10/38
3.嘘つき少女とフェアリーテイル 1
「ねえ。ルゥアが見える人は、みんなノクターになれるの?」
ぽつりと呟いたレネの言葉に、エリアスが振り返る。熱気を含んだ夏の風が、二人の間を吹き抜けていく。一瞬足を止めた彼は、うーんと唸り声を上げた。
「素質はある。そもそもルゥアが見えなきゃ、何を癒せばいいのかわかんないだろ?」
レネは再び歩き出したエリアスの隣に並び、静かに指先を見つめた。
初めて触れたルゥアが、小さな少女の悲しみを伝えてきたときの感覚を思い出す。
「けど、素質があるからといって、誰でもノクターになれるわけではないと思うんだよな。見えたとしても、人の悲しみに寄り添うことができない人間も、中にはいるからな」
「……ん」
自分は、寄り添える人間なのだろうか。
ふと湧き上がった疑問に、レネの足が重くなる。
だって、私は……。
少しずつ開いた距離に、エリアスが振り返った。
「レネ?」
心配そうな声に、レネは慌てて前を向く。エリアスの視線が動いて、レネの肩の辺りで一瞬止まる。
「大丈夫か? 疲れただろ」
気遣いの滲むエリアスの言葉に、レネは首を振って再び足を前に出した。




