新装備お披露目
ハーティ達がシノサキ家で歓待を受けてから一週間程の間、『白銀の剣』は冒険者の活動を休止していた。
というのも、『白銀の剣』と『旋風』による合同緊急クエストにより、対空戦力に対する集団戦の弱さが浮き彫りとなった。
そのことから緊急クエストを終えてから暫くの間、『白銀の剣』のメンバーは拠点に引きこもりながら、新装備の開発に明け暮れていたのであった。
「・・・出来たわ!」
クラリスは先程ハーティによって神白銀化されて完成した新装備を見ながら満足げな表情をしていた。
「うう・・お腹減った・・つかれた」
ハーティはここ数日の間クラリスにこき使われた事による疲労で、研究施設内格納庫の床に大の字で寝転がっていた。
そして、辺りには同じ状態の研究者や技術者が転がっていた。
「ハーティさん、はしたのうございます」
「むぅ・・クラリスはいつも人使いが荒いよぉ」
ユナに指摘されたハーティは渋々体を起こした。
「まあ、お陰で新装備が完成したからよかったじゃない。じゃあ、早速今から二人に説明するわよ」
「まずは『プラタナ』の装備ね!」
クラリスが指差して二人の視線を誘導した先には、十メートルを超える大小二つの大型魔導具らしき物体があった。
「まずこの大きい方は『帝都決戦』の時に失ったお爺様の『魔導集速砲』の仕組みを応用して対『邪神』用に改修したものよ」
クラリスが指し示した大きい方の魔導具は以前に亡失した『魔導収束砲』と似た超巨大なライフル形状をしていたが、砲身先端部分は細長いブレードのような形状になっていた。
そして、そのブレード部分にはびっしりと複雑な魔導式が刻まれていた。
「その最大の特徴は『光属性魔導』を付与することで『邪神』に対して威力を発揮できるということよ。前の『魔導収束砲』がハーティの魔弾に近いとすれば、今回は高威力の『ホーリーアロー』に近いと言う感じね。因みにマナは発導機から直接供給するわ」
「私はこれを『ホーリーバスターキャノン』と名付けたわ」
「なるほど、とりあえず『めちゃくちゃ大きいホーリーアローを放つ凄いやつ』って訳ね!」
「まあそれで大体合ってるわ。ただそれだと『邪神』には有効だけど通常の魔獣には有効なダメージを与えられないから、この小さい方の武器を別に作ったのよ」
クラリスは説明をしながら、次は小さい方のライフルを指さした。
「こっちは『魔導収束砲』の能力をそのまま流用して威力を落とした代わりに連射性能を向上させた、対集団戦用遠距離武器ね。これは言わば魔弾を連射出来るイメージに近いから通常の魔獣に威力を発揮するわ。因みにこっちは『マギ・ライフル』と名付けだわ!」
「・・・うふふ」
クラリスの説明を聞いたハーティはとりあえず額に汗を流しながら微笑んだ。
「・・まあ詳しいことはわかっていなくても大丈夫よ・・」
クラリスとハーティが魔導具について話をする中、ユナは何故かそわそわしている様子であった。
「それよりクラリス、あの・・アレは完成したのですか?」
「うふふ、気になる?きになっちゃうわよね!もちろん完成したわよ!」
「取ってくるから、ちょっと待っててね!」
ガラガラ・・・。
「こっちはユナを驚かせるためにわざわざ隠していたのよね」
それから数分もしないうちにクラリスは得意げな表情をしながら、白い布が被せられた人丈ほどの物を台車に載せて運んできた。
「じゃあ早速お披露目ね!それっ!」
バサッ!
そして、クラリスはその運んできた物に被せられた布を取り去った。
その直後、布の下からマネキンのような木人形に装着された白銀色の鎧が顕となった。
その鎧は胸当て、腰当て、肩や手足に装着する籠手や脛当てで構成されており、冒険者がよく装着する金属鎧のようであった。
しかし、純粋魔導銀よりも白く美しい光沢を放つ神白銀の装甲材には随所に複雑な魔導式が刻まれており、それだけで目が眩むような価値がある逸品というのが見てわかる代物であった。
そして、その鎧の背中部分には膝丈ほどにもなる大きなえんじ色のマントが備わっており、そのマントには神白銀で紡いだ糸を使って大きく『女神ハーティルティア』をモチーフにした『神聖イルティア王国』の国章が刺繍されていた。
「ふおぉぉぉ!」
それを見たユナは今までハーティ達が見たことがないほど興奮した表情を浮かべていた。
「名付けて『神聖魔導甲冑一型』よ!どう?ユナのオーダー通り『聖騎士』らしい装いにしてみたけど」
「素晴らしいです!装着してみてもいいですか?」
「もちろんよ!動作テストもしないといけないしね!」
目を輝かせていたユナは木人形から鎧を外すと、それを早速装着し始めた。
「ほう・・これは」
「すごいわ!ユナ、似合ってるわよ!」
クラリスの言った通り、鎧を装着したユナは今までと異なり、いかにも『聖騎士』というような装いとなった。
「あ、ありがとうございます」
鎧を装着した姿を二人に褒められたユナは恥ずかしそうに頬を掻いた。
「そう言えば私は今、常に体を巡った膨大なマナが無意識に放出されているのですよね?ならこの鎧がマナ抵抗が無い神白銀で出来ているとすれば、軒並み刻まれた魔導式が発動するはずですが・・」
「そう言えばそうね」
「それについてだけど、先日あたしがユナの体に巡るマナについて詳しく調査したでしょ?」
「っつ!?」
クラリスの言葉を聞いたユナは何故か顔を赤らめさせた。
「一体クラリスはユナにどんな調査をしたのよ・・・」
「げふん!まあその時にユナの思考にある程度連動してマナの巡りに変化が生まれていることを発見したのよ」
(・・誤魔化したわね)
「でこの鎧はそのマナの巡りの変化を利用して変遷する特殊な魔導式を内側に刻んでいるわけなのよ。それによってユナの意思に従って任意の魔導式を任意の出力で発動できるという優れものなのよ!」
「・・なるほど、とりあえず仕組みがさっぱりわからないことがわかったわ!」
「・・・・」
「ま、まあとにかく装着した瞬間にアレもコレも魔導が発動して光り輝くなんてことにはならないって訳なのよ!」
「まあ、説明よりも実際に使ってもらったほうが良いわよね!じゃあ早速実験のために外に出ましょう!」
クラリスはそう言いながら、二人を中庭へと誘導した。




