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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第四章 エルフの国リーフィア編
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『イルティア・レ・イーレ』到着

「うう・・頭がガンガンしますわ」


「私もです・・うう、ハーティルティア様の様の専属侍女ともあろうものが・・すいません」


 晩餐会の翌日、お酒に酔って散々醜態を晒した二人は酷い二日酔いに悩まされていた。


「もう、二人ともハメを外しすぎよ、えいっ!」


 パァァァァァ!


 ハーティは顔色の悪い二人に苦笑いをしながら治癒魔導をかけた。


「ふう、すっかり良くなりましたわ!ありがとうございます!敬愛する主様!」


「ハーティルティア様の御手を煩わしてしまい申し訳ありません」


「ていうか、リフィアス様は自分で治癒できるのでは?」


 クラリスの指摘にリフィアスは微笑んだ。


「だって、敬愛する主様に治療してほしいんですもの」


「・・左様ですか」


 バァン!


 クラリスがリフィアスの返答を聞いて苦笑いを浮かべていた時、突如謁見の間の扉が勢いよく開け放たれた。


「女神様!大変でございます!」


 皆が一斉に扉の方を見ると、慌てた様子のグラディウスが駆け寄ってきた。


「どうしたのです、グラディウス。敬愛する主様の御前ですよ?」


「申し訳ありません、先王陛下。しかし、事は急でして報告に上がった次第です」


 グラディウスはそう言うと、玉座に座るハーティに『最敬礼』を行った。


 晩餐会で半ば強引にリフィアスから女王の位を譲渡されたハーティは『女神の国リーフィア』の君主として、仕方なく玉座に腰掛けていた。


 そして、元々『リーフィア』の女王だったリフィアスは要職に就くことはなく『先王』として隠居に近い立場となることを望んだ。


 どうやら今回の出来事は建国時からリフィアスによって定められていた事であったようで、『エルフ』達の混乱は一切起こらなかった。


「で、一体なにがあったんですか?」


 ハーティが尋ねると、グラディウスは玉座の前で跪いたままの姿勢で答えた。


「はっ!只今本国外周に常駐する見張りの兵から巨大な飛行物体が向かって来ていると報告がありました!」


「巨大な飛行物体?」


「はい。報告によればそれは複数ありまして、一つは二百メートルにもなり、その他は二十メートル程のが視認できるだけで五つあるということです」


 それを聞いたクラリスは何かに気づいたように手を叩いた。


「それ、きっと『イルティア王国』からの応援だわ!」


「先日お話頂いたお仲間の件ですよね?ですが『王都イルティア』からここまでは相当な距離がありますよ?それに、空からと言う事は敬愛する主様方のように何らかの飛行する手段があるという事でしょうか?」


 リフィアスが首を傾げていた時、ハーティのピアスから声が聞こえてきた。


『こちらマクスウェル、聞こえるか?ハーティ?』


「今、マクスウェルから通信があったわ。クラリスの言う通り、王国の人達だわ」


「今、主様のピアスから声がでてきましたよ?」


「あ、これは遠くの人と会話ができる魔道具らしいわ」


 ハーティはリフィアスに説明しながら、自分の耳についているピアスを指で突いた。


「なるほど・・・要はマナを使って音となる空気の振動をエーテル振動に変換して相手まで伝達、それを再び空気の振動に変えて通信する魔道具ってことですね!」


「なんか理解してる!?」


「どうやら魔道具音痴は『神族』共通ではないようね」

 

