盤古(ばんこ)・弌
中盤までやってきました。
ぽたり、ぽたりと床に血が流れ落ちる。
血は──黄帝の身体から流れ落ちていた。それの意味するところはつまり──薙が母親を刺した、ということ。
「・・・・・・かあ、さん」
杖を体内に戻し、呟く薙の目には涙。それを見て、黄帝は刺された部分を手で抑えながら、笑みを浮かべた。
「悲しむ必要はないわ・・・・・・黄鳳」
傷を治さず、黄帝は薙に言いながら、身体を仰向けにする。
「──お前が下界に降りる時に昔話をしたわね・・・・・・〝紫の瞳〟を持つ天界人の話を」
「うん」
母親の隣にやってくる薙。
「確かに罪を犯した者はいたわ。でも、それは〝天界人〟ではない。この天界に「人間」は存在しない。──罪を犯したのは我らが同胞・・・・・・。三百年・・・・・・今は四百年前ね、その罪を犯した神が封じられたの」
天界に住まうは神のみ。故に天界人は存在しない。
「封じられた? 〝俺が生まれる前に〟死んだんじゃなくて?」
聞き返す薙に「いいえ」と黄帝は答える。
「本当は封じられたの、同じ仲間によって。そして、お前が生まれる前の話じゃない・・・・・・お前が生まれた年の話よ」
「・・・・・・俺、四百歳だから、確かに俺が生まれた年の話になる」
神の寿命は長い。そのために成長も遅い。
下界の方が時間の流れが速いから、成長も速い。本来であれば、薙の姿はまだ小学校高学年ほどだ。
「四百年前・・・・・・罪を犯した者は〝すべてを統べる者〟でありながら、禁忌である・・・・・・〝肉体の交わりをおこなった者〟・・・・・・」
「えーと・・・・・・?」
理解できないでいる薙に母親は続ける。
「神は・・・・・・〝肉体で交わって子を成してはならない〟。お互いの力を融合させて、子を成す決まり。神は『神聖』な存在でなければならないから。でも・・・・・・あの男は掟を破った!」
ごほっと咳き込み、吐血するが、話すのをやめることはしない。




