ワイバーン討伐クエスト2
『さあ、目標が見えて来たわよ!』
クラリスが言うように、『プラタナ』は既に全員が肉眼で確認出来るところまで『ワイバーン』の群れに接近していた。
報告にあった通り、『ワイバーン』は視認できるだけでもその数は数百にもなり、現在は『カームクラン』に向かう様子は無く、群れで渦を巻くように飛行していた。
『カームクラン』から五十キロ程北上したこの場所は、近くに数百メートル程度の標高になる山々が連なっており、地上は樹高三十メートルになる杉のような木が群生した森林地帯になっていた。
「じゃあ、先制攻撃と行きますか!やあぁぁ!」
ハーティは『ワイバーン』を目視すると、早速掌からビームのような魔弾を放った。
ビシュウウウン!!
その光条は数キロ先の『ワイバーン』の群れまでまっすぐ伸び、数匹がその光条に飲み込まれて消滅した。
そして、そのまま光条は斜め上に伸びていって周囲の雲を円状に押し広げて消し飛ばしながら空の彼方へと消えていった。
「な、なんでござるか!?あの馬鹿みたいに射程と威力のある魔弾は!?」
「ていうか、あれは魔弾なんですか?」
「某の見立てでは間違いなく魔弾であるが、放出したマナが常軌を逸しているな・・・」
しかし、その一撃で『ワイバーン』がこちらに気づいたのか、群れは散開しながらこちらに向かって飛び始めた。
「ああ、散らされたら魔弾で攻撃できない!後ろの山が邪魔だわ!」
ハーティの魔弾は威力が高すぎるため、周囲の山や地上に向かって放つ事が出来ない。
仮に散開した『ワイバーン』それぞれに魔弾を連射すれば、その流れ弾で周囲一帯が焦土と化してしまうからである。
ハーティは何度か自身の魔弾や魔導で山や大地を消しとばしたことがあるが、それはあくまで怒りで我を失った時がほとんどで、基本的には自分が生み出した世界の自然を破壊しようとは思っていない。
その為、いつもハーティは手加減しやすい打撃や蹴りを多用するのであった。
「では、次は拙者が参るでござる!」
ハンゾウは『ワイバーン』の接近を確認すると、背中に斜め掛けされた風呂敷包から出したものを素早く組み立てる。
それは、組み立てるとハンゾウの体より一回り大きな凧となった。
「クウゼン!いつも通り頼むでござるよ!いざっ!」
シュン!
そして、それを背中に背負うと一気に『プラタナ』から飛び出した。
「クラリスさん、一度コレの高度を下げてもらえませんか?私たちは下の森林へ飛び降ります!」
『わかったわ!』
ほむらの指示に従い、クラリスは『プラタナ』の高度を下げた。
ちなみに戦闘が始まる頃には、クラリスはすっかりいつもの調子で『旋風』のメンバーに敬語を使う事をやめていた。
「では、ほむらも参ります!はっ!」
続いてほむらも『プラタナ』から地上に向かって飛び降りる。
「某も行くぞ!ふんっ!」
シャララン!
クウゼンもまた、携えた錫杖を鳴らしながら飛び降りた。
最後に一人残ったユナは『女神の絆』を展開する。
ジャキン!シュイイン!
「私も遅れを取る訳にはいきませんね!はぁっ!」
ドォォン!
ユナは『ワイバーン』との距離を目測すると、『プラタナ』の掌を思い切り踏み込んで飛び出した。
『ちょっと!『プラタナ』の腕が壊れたらどうすんのよ!』
すると、『プラタナ』から飛び出したユナの耳に、装着しているピアス越しでクラリスの怒った声が聞こえて来た。
「『プラタナ』のクラリス謹製『上級防御魔導』はコレくらいではビクともしませんよね?」
『あなたの踏み込みだったら冗談抜きで耐えられないかもしれないでしょうが!』
ヴヴヴヴヴ・・・・。
「まったく・・・!」
クラリスは『プラタナ』のコクピットにある光魔導スクリーン越しで、弾道軌道を描いて飛んでいくユナを見送りながら嘆息した。
「じゃあ、あたしも行こうかしらね」
「リデューシングソード!」
ジャッキン!
クラリスの掛け声と共に『プラタナ』が背部から稼働した鞘から剣を抜刀する。
「さあ!いくわよ!」
グイッ!
バシュウウウウ!
クラリスが操縦レバーを一気に前へ押しやると、『プラタナ』は『ワイバーン』の群れに向かって飛翔した。
「はっ!たああ!」
ザシュッ!ガササササ!
『プラタナ』から飛び降りたほむらは降下中に小太刀を抜くと、それを高木に突き刺して落下の勢いを殺す。
シュバッ!
そして、すかさずその木に刺さった状態の小太刀を使って高木の上まで再び飛び上がるとその天辺に着地した。
ブワッ!ザザッ!
続いて、ほむらが着地した木から数メートル離れた木の天辺に、風属性魔導で落下速度を減速したクウゼンが降り立った。
「ほむらは高度を下げた『ワイバーン』を狙います!クウゼンさんは補助をお願いします!」
「心得た」
ほむらはクウゼンと話し終えると、体重をかけて自分が乗っている木をしならせた。
ビュン!
そして、それをバネにして勢いよく飛び出すと、一気にワイバーンの方へと向かう。
バッバッバッ!
その間に『印』を結びながら詠唱を終えたクウゼンは、ほむらに向けて風属性魔導を放った。
この『印』とは『カームクラン民族』が編み出した特殊な魔導の発動方式で、手を使って魔導式を模した形を次々と作りながら詠唱を行う事で魔導発動までの時間を短縮する技である。
スクロール無しに発動を簡素化させるという意味では重宝するが、『印』を間違えたり形にズレがあると、かえって通常の詠唱より時間がかかるので低位の術者はあまり使わない。
その点『印』を使いこなすクウゼンは高位の魔導士といえる。
ほむらはクウゼンが発動した魔導が生み出した風に乗ると、さらにその高度を上げた。
「はあぁぁぁぁ!」
そして、ほむらは小太刀を両手に携えると、『ワイバーン』へと斬りかかった。