「私もすぐに理解できたしな」


「ニアール、ナラトス!それはどう言うことよ!?」


「言葉のままであるな」


「っく!べ、別に悔しくないんだから!」


「まあまあ、敬愛する主様は魔道具など頼らなくても何でもできるではないですか!」


「何だか全部我が身一つの力技で解決しているみたいで納得できないわ!」


 ハーティは悔しさに地団駄を踏みそうな勢いであった。


『ハーティ?聞こえているか?』


 そして、放置されていたマクスウェルから再び声がかかった。


「ああ、ごめんなさい。聞こえているわ」


『よかった。今私達は『リーフィアの樹海』上空にいるのだが、乗ってきている艦が水面にしか着陸できなくてね。大型船舶が航行できるような水辺は近くにないだろうか』


「どうなの?リフィアス?」


「でしたら、『リーフィア』の西側を数キロ程行った所に大きな湖がありますわ。湖畔からある程度の距離を取れば深さも十分とれるはずですわ」


「ということよ」


『それならこちらにも見えているが、やはりあの湖しかないか。わかった。着陸したらすぐそちらに向かう。距離があるから主要な人間だけ魔導機甲(マギ・マキナ)に乗ってそちらの王宮まで向かう。『リーフィア』の女王陛下に先触れを頼みたい』


 マクスウェルの言葉を聞いてハーティがリフィアスに視線を向けると、彼女はにこりと微笑んだ。


「構わないわ。機体が大きいでしょうから、降りるところだけ考えてね?」


『うん?ああ、わかった。すぐに行くよ』


 マクスウェルは何故ハーティが許可するような言い回しなのかと言う疑問を抱いた様子であった。






 ゴゴゴゴゴ・・・。





「聞いての通り、本艦はこれより『リーフィア』西方の湖に着陸する。準備を始めてくれ」


 ハーティとの通信を切断したマクスウェルは、早速操舵士に指示を飛ばした。


「了解!面舵九十度回頭!進路を西に変更します!」


 イイイイン!ゴォォォ!!


 指示を受けて操舵士が大きな舵を回すと、巨大な船体はやや右に傾きながら、その舳先を西に向けた。


 そして、数分飛行すると『イルティア・レ・イーレ』は『リーフィア』西側の湖上空に到着した。


 ゴゴゴゴゴ・・・・。


「殿下!着陸地点に到着しました!」


「よし、着陸してくれ」


「了解!巡航用魔導推進機停止!機関四十!高度低下!着水に備えよ!」

 

 キィィィィィ!!


 機関出力を下げた『イルティア・レ・イーレ』は湖面に向かってゆっくりと高度を下げていく。


 ザバァァァァァン!!


 そして、凄まじい水飛沫を立てながら湖へと着水した。


 ゴォォォ!!ダァーン!


 ゴォォォ!!ダァーン!


『イルティア・レ・イーレ』に追従してきた五機の『ラピス』は自重が重すぎるので、甲板の上に着艦したり艦内に格納することができない。


 その為、近くの河畔に着陸する形となった。


「『イルティア・レ・イーレ』着水完了しました!錨を下ろします!」


「副機関停止、主機関出力低出力稼働(アイドル)!」


 シャウウウン!!


「さて、無事に『リーフィア』へと到着したわけだが、王宮へは誰が行く?まあ私は確定として・・」


「わたくしも行きますわ!」


 マクスウェルの言葉へ食い気味にフィオナが主張した。


「私も行きます」


 そして、それに続いてリリスも挙手した。


「フィオナ、それに聖女様も・・いいのですか?『リーフィア』までは距離があるので『ラピス』に乗って行くことになりますが・・」


「わたくしは帝国の第一皇女です。相手が一国の主である以上、わたくしも帝国の代表として向かいますわ」


「同じく私も『女神教会』の代表として向かいます。それに、ハーティルティア様がいらっしゃるなら、私が向かうのは当然のことです」


「・・わかった。ならば一応護衛の意味も踏まえて三機の『ラピス』で向かおう」


「では湖畔の『ラピス』へ向かうためにタグボートを下ろします」


「わかった。では行こう」


 マクスウェルはクルーの言葉に頷くと、『ラピス』が待機している湖畔へ行く為に、フィオナとリリスを連れてタグボートのある船外デッキへと向かった。

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