなんだけど、大丈夫?
不安しかない追加メンバーです。
ブックマークや感想等いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願い致します。




