最初で最後の異世界人生END
ライルとリズの二人にオスカーの町を案内してもらってしばらくたった頃、私は1つの結論にたどり着いた。
「面白そうなものが全くない」
町の大通りに沿って歩いてみても目につくのは基本的に建築中の建物であちらこちらから工事の音が聞こえてくる。
さらに完成済みの建物であっても大半は工事関係の建物や食料品店等で娯楽施設の類なんてものは全く無かった。
「ねぇライル、何かいい所ないの?」
困った時のライル頼り、きっと何とかしてくれるはずだ。
「ん?じゃあ教会でも行くか?」
「おぉ、教会とかあるんだ?」
「あぁ、俺達もたまに遊びに行ったりするしな」
「シスターのお姉ちゃんがお菓子くれるんだよ!」
「たまに、だけどな。どうする?行くか?」
「うん、シスターさん見てみたいし」
そしてあわよくばお菓子を貰いついでにお茶も貰えればいいなぁ、なんて思ったりして。
町の大通りから外れ路地裏を歩いてしばらくして私達は教会に着いた。
教会は真っ白な石造りの建物で木の門の上に若葉マークが刻まれていた。
なんとなく予想がついたけどスルーしてとりあえず1枚パシャリ。
そういえばどっかの国だと彫像と同じポーズして写真撮ったら罪になるとかあったよね?この世界もそんなのあるのかな?とか考えつつ教会の中に入る。
中はよく結婚式のCMであるみたいな木の長椅子が並んでて奥にはステンドグラスからこぼれる光に照らされた真っ白な彫像が1つ。
その彫像に近づき見てみると
「あー、やっぱり?」
その彫像は私を跳ね飛ばした犯人、つまり若葉マークの神様の彫像だった。
ただ1つ違う点があるとすれば
「盛ったな」
何がとは言わない、本人はもう少し貧相だった、ただそれだけの事よ。
「じゃあ俺シスター呼んでくるから」
そう言ってライルは奥にある扉を開けて行ってしまった。
「あ、そうだリズ」
「なーに?」
「この神様の名前って分かる?」
そういえば名前聞いてなかったなぁと思いリズに聞いてみるとー
「・・・・えっ!?……もしかしてお姉ちゃん知らないの!?私よりちっちゃい子でも普通に知ってるよ!?」と本気でびっくりされた。
やめて!私の方がお姉さんなんだからそんなかわいそうな子を見る目で見ないでー!
…………若葉マークの神様の名前はアリステラというそうです……、リズ先生に懇切丁寧に教えて頂きました、はい。(´・ω・`)
若葉マークの神様アリステラはいわゆる創造神という奴だった。
はるか昔、まだ人々が魔獣(魔術が使える獣がこの世界にはいるらしい)と戦う術を持たずに困り果てていた時に空から光の柱を立てて降臨したのが若葉マークの神様アリステラ、そこでアリステラは自身がこの世界の創造神であると人々に伝え更に魔獣に対抗する為の魔術を教え広めたのだという。そして今では教会で創造神として祀られている、というわけだ。
「ライル遅いね」
リズ先生による神様講座で結構な時間が経っているはずなのに未だにライルが帰ってこない。
何かあったのだろうか?
「ちょっと見に行ってみよっか」
ライルが出ていった扉の先は通路になっていた。
途中いくつか扉もあったけど勝手に開けて叱られたりしたくはないので触れないでおく。
「ライルー、どこー?」
「お兄ちゃーん」
リズと一緒にライルの名を呼びながら通路を進んで行くと扉が開けっ放しになった部屋を見つけた。
もしかしたらライルがいるかもしれないと思いその部屋に近づいていく。
「ライルいるー?」
声をかけ部屋を覗き込もうとした瞬間、部屋の中から手が伸びてきて勢いよく引っ張られた。
急に引っ張られたせいで私は部屋の中にヘッドスライディングみたいな体勢で倒れ込んだ。
ドスッ…!
「ぐへぁッ!?」
そこに手を繋いでたリズも一緒に倒れてのしかかって来た。
「わざわざそっちから来てくれるとはな、おかげで手間が省けたぜ」
ヘラヘラと笑うような声が上からかけられる。
その声にとてつもなく嫌な予感がした。
まず状況判断の為に顔を上げて部屋の中を見渡す。
まず目の前に先程の声の主と思わしき男の足が、その先に男の仲間?かと思われる男二人とその足下に猿ぐつわをされ身動きが取れない様に縛られた修道服の女性とライルが転がされている。
嫌な予感が確信に変わった。
たぶん誘拐犯とかそういうのだと思う。
「逃げれると思うなよ?」
更に後ろから声がしてガチャリと扉に鍵をかけられる。
前と後ろで二人、更に奥に二人、その足下にはシスターとライルが縛られて行動不能、そして倒れてる私とその背に乗ってるリズ。
ふぅ…、と息を吐きリズに降りるよう促してから立ち上がる。
それから覚悟を決めて目の前の男をキッと睨みつける。
「そんな顔しても全然怖かねぇなw」
「でしょうね」
「で、どうするんだ?そこの坊主みたいにひと暴れするか?」
「いいえ」
「じゃあどうする?大人しく捕まってくれたら俺達としても楽なんだがな、ハッハッハ!」
「あなた達全員倒してハッピーエンドなんてどう?」
「あ”?」
「全員吹っ飛べ!(サイコキネシス!)」
転生の際にアリステラから貰った力『超能力』、その代名詞とも言える力 念動力を発動し男達だけを吹き飛ばす。
男達はそれぞれに背や頭を打ち付けて呻いている。
その隙にリズの手を取り
「いいリズ、すぐに助けを呼んできてね?テレポーテーション!」
瞬間移動で家に送り飛ばした。
まずは1人!
