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聖女さまは魔王を守りたい  作者: 朝霧あゆみ
聖女様と人間の国
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聖女さまは逃げ出したい

遅くなりました。

やってしまった。


いや、ある程度はバラそうと思っていたし、信頼できる人間の協力者は欲しかった。


しかし、酔っ払ってここまでメチャクチャやってしまうとは。

15歳になって成人して、少し口をつけたことはあっても、がっつり飲んだのは初めてだったからな。

目の前でエリクサー作ったり、魔王召喚したり、ドン引きじゃない?


「えーっと、みんなで全部忘れよう?やり直そう?」

「うーん、流石にそれは無理じゃないかしら?」


私の提案に、クリスタは苦笑する。

ですよね。


「しかし、何事も無かったかのように去っていったが、魔王だろ?一応、人類の敵だろ?」

「年頃の娘を持つただのおっさんにしか見えなかったな。」


今更、恐怖でも感じたのだろうか。

ウーリとヴァルターは、発言とは裏腹に、お互いに顔を見合わせてプルプルしていた。


ヒメとハンナは、我関せずといった様子で、二人でジュースを飲みながら揚げ物をつまんでいる。


「そんな事より、ティーナちゃん。貴女、貴女って子は!」

「そうだよ!魔王が衝撃的すぎて忘れかけたが、光る魔力で特級回復薬(エリクサー)を作るなんて芸当が出来るのは、聖女しかいないんだろ!?」


がっつり詰め寄られてしまった。

そうですよね、そうなりますよね。

すでに帰った魔王よりも、目の前にいる聖女の方が、現実的ですもんね。


「えーっと、そのね。」


キョロキョロと辺りを見回す。

防音や魔力遮断の結界を張っているが、そもそも私の作った異空間の中だ。覗ける者などいない。

ゼルは、思考放棄して、狸寝入りしているし、私の判断で話してもいいよね、もう。


「そう、私、聖女なのよ。」

「おおおお!!マジで!世界中が血眼になって探している聖女!確か、報告するだけでも一生遊んで暮らせる報酬がもらえるとか。」

「やめとけ、そんな事、考えただけで消されるぞ。魔王の娘だろ?」


私が認めた途端、興奮するヴァルターと何とも言えない表情を浮かべるウーリ。


「確かに、私たちに不利になるようならやるけど。」

「ハンナも、ティーナちゃん守るの。」

「わたくちも、諸事情で聖女さまが必要なのでち。ウーリ様を手にかけるわけにはいきましぇんが、ヴァルターしゃんはとりあえず口封じちてもいいでちゅ。」

「何だよその差別待遇!」


突っ込むヴァルターだが、顔は笑っている。

そもそも、金のために人を危険に晒すつもりはさらさら無いのだろう。

そういう人たちだとわかってるから、私も正体を明かしたのだけれど。


「つーか、最初にくれた特級回復薬(エリクサー)も、間違えたんじゃなくて、わかっててくれたってわけか。」

「ええ。せっかく知り合ったんだし、プレゼントのつもりだったのよ。」

「俺たちにはありがたい話だが、そういう迂闊なことやめた方がいいぜ。正体がバレたら、かなりの血が流れることになる。それほどまでに、聖女は貴重なんだ。世界情勢が変わるほどな。」

「ええ、国同士での奪い合いももちろんのこと、魔族領にもきっと、相当な影響があるわ。」

「ううっ。心に刻んでおきます。」


迂闊、か。

ほんとそうよね。

最初は何も考えずに渡してしまったけど、それでバレて仕舞えば、私を捉えようとする人たちもいっぱい来るだろうし、魔族のみんなも危険に晒してしまうかもしれない。


「そうだぞ。言いなりにするために人質を取ることなど厭わないだろうしな。特に魔族相手なら、どれだけ殺そうとも、何の問題もない、と、思ってる連中はいっぱいいるんだ。」

「はい……。」


大人たちによるお説教大会になってしまった。

しかし、本当にこの人たちは、お節介で、優しくて、いい人たちだなぁ。

人間て、利己的で、即物的で、残虐で、非道で、なんて言われているけど、これっぽっちも感じられない。


「なんかあったら、頼りなさい。」


私の目を見つめ、クリスタは言った。


「そうだぞ、年上には、遠慮なく頼るもんだ。」

「ま、大した力にはならないかもしれんがな。」


左右から、私の肩に手を乗せるウーリとヴァルター。

私を騙すための演技だとすれば、くさすぎる。

利用価値の多い聖女を騙して売るには、信用させるのが一番だろう。

でも、私は彼らを疑わない。

こういうのを、あっさり信じてしまうから、私は騙されやすいとか迂闊だとか言われてしまうんだろうけど、それでもやっぱり、とても嬉しいものだなぁ。


「うーん。大丈夫、黒く無いでしゅ。」


私が、嬉しさと、疑った方がいいのかという不安で一瞬ためらうと、竜娘(ヒメ)が呟いた。


「黒い?」

「古竜は、相手の発汗や声の震え、声のトーンなんかで、嘘を見抜くんでしゅよ。明らかに嘘をちゅいてると、黒いオーラみたいなのが見えるでしゅ。でも、何も見えないでしゅ。それどころかウーリ様は輝いてるでしゅ。

