ワイバーン討伐クエスト
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その後、正式に緊急クエストの受注を終えたハーティ達は『二級冒険者』パーティの『旋風』と共に、自分達の滞在する屋敷へと戻ってきた。
そして現在、付き添いで来たミウとギルドマスターのアキトを含めた全員が屋敷内の広大な中庭に集まっていた。
美しい草花で彩られる中庭には、その風景には全く合わない一辺十メートルにもなる無骨な鋼鉄製のステージが設けられていた。
「凄い豪邸でござるな・・」
「ほえー、流石『一級冒険者』は住む場所も違いますね!」
「うむ、『帝国様式』の邸宅であるな。ふつうこれ程の邸宅なら『女神像』があって然りだが、この屋敷には見当たらぬからな」
『旋風』の三人はハーティ達が滞在する屋敷を見て、思い思いの感想を述べていた。
「いつの間にこんなものを作ったのじゃ?」
「フフン!凄いでしょ!これは『プラタナ』の駐機場よ。このくらい頑丈なステージを作らないと離着陸の度に中庭が滅茶苦茶になっちゃうからね」
「まあ・・あれだけのデカブツなら確かにのう・・」
「にしても、ここに来てどうするのでござるか?見たところ何もないでござるが・・・」
「さっき言った通り、現地までの乗り物を用意するんですよ!」
「さあ!行きますよ!」
クラリスは高らかに宣言すると、いつもの様に自分のツインテールの片方を優雅に払い除けて、ステージ中央へ掌を向けた。
「出でよ!『プラタナ』!」
クラリスがいつもの『定型句』を言うと、ステージ中央に大規模な魔導式が白銀色に発光して浮かび上がる。
ズズズズ・・・。
そして、跪いた状態の『プラタナ』が魔導式から出現し始めた。
やがて全身を晒した『プラタナ』は完全神白銀化を果たしたことで、以前に増して美しい白銀色に輝いていた。
「はあ、この白銀色のボディ・・いつ見ても美しいわ!」
クラリスはそんな『プラタナ』を見て恍惚としていた。
「な、なんでござるか!?」
「ばっ化け物!?」
「クラリス嬢、貴方は『鬼』を召喚して使役できるのか!?」
『鬼』とは『アーティナイ列島』に生息する頭部に角を持った人型の魔獣である。
その体長は五メートルから大きいもので十メートルになり、言わば大陸に分布する『ゴーレム』に近い位置付けで、上級冒険者を対象として『カームクラン冒険者ギルド』にも頻繁に討伐依頼が出る。
クウゼンは『プラタナ』を、その大きさと見た目から『鬼』と勘違いしていた。
「し、召喚魔導!?ほむら、そんな魔導聞いたことないですよ!」
初めて見る『プラタナ』に『旋風』の三人は慌てふためき出した。
「これは『鬼』じゃないですよ!言わば、あたしが開発した『人が乗って戦える魔道具』です!」
「ま・・魔導具でござるか・・」
「帝国、恐ろしいです・・・」
「これに乗るのか・・」
クラリスは一通り説明を終えると、いつもの様にコクピットへ乗り込んだ。
シュイイイン・・・!
そして、クラリスが『プラタナ』を起動すると同時に、機体胸元にある発導機が輝き出した。
ギュイイイン・・。
『さあ、みんな!この掌に乗ってください!』
『プラタナ』が動き出すと、拡声魔導で発せられたクラリスの声がその場にいる人達に聞こえてきた。
直後、『プラタナ』は跪いた状態のまま、まるで桶の水を掬い取る時にするようなポーズで両掌を合わせた後にその掌をステージの上へと静かに置いた。
「じゃあ私は今回『旋風』の皆さんと一緒にこちらに乗りますね」
ユナはそれを見ると、そのまま躊躇なく『プラタナ』の掌へと上がった。
「「「・・・・・」」」
ユナの姿を見て意を結したのか、『旋風』の三人もそれに続いて恐る恐る掌へと上がった。
『じゃあ飛びますよー、しっかり指の部分に掴まってて下さいね』
ギュイイイン。
クラリスの呑気な声と共に『プラタナ』は立ち上がると、背部にある『フライ・マギ・ブースト・ウィング』を展開した。
シュイイイン。
「え、ちょ・・飛ぶってどういうことでござるか!?」
「まさか・・」
「『飛行魔導』!?そんなことありえない!」
「みなさん、口を閉じてないと舌を噛みますよ」
バシュウウ!!
直後、『プラタナ』は四人を掌に乗せたまま勢い良く飛び出した。
とは言っても、流石にいつもの勢いで飛び出すわけには行かないので大分速度は控え目であったが。
「うわあああ!」
「きゃあぁぁぁぁ!」
「ふんぬううう!」
しかし、それでも慣れていない『旋風』の三人は必死に『プラタナ』の指に掴まっていた。
「じゃあ、私も出発するね」
「う・・うむ。そちらなら問題ないとは思うが、気をつけていくのじゃ。『カームクラン』の守りは、わらわ達に任せておくのじゃ!」
「了解!夕方には討伐報告できると思うから待っててねー!」
ドゥン!!
ハーティはミウにそう言い残すと、そのまま離陸して『プラタナ』の後を追った。
ビリビリ・・・!
ハーティは単身なので、いつも通りに遠慮無くステージを踏み込んで飛び出していた。
それにより、ミウたちが立っているステージはその衝撃で激しく揺れていた。
「「・・・・・」」
その後、ミウとアキトの二人はハーティが生み出した飛行機雲を暫くぽかんと仰ぎ見ていた。
「おまたせー!!」
屋敷の中庭から飛び出して直ぐに『プラタナ』に追いついたハーティは、その横に追従するように飛行していた。
その姿を見た『旋風』の三人はハーティを指差しながらパクパクと口を開けたり閉じたりしていた。
「ちょっとハーティさん!?何しれっと生身で飛んでいるんですか!?しかもこんな速い速度で!?」
「拙者夢でも見ているでござるか?」
「某の記憶が正しければ『飛翔魔導』を使える術者など存在しないはずだが・・・」
「え・・えっとそこは、ほら!気合で何とか!って感じですよ!」
「「気合だけで空が飛べる人間がいてたまるか!」」
「たまるかでこざる!」
「ちなみに、今日は皆さんがいますので飛行速度は普段の十分の一くらいしか出ていないですよ」
「「「ファッ!?」」」
『旋風』のツッコミが虚しく大空に響き渡る頃、早くも遠くには目的地となる山と森林地帯が見えてきた。