「次!」
リズを飛ばし次はライルに駆け寄り念動力で無理やり猿ぐつわと身体を縛ってる縄を引きちぎる、男達はまだ動きそうにない。
「…っぷは、おいノゾミお前……!」
「話は後!良いから人呼んできて!テレポーテーション!」
「おい……!?」
ライルもリズと同じく瞬間移動で飛ばす、後は……
「ラストォ!!」
ライルと同じ様にシスターの猿ぐつわと縄もを引きちぎる。
「それじゃ飛ばします、テレポー……」
「後ろ!!」
「え?」
シスターを瞬間移動で飛ばそうとした時、背中に深く焼けた様な熱を感じた、そして次の瞬間その熱は激しい痛みとなって私に襲いかかってきた。
斬られた、ただなんとなくそれだけは理解出来た。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃ!!!???)
背に走る痛みに声も出せずじたばたとその場でのたうち回る。
そんな私を守る様にシスターが男達の前に立ち塞がった。
「こんな小さな子になんて事をするんですか!!」
「ア”ァ”!?先に手ぇ出したのはそいつだろうが!!」
「それでも斬りつけていい理由にはなりません!!」
「うるせぇ!てめぇも同じ目にあいたいかァ!?」
キレた男はシスター目掛けて血濡れた刃物を振り下ろした。
「きゃあぁぁぁ!」
振り下ろされた刃物がシスターを捉える寸前にシスターの姿が消える。
振り下ろされた刃物は宙を切る。
それに男は一瞬呆けた後気を持ち直してすぐさま原因を睨みつける。
男の視線の先には足下に血溜まりを作り痛みに顔を顰めながらも立ち上がる希の姿があった。
「……やらせ…なぃ…から…」
「てんめぇ……!」
ーーーーーーーー
ドンドンドンドンドンドン!!
ドンドンドン………バギィン!!
鍵のかかった扉が街の男達の手で叩き壊される。
それぞれが思い思いの武器を手に部屋に雪崩込み一斉に武器を構える。
しかし警戒心に溢れた街の男達は室内の様子に皆困惑を隠せずにいた。
部屋の中には気絶し全身雁字搦めに縛られ宙に浮く四人の男達と血溜まりの中座り込み俯いている少女が一人。
その光景に街の男達が動けずにいる中をかき分けて少女、もとい希に駆け寄る影が二つ、ライルとリズである。
「おい!おい!?」
「お姉ちゃん!?」
血に濡れるのも構わずに駆け寄ったライルとリズが希を揺さぶる。
「………ん、……な…ぁに……?」
二人に揺さぶられゆっくりと顔を上げた希、その顔色は多くの血を流した事で蒼白となっておりまた視界も定まっていないようだった。
「ノゾミ!大丈夫なのか!?」
「よかったーー!」
「…おわっと、……はは、痛いよ…リズ」
ギュッと抱きついて来たリズを倒れないように受け止める、その時に少し背中が痛んだがそこまで痛みを感じなくなっていた、というよりは全身の感覚がどんどんと薄れているように思えた。
「あー……、えっとお嬢ちゃん、スマンがアレがどういう事か知っていたら教えてくれないか?」
ライルとリズ、二人と共に来ていた街の男性の1人が宙に浮かぶ男達を指さして聞いてきた。
「……あぁ、いま……おろし…ます」
ドサリと宙に浮いていた男達が床に落ちる、それを見ていた男性が希を少し怪しむように見る。
「説明してくれるかな?」
「……はい」
希は、教会に来た理由、その後ライルとシスターが捕まっていた事、希とリズも捕まりそうになった事、そして超能力で皆を逃がして男達を倒した事を伝えた。
男性は全て信じた訳では無いがここに着くまでにもライルとリズからある程度の事は聞いていた為そうなのだろうと一応の納得をした。
それから誘拐犯(仮定)達が街の男達に連行されるのを見送った。
今回の事でライルとリズに怪我が無くて本当に良かったと思う。
「……じゃあ……、かえ…ろ……うか、リーザ……さん、心配し……る、だ………う……し?」
……あれ?
「どう……んだ?」
あれ?ラ…イルも、声がなん…か変だよ?
「お……ゃ…ん?」
リズも?二人ともど…うしたの?ハッ、まさ…か何処か怪我して……る!?ぁゎゎ、どうし…よ……どうしよ…
「……………………………………………………」
あれ?今私喋ったよね?なんで……聞こえ…ない……の?……あぁ、つ…まり、そうい……うこと、なんだ……ね
「ノゾミ?おいどうした!?ノゾミ!返事しろ!!」
だか……ら、聞こ……えな…いん、だっ……てば
「お姉ちゃん!?起きてってば!!お姉ちゃん!!」
で…も……、せ…めて、…さ…いご…、くらい……は
最後の気力を振り絞りゆっくりと瞳を開くと目の前には泣き顔のリズとうっすらと涙を浮かべこちらを見るライルの姿があった。
「………………」
希は二人を安心させるように笑みを浮かべ、その命の終わりを迎えた。
そして残ったのは、物言わぬ骸を抱え泣き続ける子供の姿だけだった。
金江 希 死亡
どうも書き方の安定しない作者です
主人公死にました
一応失血死という体で。
死描写わかりやすくかけているでしょうか?
表現とは核も難しいものです。
それではここまで読んでいただきありがとうございました!!




