『リリーシャ』との戦い2 ~『王都イルティア』視点~
『くそっ!!各機、地上のアンデッドを食い止めるんだ!!』
『しかし、ラナウェイ様・・『邪神』は・・』
『『邪神』は私が食い止める!皆は急ぎ向かえ!!』
『ですが、ラナウェイ様の『ラピス』一機では・・・!!』
『くどい!『邪神』相手に『ラピス』が何機束になろうが、大して戦況はかわらん!行け!』
『『ぎ・・御意!!』』
ズゴォォォオ!!!
ズゴォォォオ!!!
ラナウェイに命令された『騎士』達は、戸惑いながらもアンデッドが侵攻する地上へと機体を飛ばした。
「あら?無粋な事をなさるのね?」
シュン!!
それを目にしたリリーシャは、突如ラナウェイの前から姿を消した。
その直後、地上へ向かう『ラピス』の一機に複数人のリリーシャが出現し、同時に『魔剣』を振りかぶった。
「神技『スラシング・カルテット』!」
ズブブブシュウゥゥゥゥゥゥ!!!
『は?え??』
リリーシャの持つ『魔剣』は、その大きさに見合わぬ切れ味で『ラピス』を切り刻む。
そして、リリーシャの斬撃を受けた『騎士』は、状況を全く把握できないままバラバラになった『ラピス』共々地上へと墜落していった。
ドォォォン!!!
墜落する『ラピス』の残骸から噴出する流体魔導銀が陽の光を反射しながら輝き落ちていく様子が、ラナウェイには皮肉にも幻想的な光景に見えた。
『そんな!?『ラピス』が一瞬で・・・』
『気を取られるな!早く行け!!』
『『は・・はい!!』』
ズゴォォォ!!
ラナウェイはすぐさま気を取り直して『騎士』達を催促すると、素早くリリーシャの前に立ちふさがった。
『貴様は私が相手をすると言った筈だ!!』
「・・・はぁ、しつこい殿方は嫌われますわよ?」
リリーシャは立ちふさがったラナウェイを見て、興が削がれたように溜息を吐いた。
「・・まあ、いいですわ。あのお人形は、もしおともだちと戦って生き残ることができたら、後でリリがじっくりと壊して差し上げますわ」
ヒュンッ!!
リリーシャはやれやれといった様子になると、『魔剣』で素早く空を振りぬいた。
「リリの『魔剣オブシディアン・アルハザト』の能力は『俊足』!さあ、あなたはあと何度、リリの『俊さ』に耐えられるのでしょうか??」
シュバッ!!
『くそっ!!?』
リリーシャが再び動き出したのを見たラナウェイは、無心で操縦レバーを引き寄せながらトリガーを引く。
刹那、ラナウェイの『ラピス』を取り囲む、四人のリリーシャが現れ始める。
「神技!『スラシ』・・」
そして、リリーシャが先ほど撃墜した『ラピス』へ繰り出した斬撃をラナウェイへ向けようとした瞬間。
ドガァァァァン!!!
「うきゃあ!?」
突如発生したリリーシャとラナウェイを巻き込む程の大爆発に双方が吹き飛ばされた。
シュウゥゥゥゥゥ!!!
「あ“あ”あ“あ”あ“!?」
『ぐう!?』
装甲に付与された防御魔導を突破する程の爆発に巻き込まれたラナウェイの『ラピス』は、所々軽微な破損をしていた。
ゴウゥゥゥゥン・・・・。
「元来の機体の大きさと腕部砲を発射した瞬間に急速後退したことによって、何とか機体の損傷を押さえたが・・・」
ラナウェイはコクピットで独り言ちながら、額に手を置く。
すると、その掌には真っ赤な血が付着していた。
「・・そう何度も使える技ではないな」
ラナウェイはその血を見ながら溜息をついた。
・・・・・・・。
「う“う”・・・」
シュウゥゥゥゥゥ・・・。
同じ爆発に巻き込まれた身でも、『ラピス』の十分の一にも満たない大きさのリリーシャの方が深刻なダメージを受けていた。
彼女の美しい漆黒色のドレスは激しく損傷し、彼女の腕や足は片足ずつが吹き飛んでなくなっていた。
そして、陶磁器のように白く美しかった肌は一面が火傷のように赤黒く爛れていた。
そこに、先ほどまでの愛らしい少女の姿は皆無であった。
「・・・・・」
リリーシャは無言で俯いた状態で、その顔には暗い影が落ちている。
その為、ラナウェイからはリリーシャの表情が掴めないでいた。
「ゆるしませんわ・・・・」
リリーシャが地を這うような声を発した直後、彼女自身から放出された黒い霧がその身体全体を包み込んだ。
ブワァァァァ!!
しばらくして、リリーシャを包み込んだ黒い霧が消滅すると、そこには元通りの愛らしい姿をした美少女の姿があった。
『そんな・・・なんという再生能力だ・・・』
事もなく完全再生したリリーシャを目の当たりにしたラナウェイの声には、絶望の色が混ざっていた。
「・・・どういう仕組かわかりませんが、火属性と浄化魔導を組み合わせた技ですわね」
「下等生物がリリの事を傷つけることが出来たのは褒めてあげますわ・・・」
褒めている言葉に反してリリーシャの目は血走りながら見開かれ、喰いしばった歯の端には鋭い牙が見え、その表情は憎しみに染まっていた。
「ですが・・たった今、あなたの事は真っ先にこのリリがブチ殺すと決意しましたわっ!!」
リリーシャは憎悪に染まった顔をしながら、自らの『魔剣』を大きく振りかぶる。
シュバッ!
そして、再び目にも止まらぬ速さでラナウェイの『ラピス』へと斬りかかった。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
「オォォォォォ!!」
「オォォォォォ!!」
一方、地上は次々と王都民達へ襲い掛かるアンデッドの群れにより阿鼻叫喚となっていた。
「っ!?逃げなさい!!」
「オォォォォォ!!」
ガブシュ!!
「うぁぁぁ!おかあさーん!!」
今もまた、目の前でアンデッドに捕食された母親を見て涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた子供が腰を抜かしていた。
ズゴォォォォ!!!
『そこの君!!逃げなさい!!』
そんな中、アンデッド掃討の為に三機の『ラピス』が地上に降り立った。
しかし、母親を失って絶望する子供はその場から動くことが出来なかった。
「オオオオオ・・・」
そして、その子供にもアンデッドによる魔の手が忍び寄る。
『くそっ!!』
ズブゥゥゥゥ!
子供が逃げられないことを悟った『騎士』は、生身の人間と同じ大きさであるアンデッドにとってはあまりにも巨大な『リデューシングランス』を一気に地面へと突き立てた。
「「「ゴバァァ!!!」」」
十メートルを優に超す『リデューシングランス』が地面に突き立てられたことにより、子供へと迫る複数のアンデッドがまとめて押しつぶされる。
そして、付与された魔導によって浄化される間もなく『還元』の効果により、その肉体がエーテルへと還って行った。
『腕部砲を使えば一気に蹴散らせるのだが・・・』
『まだ取り残された王都民をいるんだ。絶対に腕部砲は使うなよ!』
『俺はここでアンデッドを食い止める!三番機と五番機は先へ進んで、各機アンデッドの一団を掃討してくれ』
『了解!!』
現在ラナウェイはリリーシャと交戦中の為、副官の『騎士』による指示で『ラピス』各機が散開する。
ドォォォン!!!
『ラナウェイ様、どうか御無事で!!!』
副官の『騎士』はラナウェイ達が交戦している場所で発生した爆発を光魔導スクリーンで確認し、ただひたすらにその無事を祈った。




