17話:再び森へ
「ダーク様…おっと、お取込み中でしたか、すみません。」
ダークに外出の報告をしに来たが、そこには、ダークと、光の魔王・ライトが居た。
「いや、私の事は気にしないでくれ。」
「お前のお陰でこいつもすっかり元気だぞ、本当に、良かった。」
ダークはそう言うと豪快に笑う。
「何のお話をされていたのですか?」
「ああ、俺達は魔王の一角を落としただろう?それは勿論、他の魔王たちも気付いている。だから、もし奴らのうち誰かがこちらに攻め込んできた時の対策を考えているんだ。」
「成程。それで、本題ですが。私、これから、森まで降りて行こうと思っているんです。その報告に来ました。2,3日あれば帰って来られると思います。」
「了解した。あそこなら、明確な敵も居ないし、安心だな。行ってくるといい。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
というわけで、私は今、森へ向かって飛んでいる。
本体は長らく外へ出していなかったので、新鮮な気分だ。
ちなみに、土の魔王と戦った分身体は、土の魔王軍残党を殲滅する時に、最終的に【疾風撃】で自己崩壊したので、もう存在しない。しかし、分身体が倒した相手も、自分が倒した、と捉えられるようで…
【フウカ Lv.144(1008)】
この通り、かなり強くなった。この調子でいけば、いつかはスーやグラムらに追いつくことも出来そうだ。自分の寿命がどの程度なのか分からないが。
滝の上に辿り着いた。やはりここからの景色は格別だ。そして…急降下。前回は風に流されて大変だった、苦い記憶が蘇る。
滝の下に辿り着いた。鬱蒼とした森が目の前に広がる。よく考えたら、基地の位置がうろ覚えだ。滝の上から見た時の微かな記憶を頼りに、森の中を進む。
…よく考えたら、木より上から探した方が早い事に途中で気が付いた。木の上へ出る。右前方に人工的な建造物が見えた。私はそこへ向かう。そして…
「よぉ、フウカ君。待ってたぜ。」
「ダズさん、ご無沙汰しております。」
「おーい、みんな。英雄様が帰ってきたぞ!」
ダズが呼びかける。すぐに、私の周りには沢山の魔物達が集まってきた。
「あんたが英雄さんかい。森を守ってくれてありがとう!」
「うおー、本物だ!」
そう言って、私の方を目を輝かせて見ている魔物達。Lvを確認すると、最低でも80くらい、平均で120程。自分よりLvの高い魔物も結構居る。
「やぁ、フウカ。待ってたよ。」
「スーさん、こんにちは。」
「相変わらず凄い人気だね、君は。」
「…そうですね、ちょっと大変かもしれません…。」
「いいじゃないか、嫌われてるよりは。それで…ここで話すのもなんだ、僕の部屋へ来るか?」
「はい、そうさせて頂きます。」
そうして、私達は、彼の部屋で二人きりになった。
「…人間の街に行きたいって話だったね。」
「はい、そうです。私が、というよりは、分身体を向かわせる感じですが。」
「そうだね。その前に…一つ確かめないといけない事がある。」
そう言って彼が取り出したのは、透明な板。魔族感知板、と字が彫られている。
「人間の街に入るには…これをスルーしなければならない。これは、触れた者が、魔族か、そうでないかを判定する魔導具だ。もし、これに引っ掛かればまず、大騒ぎになる事は間違いない。」
「そうですか。うーん…」
私はその板に手を伸ばす。手を触れる。…反応はない。
「反応しませんね?」
「良かった、反応なしか。君は『魔族に作られた』けど、魔族ではないって事だね。この世界には、人間、魔族、それ以外…つまり魔物が居るけど、君は魔物なわけだ。」
「そう…みたいですね。」
私が魔族であったら、素のレベルが666になっていたと思う。上限を超える可能性もあるが。だから、何となく私が魔族ではない事は予想がついていた。
