『マナドゥ』迎撃戦3
イィィィィン!!
スロットルを開いた瞬間、『メルティーナ』が一気に加速する。
そして、『マナドゥ』の群れと距離を詰めながら右腕部を前方に突き出した。
直後、『メルティーナ』の掌部分から魔導式が展開される。
『喰らえ!『ホーミング・ホーリーファイヤーアロー』!!』
ビシュシュシュ!!
二アールの掛け声と共に、白銀色の光を纏った火球が多数発射される。
ギュンギュンギュン、チュチュチュドォォォン!!
それらはそれぞれ別の目標へと軌道を変えて飛んでいき、『マナドゥ』を爆散させていった。
『ちょ!?なによ、その取ってつけたような名前の魔導は!?』
『ちょっと、クラリス!?『取ってつけた』ってどう言う事よ!ただ単に『ファイアーボール』と『ホーリーアロー』の術式を合わせた『合成魔導』よ!!』
『魔導具だって複数の魔導式が同時に発動して動くんだから、なにも不可能な事じゃないわ』
『いや!?同時に複数発動するのと二つの魔導を『合成』するのじゃ訳が違うから!!』
『まあ、合成する事でマナ消費自体は単発で発動するのに必要なマナの合計より多くなるから、ナラトス様の補助があってこそ成せる技だけどね』
『二術合成・・デスティウルスにも有効的な技かもしれないわね』
『ハーティの場合は周りの状況を見て使ってよね。浄化魔導ならいいけど、火属性魔導はあたし達にもダメージが通るんだから』
『そのくらいクラリスに言われなくてもわかってるわよ!』
・・・・・・・・。
スギャギャギャ!!
クラリス達が『マナドゥ』を迎撃している間も『イルティア・レ・イーレ』はとめどなく放たれる魔弾の攻撃を受け続けていた。
「リリス、大丈夫?」
ハーティは、それら全てを防御魔導で凌いでいるリリスを心配して声をかけた。
「全く問題ありません。『聖杖エーテリア』はこの程度で持主の力を消耗させるほど柔な『神器』ではありませんから」
「ですが、これではキリがありません。私も出ます!」
ジャキン!シュイィィィン!!
『マナドゥ』の数の多さに痺れを切らしたユナは『女神の絆』を展開すると甲板の端へ向けて歩き出す。
「・・・待って、私も行くわ」
しかし、歩き出すユナをハーティが引き止めた。
「しかし、ハーティルティア様・・まだ『サウスポイント』には・・」
「いいえ、あれが『サウスポイント』よ」
ユナを引き止めたハーティは前方の地平線を指差した。
ハーティが示した先には、地平線から徐々に姿を現し始めた大地を穿つ大孔があった。
「あれが・・『サウスポイント』・・全ての始まりの場所であり、最果ての地・・」
大地の大孔を目の当たりにしたユナは、静かに独り言を呟いていた。
「・・あの場所に、間違いなくデスティウルスがいる筈よ」
「いよいよですね、ハーティルティア様」
「ええ」
リリスの声にハーティは頷いた。
そして、ハーティはピアスを使って自分の声を皆に共有した。
「みんな、とうとう『サウスポイント』に到達したわ!『マナドゥ』の迎撃で大変だけど、相手は待ってくれない。だから、私が直接デスティウルスのいる場所へ向かうわ!」
『待ってくれ!ハーティ!一人で行くなんて危険すぎる!』
「殿下の言う通りです。私も『聖騎士』を賜る身。ハーティルティア様にお供します!」
「ダメよユナ!あなたがいくら強くなったと言っても生身では危険だわ!デスティウルスは今までの『邪神』とは段違いの脅威を孕んでいるのよ!?『神聖魔導甲冑一型』の防御魔導でデスティウルスの攻撃を防げるかどうかもわからないんだから!!」
「そのくらいで怖気付くくらいなら、元よりこの場にはおりません。ここに立つ以上、私はこの身が滅びようとも最後まで『邪神』と戦う覚悟です。そして、それはハーティルティア様にお供する皆も同じです」
「ユナ・・・」
ハーティはユナを止めようと必死に説得するが、ユナの決意は変わらなかった。
その時、二人の会話を聞いていたリリスが口を開いた。
「では、私が微力ながら力を貸しましょう!」
リリスはハーティ達に宣言すると、『聖杖エーテリア』をユナへと向けた。
そして、瞳を閉じて意識を集中する。
キィィィィン!!
直後、『聖杖エーテリア』の先端が白銀色に輝き出し、それに呼応するかのようにユナの身体も輝き出した。
「これはっ!?」
ハーティはユナの姿を見て刮目した。
何故なら、ユナの身体が光り輝いた直後、彼女の髪と瞳が白銀色に染まり始めたからである。
「いけるかどうかは五分五分でしたが、ユナさんの潜在的なマナ出力が高かったから上手くいきましたね」
「すごい!力が漲ってきます!!」
ユナも自分の肉体の変化を感じ取っているようであった。
「今、『聖杖エーテリア』が持つ能力の一つである『神技の並列発動』の力を利用して、ユナさんにマナを供給しています。そして、それがユナさん自身の人並外れたマナと合わさり、肉体が人智を超える程のマナを得た事で『女神化』を果たしたのでしょう」
「これでユナさんは自身に『アブソリュート・フィールド』を発動することができます」
「でも、リリスはそんなことして大丈夫なの!?」
ズギャギャギャギャ!!
ハーティと会話している間にもリリスは『マナドゥ』の攻撃を防いでいた。
そして、その状態でもユナは『女神化』したままであった。
「『聖杖エーテリア』を持った私の神格はハーティルティア様に及ばずとも、かつての『神族』としては最高クラスです。それに、『神技の並列発動』は『聖杖』の真骨頂です。ですからこの程度、どうと言うことはありません」
「さあ、ハーティルティア様!ユナさん!ここは私達が食い止めます!ですから、デスティウルス討伐を頼みます!!」
ハーティは、今この瞬間も必死に戦う仲間達を目で追う。
そして、静かに頷いた。
「わかったわ!みんな死なないで!・・私達はデスティウルスの元へ向かうわ!!」
『ハーティ!絶対に死ぬなよ!』
「貴方もね!マクスウェル!」
『ここは任せて!こいつらを片付けたらあたし達も向かうわ!』
『私達が助けに行くまで死なないでよね!』
『元身内の不始末の為に申し訳ない。必ず後で向かうと約束しよう』
「わかったわ!クラリス、二アール、ナラトス!!」
「ハーティルティア様、御武運を」
「貴方もね、リリス。みんなを守ってね!」
「この命に変えましても!!」
ハーティは皆と言葉を交わすと、目の前の空間に魔導式を展開する。
「『聖剣ニーヴァルテ』!!」
そして、その魔導式から『顕現』し始めた『柄』を手に取ると、一気に引き抜いた。
(お願い『リフィアス』・・!!私に力を貸して!!)
「じゃあ、ユナ!行くわよ!」
「仰せのままに!」
シュタッ!!
ハーティはユナの返事を聞くと、甲板から颯爽と飛び降りた。




