蚩尤・参
ドゴオッと力が蚩尤から放たれ、それを防いだ薙を見た盤古は息を吐き、黄鳳、と息子の名を呟く。
「その調子では俺を殺せない。最後の【証】のために・・・・・・俺を殺すために、蚩尤を殺せ、黄鳳」
「最後の証ってなんだよ!? 俺には殺せないんだよ!!」
父親を睨み、薙は怒鳴る。そんな薙に盤古は淡々と語りだす。
「子供は親の・・・・・・母親の髪色と父親の瞳の色を継いで産まれてくる。だが、俺と黄華の間に産まれたお前は違う。お前は俺の瞳と髪の色を継いで産まれた者」
「瞳の色はわかるけど、髪の色は違う」
産まれた時から黄金の髪色だった薙が父親の言葉を否定するのは当然だ。
「そう、産まれた時のお前は黄金色。理由はお前が黄華の杖を・・・・・・黄帝の杖を継いだから。黄帝は「金」を司る者。髪の色は黄金でなければならない。────それに元々、俺は封じられると自分で定めたから、杖を〝目〟の代わりにする必要もあって、俺の杖を継がせることは出来なかった」
そこで、と一旦、言葉を区切り、右手を自身の胸にあて、言葉を続ける。
「ひとつの物語を与えることにした。蚩尤を殺すことで、お前の髪の色を俺と同じ紫色にするための物語を」
「そのために嶺を利用したのか!?」
憤る薙に「ああ」と頷く盤古。それに対して彼はカッとなり、力を父親に向かって放つ。だが、
「────ッ」
簡単に力を防がれた薙は唇を噛む。
「蚩尤を殺さなければ俺は殺せないと言ったはずだ」
「うるさいっ!」
吐き捨てるように言葉を発した瞬間、薙は気配に気付き、そちらに視線を向けた。
向けたのと同時に蚩尤の持つ杖の、刃てもって、左頬に傷をつけられ、血が流れる。
「蚩尤を殺せ、黄鳳」
呪いの言葉のように繰り返す盤古。
「嶺・・・・・・」
脳裏には嶺の姿が浮かぶ。
『お前が天界にいる間に俺は死ぬと思うしな』
嶺はそう薙に言っていた。
「こうなるってわかってたのかよ、嶺!」
「────わかっていたか、だと?」
涙を流しながら叫ぶ薙に静かに蚩尤は聞く。
「嶺はわかっていたさ。オレを封じて・・・・・・己の役目を聞かされて、それでもお前を育てた」
「・・・・・・嶺は本当にもう、いないのか?」
拳を握り締めながら聞く薙に蚩尤はきっぱりと「いない」と答える。
「あんたはそれでいいのか? 俺に殺されても」
納得していないはずだと、薙は思った。いくらなんでも、こんなモノは。
「仕方あるまい。お前の父親が〝そう〟定めたのだから」
「その通りだ、黄鳳よ。覆すことは出来ない」
蚩尤の言葉を肯定する盤古。
「・・・・・・嶺」
『待ってるよ』
出来ないと知っていて、そう言った嶺。
薙は嶺であった人物────蚩尤の許へと走り出す。
〝嶺──────っ!!〟
叫びながら、薙は杖を降り下ろした・・・・・・。




