『リーフィア』の晩餐会3
「さあさあ!もう皆さんに宣言したのです!今更拒否はできませんよ!どうぞこちらの席へ!」
「ちょっ!?リフィアス!?」
リフィアスはハーティの手を引くと、壇上にある玉座にハーティを座らせた。
すると、そのタイミングを見計らって王宮のメイド達が、会場に並べられたバイキング方式の料理皿からそれぞれ少量ずつ取り分けたものをハーティが座る席の前にあるテーブルへと運んで給仕を始める。
そこには、『イルティア王国』でも馴染みのある肉や魚の料理から新鮮な野菜をふんだんに用いたサラダや果物の盛り合わせまで、多種多様な料理が並んでいた。
「あたし、『エルフ』は木の実や野菜とか果物しか食べないと思っていたわ」
クラリスが会場のテーブルに並ぶ料理の数々を目にして呟いた。
「私もそのように認識していました。おそらく、排他的で森の中で暮らす種族ですからそういう噂が流れたんでしょうね」
「ですが、これだけ豊かな自然に囲まれていれば近くの川や湖から魚は採れますし、動物も沢山狩れるでしょうから食材には困りませんし、『女神教』もこれといった禁忌の食材はありません。そう考えれば、『エルフ』だって普通に肉や魚も食べるでしょう」
ユナの見解にクラリスは同意するように頷いた。
そして、ハーティの席に豪勢な料理の数々が並べられると、テーブルに置かれていた精巧な細工が施されたガラス製のグラスに高級そうな葡萄酒が注がれた。
「これはわたくし秘蔵の、とっておきの葡萄酒ですわ!!」
ハーティの前に置かれた物と同じデザインのグラスを手に取ったリフィアスは、ハーティの座る玉座の前に立つとグラスを高く掲げた。
「さあ!乾杯しましょう!敬愛する主様!」
「・・ふう、わかったわ」
リフィアスに声をかけられたハーティは、いよいよ諦めて目の前に置かれたグラスを手に取ってから立ち上がった。
そして、ハーティが立つことでしんと静まり返った会場を見渡しながらリフィアスが声を上げた。
「今日は、わたくしがこの世に生を受けてから、最も素晴らしい日となりました」
「敬愛する主様を思って五千年以上・・ようやくこうして会いまみえるが叶いました」
「そして、わたくしが大切に護ってきたこの『リーフィア』を託すことが出来て、本当に嬉しく思います」
「さあ、皆さま!このような素晴らしい日をお祝いして、敬愛する主様に乾杯を捧げましょう!乾杯!!」
「「「「乾杯!」」」」
「「「ワァァァァァ!!」」」
パチパチパチパチ!!
そして、会場に広がる割れんばかりの歓声と共に歓迎の晩餐会が始まったのであった。
・・・・。
・・・・・・。
それから暫くして、国の重鎮達が挨拶を終えて歓談も落ち着いた頃。
「あるじさまはぁ〜〜おんみのすばらしさを理解してないのれす!」
グラスを持って顔を赤くしたリフィアスがハーティにしなだれかかっていた。
「ちょっと!リフィアス!なんであなたそんなに酒癖悪い訳!?」
「えへへ〜わらくし、『めがみ』のときは〜おさけなんてのまなかったから〜うまれかわってのんでみてから、すきになってしまったのれす!」
「ちょっ!なんだかお酒とリフィアスの匂いが混ざって素晴らしい香りが・・って、飲み過ぎよ!」
「らって〜うれしかったんですもの〜〜!!」
「・・ほんと、元『女神』にまともな人っているわけ?」
「ちょっと、クラリス!わたしも一応『女神』なんですけど!!」
「知ってるわよ」
「なんだか腑に落ちないわ・・」
ハーティは愚痴を零しながら、ぐびりと葡萄酒を流し込んだ。
「というか、リフィアスも『ハイエルフ』だし、高位の魔導が使えるんでしょ?お酒なんて解毒したらいいのに・・」
「そんなぶすいなことはしましぇん!あるじさまもさあ!もっとのんでみだれてくらはい!」
「いや、私・・『女神』の能力かわからないけど、全く酔わないのよ」
「はぁ・・それも不憫ね・・私も久しぶりにたくさん飲んで少し酔って来ましたわ、ナラトス様〜」
二アールはほんのり上気した顔でナラトスにしなだれかかる。
「大丈夫か?二アールよ」
その二アールをナラトスは優しく抱き留めた。
「何どさくさに紛れていちゃついてるのよ!あなた酒豪なの知ってるんだからね!」
「ふん!悔しかったらあんたも良い男を見つけることね!どうやら恋愛に関しては私の勝利みたいね!」
「むきぃー!!なんだか悔しいわ!!」
「なら、あなたもあるじさまをあいしたらいいのです!さあさあ!」
むにょんむにょん!!
「むふぅーー!!リ、リフィアス様!!苦しい!!くっ!やっぱりけしからんおっぱいだわ!あたしへの当てつけのつもり!!?」
クラリスは珍しく場の空気に翻弄されていた。
シュタッ!!
そんなクラリスを微笑ましく見つめていたハーティの背後に、突如黒い影が降りた。
そして、それからわきわきとの動く手がハーティの前まで伸びてきた。
むにゅん!
「ひゃう!?」
突如自分の胸を鷲掴みにされた事により、ハーティは驚きの声を上げた。
ハーティはリフィアスの酒癖の悪さですっかり失念していた。
もう一人、酒癖が悪い人間がいるということを。
「ふふふ・・ハーティルティア様。変態堕乳エルフだけじゃなく私の相手もしてください!」
「だにゅっ!?」
普段のユナからは絶対出ないであろう暴言にハーティは驚きの声を上げた。
もみもみ・・・。
「無駄に大きいからって押し付けてばかりでは芸がないのです。ハーティルティア様くらいの大きさが一番素晴らしいのですよ」
ユナはハーティの胸について語りながらも揉みしだく手をやめなかった。
「むふぉっ!はあはあ・・・ユナもどっこいどっこいの大きさじゃない!みんなズルいわよ!」
ようやくリフィアスの手から逃れたクラリスは、早速ユナに突っ込みを入れた。
「どうでもいいけど、この酔っ払い二人を何とかしてよね!!」
ハーティはユナやリフィアスを鬱陶しそうに引きはがすが、久しぶりに仲間と宴会をする楽しさが勝ってまんざらでもない表情を浮かべていた。
そして、その後も騒がしい宴会のような晩餐会は夜遅くまで続いたのであった。




