シエラ参戦 ~首都『カームクラン』視点~
・・・・・・・。
シエラがリルヴァの魔弾を退けた様子を見て、地上の人々は皆が呆気にとられていた。
「某は・・夢を見ているのか・・・!?今、『邪神』の魔弾が弾き返されたように見えるのだが・・!?」
「妾も見ておるから間違いなく現実じゃの・・・じゃが、あの御姿はどう見ても『女神様』ではないかえ?見たところハーティさんではないから・・新たな『女神様』が顕現なさったということかの・・・?」
「ああ・・・きっとハーティルティア様に連なる至高の『女神様』に違いない・・某達を・・・『カームクラン』を救ってくださるのだ・・!?」
シゲノブは感動に咽び泣きながら、地に膝をついて『最敬礼』を行う。
それを皮切りに、連邦軍の軍人達すべてが一斉に祈りを捧げ始めた。
・・・・・。
・・・・・・・・。
「っ!?あれは!!!『女神様』!!!!」
「おお・・・おお・・なんと・・我々を御救いになられるのか・・・!!」
「「「「ワァァァァァ」」」」
一方、中央広場に集結していた『神社庁』の神官や巫女達も一斉に『最敬礼』を行って祈りを捧げていた。
敬虔な『女神教』信者である『神社庁』にとって、窮地を救う為に現れた『女神様』は自らの全身から喜びを溢れさせる存在であった。
そして、シエラの事を新たな『女神』と判断した『カームクラン』の人々は、絶対的な絶望から一瞬にして希望を与えられたと大いに喜んでいた。
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
(ほむら・・は・・夢をみているんでしょうか・・・?)
いよいよ死が近づいて視界がぼやけていく中、ほむらにはシエラの放つ白銀の光だけが煌びやかに映り込んでいた。
「・・・・!?」
一方、シエラは徐に見下ろした先にある地上に出来た巨大なクレーターの中心で横たわる少女を見つけて目を見開いた。
ドゥン!
そして、シエラは素早くほむらの傍へ降り立った。
「だ、だいじょうぶですか!?」
シエラは降り立ってすぐにほむらを抱きかかえたが、全身を酷く損傷している彼女は返事をすることもままならない状態であった。
「っ!?たしかここに・・・」
シエラは抱きかかえた少女が死にかけていると判断すると、身に着けていたポーチから掌に収まるくらいの大きさをした白銀色の楔のようなものを取り出した。
「っえい!!」
プシュッ!
そして、手にした楔の先端をシエラの素肌が露出している首元に躊躇なく突き刺した。
パァァァァァァ!!!
その瞬間、ほむらの全身が眩い白銀の光に包まれる。
すると、まるで時間を逆戻しにするかのように、ものの一瞬でほむらが負ったあらゆる傷が修復されていった。
「う・・・ん・・・」
やがて白銀色の光が収まると、ほむらはゆっくりと意識を取り戻していった。
がばっ!