これで騙されてても、相手の嘘が上手すぎたってことでしゅ。」


ウーリが輝いてるのは、恋は盲目(ヒメフィルター)のせいだと思うけど。

古竜って面白い能力持ってるんだなぁ。


「そっか。ヒメちゃんのお墨付きもらっちゃったし。」


私は、3人に向き直ると、近くの二人の手を取った。


「ありがとうございます。私達は、人間と仲良くしたい。魔王城にたどり着くことなく死んでいく多数の人間を見たく無いし、魔王と戦いたくも無いのに、人質を取られたりしながら死に物狂いで来る人間を減らしたいのです。」

「人質って……。」

「有名な勇者では、ラルフさんとかですかね。他にも、家族や友人を人質にされながら来る人いっぱいいるんですよ。」


別に、魔王の力や権力を欲して倒しに来るのは仕方ないかもしれないけど、そうじゃない討伐は見ているこっちも辛い。


「うーん、最近は帝国の動きも変だからな。こっちでも、少しくらい調べてみるさ。」

「そうね。帝国の動きを調べるくらいなら、多少はできるわ。」

「皆さん……。ありがとう。」


その辺りで、目の前に並ぶ100本近いエリクサーが目に入った。


「これ、要ります?」

「……。」


置いて帰るわけにもいかないが、私のボックスにもアホみたいに在る。

正直邪魔なレベルだ、が。


「いや、一つ二つなら、確かに命綱として欲しいが、こんなにもらってもなぁ?」

「ええ、下手に売ると命にも関わりそうだし。」


ですよね。


「でもよ、一個金貨500枚レベルだろ?それがこの量。もう、桁が違いすぎて分からんレベルだぜ。」

「うーん。私たちが持ってても仕方ないから、良ければ適当に分けてください。人前で出さなければどうにでもなるとおもうわ。多分。」

「そういうところが、迂闊なのよね。人を信じすぎてはダメよ。」


私のセリフに苦笑すると、クリスタは適当にエリクサーをアイテム袋に仕舞った。


「ま、くれるってんなら、貰うか。」

「持ってて損になるものではないしな。」


1人20本前後ずつ受け取り、残りはハンナとヒメで分けてもらった。


「在庫過多なの。」


ポーチに仕舞いつつ、ハンナは言った。

そんな感じで、私たちの宴会は、幕を閉じたのだが。


突然強い光が辺りを包んだ。

これは、召喚の時の光!?


「え、何!?」


私達は、全力で警戒の姿勢をとる。私の作り出した空間に、他所から転移してくるなんてそうそうできることではない。

一体何が起きたの!


光は、気絶しているゼルを中心に溢れているようだ。

ゆっくりと光は人型を取ると、その場に跪き頭を下げた。

このシルエットは……。


「ご機嫌麗しゅう、お嬢様。」

「ロベルト?」


うちの回復職筆頭で、秘書や執事みたいな仕事をしている頼るれおじさま、ロベルトが、突然この場に現れたのだ。


「え……?」

「あ、こちら、ゼルの父親でロベルトと言います。」

「初めまして、皆様方。以後、お見知り置きを。」


全員が、どうしていいか分からずにフリーズしていた。

なぜこのタイミングで。


「いえ、うちの息子が何故か意識を失っているようで、お嬢様に何かあってはいけないと思い馳せ参じたのですが。どうやら、ただ気絶しているようですね。」


ゼルを、なんとも言えない表情で見つめると、ため息をついた。


「ロベルトって、あのロベルトさん!?」


ウーリが声を上げた。ああ、そう言えば、ウーリは王様から父親の最後やロベルトの話を少し聞いてるんだっけ。


「あの、か、どうかは分かりませんが、ロベルトと申します。」


ニコニコと、とてもいい笑顔。

ゼルに向ける蔑んだ視線とは違いすぎてギャップが怖い。


「ん?フェリックス?」


だが、ウーリを見た途端、眉をひそめた。

首を傾げながらジロジロと彼をみる。


「へ……?何で俺の父親の名前を知ってるんすか!?昔の魔王討伐の進軍で死んだ父を……。俺が生まれる前に死んでいるのに!」


当然ながらウーリは声を荒らげた。

フェリックスとは、ウーリの父親だ。

王様が、助けられなかった1人の兵士。


「ああ、息子さんですか。いえ、彼は生きていますけど。」

「なっ!?」

「昔戦場で拾いました。本国に帰れと言ったのですが、魔族に助けられて生きながらえたことが知られたら、嫁や子供が危ないから、と、それ以降ずっと魔族領で暮らしていますよ。自分はもう死んだ人間だから、と。」


急に衝撃の事実ブッ込んでくるなぁ。

ロベルトって、本当によく分からない。


「お嬢様のお友達でしたら、魔族に抵抗はないんですよね?でしたら、是非会いに来て下さい。お母様も一緒なら、尚更彼も喜ぶことでしょう。」

「あ?ああ……??」


混乱しているウーリをよそに、ロベルトはいった。


「心配して来たものの、どうやらうちのバカ息子は気絶しているだけっぽいですし、とりあえず今回は帰りますね。では、また。」


そう言って、ゼルの背中に何か魔法をかけると、にっこり笑って消えていった。


「意識を失うと発動するようになってる召喚魔法陣てこと?」

「そうみたい。」


謎の父親襲来を終えて、私達は呆然としていた。


「魔族って、過保護なんだな。」

「ゼルの場合は、過保護というより、私を心配してるっぽいんですけどね。」


そんなこんなで、異空間を解除すると、気絶しているゼルにエリクサーを飲ませ、叩き起こす。


「さ、酔わない程度に飲み直すか。」

「大人って……。」


呆れ顔の子供を置き去りに、私達はお祭り騒ぎを朝まで続けたのだった。


いつもありがとうございます。

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