「反応なしなら、話は早い。君には2つの選択肢がある。一つ目は、人間のフリをして、街に入る事。二つ目は、魔物として、街に入る事。前者は街で身分証を発行したり、色々面倒だが、その分動きやすい。僕はこっちだ。後者は、魔物使いに使役される形で街で過ごす方法だ。単独では動けないが、人間のフリをする必要は無いから楽だね。」
「うーん、色々やってみたい事があるんですよね。多少面倒でも、自由に動けた方が…。」
「じゃあ、前者だね。じゃあ、ちょっと、分身体を出してみてよ。」
「はい、少々お待ちを…」
私は意識を集中させ…ある程度、強力な分身体を作り出した。
毎回思うのだが、この工程、ちょっとしんどい。かなりの集中力を要する上に、成功した後の疲労感が凄い。
「…これで、どうでしょうか…。」
「えーと…まずぞの角と翼をどうにかしようか。」
「あ、それもそうですね…」
本で読んだ限りでは、この世界の人間も、元の世界の人間と大差はなかった。今の姿から余計な付属物を取り払えば、かなり人間に近い姿になるだろう。
「それにしても、フウカのその姿って、かなり、整った容姿をしているよなぁ。誰かをモデルにしたのか?」
「この姿ですか?モデルは、ダーク様の部下で、研究者の、リュートさんですが…。」
「え、でもその見た目って事は亜人だよな?亜人が魔王の部下に居るんだなぁ。」
「あれ?確かに。」
亜人とは、素の状態で、殆ど人間に近い魔物の総称である。例えば、猫の耳や尾が生えた猫人、下半身が魚の人魚などが挙げられる。場合によっては、狼のような躯体を持つ人狼なんかも亜人として扱う事もあるが、見た目が人間からかけ離れ過ぎているので、大抵は普通の魔物として扱われる。この辺りの定義は曖昧だ。
そんな亜人、彼らの大半は、人間と魔族の戦いに関しては、人間側につくか、もしくは、魔物として中立の立場を貫くか、という状態らしい。そんな中、リュートは魔族の元にいる。
「何故でしょうね?まぁ、今度、本人に訊いてみます。」
「そうだな…おっ、良い感じじゃないか。それなら、人間って言われても違和感は無いぞ。」
「そうでしょうか。なら良いんですが…」
「アドバイスをするとしたら、もう少し、どっちかの性別に寄せた方がいいかもしれないな。中性的だと、いちいちどっちか訊かれて面倒だからな…。どっちとも言いづらいし。」
そう言いながら、彼は自分の手を眺めている。恐らく、体験談なのだろう。我々、不定形生物には、性別という概念がそもそも無いので、どっちとも言いづらいのは確かだ。
「ふむ、じゃあ、男性寄りに…」
…いや…
「うーん、やっぱり女性寄りにします。」
「ん、何か理由が?」
「この声と口調で男性寄りにしたら、違和感が出てしまいそうですし。」
まぁ口調はともかく声は頑張れば変えられるが、自然体の方がやり易いだろう。最悪、自分の声にいちいち驚く事になりかねない。
「ふーん、まぁ、そこは好みで良いと思う。」
今よりも髪を伸ばして、顔も…バランスを整えて…あとは、身体部分も丸みを少し強くする。
「そんなもんでいいんじゃないか?もう、ほぼ人間の女性だよ。ちょっと幼めだけど…」
言われてみれば、元の姿がリュートの姿を完全に模しきれず小型化した姿だった故に、多少変形させてもかなり若い見た目になってしまっている。13~14歳くらいだろうか?
「確かに。でもそれはスーさんも同じじゃないですか?」
「まぁ、ね。」
スーの姿は私より更に若く、12歳くらい、何なら10歳と言われても信じるくらいだ。
「スーさんの見た目が幼げなのは、何か理由があるんですか?」
「…聞きたい?」
第17話です。
22~23話、24~25話が個人的にお気に入りのストーリーなので、早くそこまで投稿したいな~と思いつつ、投稿するのが面倒くさいのでサボってます。
こっちはまだ余裕があるので、七色の光の方を頑張って書き進めてるけど終わりませーん!!