「・・・これは!?ほむらの傷が!!!?」
ほむらは意識を取り戻して勢いよく状態を起こすと、自身の両掌を驚いた様子で確認していた。
「回復してよかったです。この楔は神白銀で出来ていて、表面にびっしりと『上級治癒魔導』の魔導式が刻まれているんです」
「ですから、私みたいな人間ですと、触れるだけで自動的に刻まれた魔導が発動するようになっています」
「私は魔導を自力で発動することが難しいので、治癒対象を定める為にこの楔をあなたに突き刺したんです」
ほむらはシエラの言葉を聞いてきょとんとしながら数秒固まると、素早く飛び退いて『最敬礼』を行った。
「めめめめ女神様!!!ほむらの窮地を救って頂いてありがとうございます!!!女神様に救って頂いたこの命!決して無駄にはしません!この身が朽ち果てるまで!益々信仰心を高めていく所存です!!!」
「あわわ・・・ちょっと、私は『女神様』じゃないです!!帝国で宿屋を切り盛りしている普通の女の子です!?」
「さささすが女神様・・・御冗談がすぎて矮小な人の身であるほむらには理解が追い付きません!!」
「だから、冗談じゃないですってば!!」
ググ・・グチュチュ・・・。
しかし、二人が汗を飛ばしながら会話している間にも、上空ではリルヴァが急速に肉体を修復し始めていた。
「・・・っ!?・・どうやら、呑気にお話している場合では無さそうですね」
上空で修復していくリルヴァを見たシエラは『聖斧レガリア』を構えて立ち上がる。
「・・とにかく、私は帝国の宿屋『暁の奇跡亭』の娘であり、『女神教会』の『聖騎士』でもあるシエラと申します。この『カームクラン』の街は必ず私が救います。ですから、あなたもどうか急ぎ避難してください」
「・・っ!?ほむらは『カームクラン』の冒険者でほむらと言います!私もシエラ様と戦います!!」
「・・いいえ、ほむらさんは回復したばかりですし、それじゃ戦えないでしょう?」
シエラは既にマナ劣化によって変色して使い物にならなくなった『一型略式魔導小太刀』に目を向けた。
「うっ・・・」
同じくそれをみたほむらが気まずそうな顔をする。
「・・それに、あの『邪神』は今までの『邪神』では考えられないほどの驚異的な再生能力を持っているようです。ですから、一片も残さず徹底的に滅ぼさないといけません」
「・・私は数奇な運命で『邪神』に立ち向かう為の力を手に入れました。そして、私自身もハーティさんに命を救われた身・・ですから、ハーティさんが創造したこの世界を必ず救います」
「・・だから、ほむらさんも私を信じていてください」
シエラの言葉を聞いたほむらは、感動や自身の不甲斐なさによる悔しさが織り交ざったような表情をしながら、静かに涙を流した。
「・・・シエラ様・・・どうか、どうかほむら達の『カームクラン』を救ってくださいっ!」
シエラはほむらの言葉に静かに微笑みながら頷いた。
「お“お”お“お”お“」
そんな中、いよいよ完全に肉体の修復が完了したリルヴァが雄叫びのような声を上げ始めた。
「ほむらさんの願い・・必ず叶えます!・・・では、いきますよ!!!」
ドゥン!!!
シエラはリルヴァを厳しい眼差しで見上げると、勢いよく上空へと飛翔した。
「・・・・ハーティさん・・どうかシエラ様に祝福を」
ほむらはシエラを見送りながら、静かに祈りを捧げた。
「お“お”お“お”お“!!」
ゴウゥゥゥ!!
「・・うへぇ・・気持ち悪い見た目・・・」
上空でリルヴァと対峙したシエラは、そのあまりに邪悪で醜悪な姿に思わず獣耳をぺたんと閉じた。
しかし、すぐに気を取り直すと『聖斧レガリア』をリルヴァへと向けた。
「そこの『邪神』!!!」
「お“あ”!?」
シエラはハーティに倣って『邪神』に向かって格好よく口上を述べようと意気込む。
しかし、リルヴァは『聖斧レガリア』を見た瞬間に驚愕したような声を上げた。
「あ“あ”!?ぞの”『斧』は“・・・ぞの“『斧』は”あ“ぁ”ぁ“ぁ”ぁ“ぁ”!?」
そして、何故かリルヴァは『聖斧レガリア』を見た瞬間に空中で後ずさりを始めたのであった。
(えっ!?ちょ!?『邪神』が慄いて後ずさりするって・・・バハムス様は『神界大戦』の時、『邪神』に対して一体何をやらかしたの!?)
シエラは慄くリルヴァを見て思わず冷や汗を流した。
「・・・と、とにかく!!そこにいる『邪神』!!あなたは『聖騎士』シエラがほ、滅ぼすので、そのつもりでっ!!!!」
シエラは気を取り直して『ずびしっ!』とリルヴァを指差すが、折角の口上は何とも締まらない感じになってしまった。




