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えぴそど61 風なびく平原で

「ではこちらでお待ち下さい。」


翌朝、俺達は兵士に連れられ街の門に来ていた。


数台の馬車と凄い数の兵士達が門の外に整列しているのが分かる。


「おはよう御座います。みなさん。」


どうすればいいのかアホ面をかましていると、フルブライトさんが部下らしき人を連れて近づいて来た。


「おはようございます、フルブライトさん。それにしても凄い人数ですね。これ全員が行くんですか?」


フルブライトさんは一度門の外を見ると、にこやかな表情でこちを見返した。


「ええ。拳王様の戦う姿を見られる貴重な日です。神託を受けてからはダンジョンにお一人で籠られる為、今まで何も記録が取れていないんです。ジャクシン様がチャンスと思われたのでしょう。」


「見物人ってとこですか…。」


「まあ、そうですね。理由はもう一つあるのですが…さて、コースケ様のご準備が宜しければ早速向かいましょう。場所はオンダとの間になり、ここより1時間も進めば到着できます。」


「準備は出来ています。案内をお願いします。」


あまりの兵士の多さに、ユージリンやヤッパスタはどこか緊張気味だ。シュナは朝が早かった所為か、ヤッパスタの背中で眠っている。


メイエリオは何故かトモに意気揚々と乗っていた。

なんで?


馬車に乗り込み戦いの場を目指す。

同じ馬車にフルブライトさんも同乗してくれた為、拳王について探っておく事にした。


「フルブライトさんはこの戦いどうなると思いますか。私は穏便に終わるのか正直不安なんですけど…。」


「そうですね、歴代の拳王様と比べてもキラハ様はかなり特殊です。私達にも全く予想がつきません。ですが、コースケ様が勝っても負けても、いい経験になると思いますよ。」


「経験か…殺されたりしないですかね(笑)」


「無いとは言い切れませんね。」


フルブライトさんがニッコリと笑うと、俺の金の玉が一瞬ギュッと縮こまったのが分かった。


メイエリオはトモに乗って馬車の横を走っている。

いやそれ俺がしたかったやつ!!某アニメ映画のヒロインみたいになってんよ!?


「コースケ。何かあったら俺達も拳王様を止めるさ。もちろん敵わないと分かってはいるが、助けてみせる。」


「ああ、ユージリン。ありがとう。頼りにしてるよ。」


そうして、小一時間ほど進んだ場所で馬車が止まった。


ブーメルムに向かう時には景色を見る余裕が無かったが、改めて見るとどこまでも広がる広い草原だ。


道の脇には円錐状の砦が四基建っていた。

馬車を降りて驚いたが、兵士の数はブーメルムで見た時以上に増えている。


戦争にでも行く気かこいつら。

鎧やマントの色も様々で、何部隊がいるのか検討もつかない。もうとりあえずいっぱい居る。


反対の草原の方を見ると、既に拳王が立っていた。

その両腕にはものすごく大きな鉄甲がはめられている。


金色に輝く身体の2/3程もあるガントレットだ。

横幅も大きく片腕で胴体分ほどある。その施された装飾から、昨日ジャクシンさんが渡していたものと思われた。


つか、あれ何キロあるんだよ。


拳王を見ていると、一人の男性が近づいて来た。

さっきの鉄甲に負けずとも劣らないほど、ど派手な金の鎧を身に纏うおそらく貴族だ。護衛も皆金一色。


その姿を見るや、フルブライトさん達は跪いた。


「貴様はフルブライト家の三男か。久しいな。お父上は息災か?」


「はっ!ご多忙の中でのお気遣いのお言葉!感謝極まりない事です!」


フルブライトさんの態度からとんでもなくお偉い方だという事が分かった。


「さて、貴様がコースケか。」


「え、はい。そうですけど。」


「私はこのオライオスを国王様より授かりしジャクシンだ。貴様の報告は受けている。スケアリーベアーだけならず、ガムルシンまでをも単騎で討伐したらしいな。」


これジャクシンさんのお父さんじゃん!?どことなく威圧的な態度は絶対親子だ!


更に、その言葉を聞くとメイエリオやユージリンまでもが跪いた。俺とヤッパスタだけがぽかーんと突っ立っている。


「はぁ、たまたまです。自分でもよく分かっていないスキルが身に付いていたので、それでなんとか。」


「そうか。ふむ…この試合を楽しませてもらうぞ。」


ジャクシンパパさんは俺の身体を一通り見ると、振り返り行ってしまった。


「さあ、そろそろ俺は行くよ。フルブライトさん、みんなを一応見てあげてくれないですか。子供もいるんで。」


「ええ、構いませんよ。皆さんは私と一緒にあの砦に行きましょう。」


「旦那!頑張ってください!」


「ああ、ありがとう。やるだけやってくるよ。」


「負けてもいいから顔面ぶっとばしてきてねコースケ。」


「う…うん。頑張るよ。」


「コースケ、これを。」


「ありがとう。ユージリンからの教えてもらった事を存分に活用させてもらうよ。」


「ああ、幸運を祈ってるぞ。」


俺はユージリンから穂先を外した短槍を受け取った。

最早ただの鉄棒だ。


みんなと別れ、拳王に向かい歩いて行く。

俄に周りがざわつき始めたのが感じられた。


「よく逃げなかったな。安心しろ、殺しはしない。カカ様に止められてしまったからな。」


「こっちもジャクシンさんにお前を殺すなと言われている。安心しな。」


精一杯の皮肉を年下に返すおっさんの姿がそこにあった。拳王は少しだけ眉を動かす。


「辛うじて息をしていればいいって事だろ?二度と自分の足で歩けなくなっても恨むなよ。」



やはり友好的な解決は難しいらしい

俺は静かに鉄棒を構えた

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