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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第三章 商業国家アーティナイ連邦編
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ワイバーン討伐クエスト5

「『広域上級防御魔導』発動!」


 ハーティはひとまず先に地上への魔導による影響を避ける為に、『ワイバーン』の群れの下にある森林地帯へ広域の防御魔導を発動した。


 そして、防御魔導に対しては惜しまずマナを消費する。


 続いて攻撃魔導を発動するべく、ハーティは目視出来る『ワイバーン』の群れの位置関係を元に慎重に威力を調整する。


「この髪飾りのお陰で『女神化』している時より魔導の威力は落ちるから、調整がやりやすいわね」


 そして、パーティは掌を『ワイバーン』の群れへ向けると、魔導を発動した。


「ファイアーボール!」


 ゴウゥゥゥ!


 直後、最早魔導名と規模が完全に合っていない直径数メートルにもなる火球が『ワイバーン』の群れに向かって飛んでいく。


 ゴウゥゥゥ!ピカッ!


 そして、火球が『ワイバーン』の群れに命中した瞬、一瞬激しい閃光が起こった。


 チュドーーーン!!


 それから数秒遅れた頃にハーティの耳をつん裂くほどの爆発による轟音と衝撃波、そして熱波が伝わってきた。


 膨れ上がった爆発は直径数百メートルにも及び、地上に到達しようとする爆発はハーティの『広域上級防御魔導』が何とか凌いでいた。


 その爆発によって生じたキノコ雲は上空数キロメートルにも及び、その光景はまるで世界の終末を表現するかのようであった。


 そして、戦略級兵器に及ぶその猛烈な爆発に飲み込まれた『ワイバーン』がどうなったかは、考えるまでも無かった。


「「「・・・・・・」」」


 既に爆心地から十キロ以上待避していた『プラタナ』の位置からでも肉眼で十分視認できる地獄絵図を、『旋風』の三人は押し黙って眺めていた。


『相変わらず馬鹿みたいな威力の魔導ね・・・』


「あ・・あのような威力の『極大炎属性魔導』を放つ魔導士が存在していたのでござるか!?」


「いや、『極大炎属性魔導』であってもあそこまでの威力は無い。恐らくハーティ嬢は何らかの修羅場を潜って来たことにより人の身では計り知れぬ、神々の時代の『禁術』に手を染めたのでは・・」


「そんな!?一体どんな事情があってあんな恐ろしい魔導を極めたのでしょうか・・」


 恐れ慄く三人に向かって、相変わらず『プラタナ』の肩部装甲に腰掛けていたユナは、三人へ更に恐ろしい事実を伝えることになる。


()()を膨らませているところ申し訳ないのですが、アレは『極大炎属性魔導』などではなく、ただの()()()()()『ファイアーボール』ですよ」


 ユナの言葉を聞いた『旋風』の三人は驚きの表情を見せた。


「いやいやいや!!あんな凶悪な威力の『ファイアーボール』があってたまるか!!」


「もしあれが本当に『ファイアーボール』なのであれば、ハーティ殿が本気で『極大炎属性魔導』を放ったらどうなるでござるか・・・?」


 ハンゾウの言葉を聞いたユナは静かに瞳を閉じて『最敬礼』のポーズをした。


「その時は、女神様の意思によってこの世界に終わりがもたらされる時だと悟って、力なき私たち人間達はただその運命に身を委ねるしかありませんね」


「じ、冗談ですよね・・・?」


「・・・・・」


 ほむらの問いかけにユナは沈黙した。


『まあ、そこまではならなくても、世界地図から『アーティナイ列島』が無くなるくらいの事にはなるんじゃない?』


「・・拙者、ハーティ殿だけは絶対に怒らせないでござるよ・・・」


『まあ、とにかく片付いたことだし、早く帰りましょ!マルコの夕食が待ってるわ!どうせハーティも追いつくだろうし先に行くわよ!』


 クラリスはそう言うと、『カームクラン』へ向けて『プラタナ』を飛ばした。





 ・・・・・。


 ・・・・・・・・。


 ・・・・・・・・・・・。






「あの爆発・・どう考えても人間共(下等生物)の仕業じゃあないねぇ・・」

 

 ハーティの放った魔導の爆心地から更に十キロ程北上した場所に聳える山。


 その山の標高は『アーティナイ列島』で最も高く、それは三千メートルを超える程であり、頂上は万年雪が覆っていた。


 大昔からあったその山は、本島に住む『カームクラン民族』にとっては霊峰の扱いを受けている神聖な場所であった。


 その頂上は全てを凍てつかせるような極寒の地であったが、その地に立って爆発を目撃しながら言葉を漏らした一人の妖艶な女の表情からは、そんな様子を微塵も感じさせなかった。


 見た目だけで言えば二十代前半くらいに見えるその女は、豊満なバストに対して細く括れた腰をしており、全体的に非常に男の目を引く体型をしていた。


 そして、その身体をタイトに包む布地は極寒の地に全く合わないスリングショットのように面積が少ないもので、サイハイブーツと合わせて非常に魅惑的なものであった。


 その女の肌はやや褐色じみた健康的な色をしていて、吊り上がった瞳と膝にまでなる濡れたような艶を放つストレートの髪は漆黒に染まっていた。


「わたくしの()()()ってわけでも無さそうだし・・これは計画の変更を考えないといけないわねぇ」


「さあて、どうしようかしら・・ねえ?『黒竜(バハムート)』?」


 その妖艶な女はその場にいるもう一体の存在に言葉を投げかけた。


『貴様・・我の眷族(ワイバーン)にあのような仕打ちをしておきながら、まだ何か企んでいるのか!?』


 恨みの篭ったその声は、女の頭の中へ直接響き渡ってきた。


 そして、その言葉を発した主は、体長三十メートルにもなる黒色の堅牢な鱗に全身を覆われた『ドラゴン』であった。


黒竜(バハムート)』と呼ばれたその『ドラゴン』は何かの力によって体の自由が効かないようであり、その首には『黒の魔導結晶』が埋め込まれた魔導具の枷が付けられていた。

 

「あんな魔導を使うなんて・・『神族』くらいしかいなさそうだけどねぇ・・そこんところどうなの?あなた・・この世界が創造された時から生きてるんでしょ?」


 そう言いながらその女は妖しい笑みを浮かべると、『黒竜(バハムート)』の側へ寄り添い、その堅い漆黒の鱗で覆われた体表を優しく指でなぞった。


「ぐっ・・我にもあのような魔導を放つ存在など覚えはない・・だが貴様らのような存在がある以上、『神族』も今この世界に何らかの形で存在しているかもやしれぬ・・」


「ふうん・・・『神族』ねぇ・・・もしそうだとしたら・・とっても邪魔だわ」


「でも、その『神族』ってやらも、あなたみたいなかわいい『首輪』を付けてあげたらきっと楽しいでしょうねえ」


「うふふ・・わたくし、決めたわ。その『神族』・・本当に今のこの世界にも存在するなら、必ずこのわたくし『邪神エメラダ』の前に平伏させてみせるわ!!」


「うふふふ・・・あーはっはっはっ!」


『エメラダ』と名乗ったその女型の『邪神』の高笑いが、凍てつく霊峰の頂に響き渡った。


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